【連載】安斎育郎のウクライナ情報

6月27日のウクライナ情報

安斎育郎

6月27日のウクライナ情報
安斎育郎

❶ウクライナ加盟支援を言明 宣言なしもNATOトップ(KYODO、2025年6月26日)
【ハーグ共同】北大西洋条約機構(NATO)のルッテ事務総長は25日、首脳会議終了後に記者会見し、ロシアの侵攻を受けるウクライナについて「NATO加盟に向けた不可逆的な道を支援し続ける」と言明した。
首脳宣言にはウクライナ支援継続が盛り込まれた一方、ロシアとの和平仲介に乗り出した米国への配慮から、加盟問題は触れられていない。ルッテ氏は記者会見であえて強調することで、NATOの方針に変化がないことを示した。
首脳会議では、軍関連インフラも含めた加盟国の防衛支出を国内総生産(GDP)比5%にすることで合意。ルッテ氏は加盟国が負担を分かち合うことは米国が数十年間求めてきたことで「同盟がより安定し、公平になる」と成果を誇示した。日本などで進む防衛費増の議論への影響については「助言する立場にはない」と回答を避けた。
トランプ氏はNATOに懐疑的だが、ルッテ氏はNATOの根幹である集団防衛を定めた同条約第5条について「米国は完全に順守する」とし、NATOは盤石だと主張した。
https://news.yahoo.co.jp/articles/17d5a8dff1c5c88803c15d088595976038a27b56

❷NATO首脳宣言 ロシアの侵攻非難の文言なく ウクライナ苦境(2025年6月25日)
トランプ米大統領は25日、オランダ西部ハーグで開かれた北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に合わせて、ウクライナのゼレンスキー大統領と会談した。ただ、25日発表されたNATOの首脳宣言では、ロシアのウクライナ侵攻を非難する文言がなく、ウクライナ支援についても各国の判断に委ねる面が強く出た。米国による停戦仲介が難航する中、トランプ氏のウクライナ情勢への関心低下も指摘されており、ウクライナの苦境は深刻化している。
NATOの首脳宣言は「ロシアが欧州や大西洋の安全保障に及ぼす長期的な脅威」を指摘したが、ウクライナ侵攻への言及はなかった。ウクライナに対する「各国の支援の約束」を再確認したが、NATO全体としての支援は明文化されなかった。
NATOのルッテ事務総長は23日の記者会見で「ウクライナへの支援は揺るぎない」と述べていた。NATO加盟国のうち欧州とカナダで計350億ユーロ(約5兆9000億円)相当の追加支援をすると発表したが、バイデン前政権時代は最大の支援国だった米国の支援は含まれていなかった。
トランプ氏は25日にルッテ氏と会談した際、「ゼレンスキー氏は難しい状況にある」と指摘した。プーチン露大統領を「何度も会った。好人物だ」と評するなど、従来同様にロシア寄りの姿勢を印象づけた。
ゼレンスキー氏は、トランプ氏に支援継続を直接訴えたとみられる。会談前には、「取引」を重視するトランプ氏に配慮し、「(武器供与の対価に支払う)資金を見つける準備をしている」と説明していた。
24日の防衛産業をテーマとした関連イベントでは「ロシアはNATO域内の国への新たな軍事侵攻も計画している」との見解を示し、NATOの安全保障のためにもウクライナ支援が重要だと強調していた。NATO加盟国に対し、ウクライナの防衛産業への資金提供も求めた。
ゼレンスキー氏はカナダで今月開かれた主要7カ国首脳会議(G7サミット)にも招待国首脳として参加し、トランプ氏と会談する予定だった。だが、トランプ氏が中東危機への対応を理由に予定を早めて帰国したため、実現しなかった。
トランプ氏は今月5日、停戦仲介が停滞する中、「しばらく戦わせた後、引き離した方がいいかもしれない」と発言。2024年の米大統領選で公約に掲げた「和平実現」を投げ出すことを示唆し始めた。カナダでの会談中止は、トランプ政権のウクライナ情勢への関心低下を象徴する事例だと国際社会から受け止められた。【ハーグ岡大介】
https://news.yahoo.co.jp/articles/5c926eba68957cc6d0ea60cc37eaa39daab2c571/images/000

❸ NATOの防衛費増額「米国は例外だ」 トランプ氏が主張(2025年6月25日)
「彼らは払うべきだ。でも我々は払わなくてもいい」。北大西洋条約機構(NATO)首脳会議が25日に合意を目指す加盟各国の防衛費増額の新目標を巡って、トランプ米大統領が自己中心的な主張を展開している。新目標案の「国内総生産(GDP)比5%」を要求したのはトランプ氏だが、「米国は例外だ」という主張は同盟関係に波風を立てそうだ。
米メディアによると、トランプ氏は24日、NATO首脳会議に向かう途上で、米国も「5%」目標に同調すべきかと記者団から問われ、「そうは思わない。彼ら(欧州の同盟国)が支払うべきだと言ったのは私だ。我々が他国と同じように払うべきだとは思わない」と主張した。
一方で、「5%」目標に難色を示すスペインについて「同意しないのは、他の加盟国にとって非常に不公平だ」と指摘。米国を例外として、他のNATO加盟国は防衛費を引き上げるべきだとの持論を展開した。
NATO首脳会議は加盟各国の防衛費の目標について、現行のGDP比2%から5%に引き上げることで合意を目指す。中核的な防衛費を3・5%、インフラ整備などを含む防衛関連費を1・5%とする計画で、目標期限について詰めの協議を行っている。
米国の2024年の防衛費はGDP比3・19%で、首脳会議で合意に達すれば、財政状況が厳しい中で増額を求められる。しかし、トランプ氏の発言通りなら、合意前から履行の意思はないことになる。【秋山信一】
https://news.yahoo.co.jp/articles/61a4742bc11936ed344a140045d14bd70b065682/images/000

❹NATO離脱に言及 スロバキア首相、防衛費増額方針に不満(再送、JIJI.COM、2025年6月18日)
【ベルリン時事】東欧スロバキアのフィツォ首相は17日、フェイスブックへの投稿で、北大西洋条約機構(NATO)加盟国の防衛費増額方針に不満を示し、脱退も選択肢になると表明した。
NATOを会員制のゴルフクラブに例え「新たに設定された会費を支払うか、脱退するか、いずれかを選択することになる」と投稿した。
フィツォ氏は、5月にロシアを訪問してプーチン大統領と面会するなど対ロ融和姿勢が目立ち、NATO関与に消極的なトランプ米大統領を称賛している。2004年に加盟したNATOからの脱退をどの程度真剣に検討しているかは不明。投稿で「中立は良いことだ」とも訴え、ロシアと対峙(たいじ)する軍事同盟であるNATOと一線を画すかのような姿勢を見せた。
https://news.yahoo.co.jp/articles/c602ccdff9d836ab8f568a5fc8d7d263c7b8cc42/images/000

❺スペイン防衛支出5%「対象外」 GDP比、NATO側と合意(KYODO、2025年6月23日)
【ハーグ共同】スペインのサンチェス首相は22日、北大西洋条約機構(NATO)加盟国の防衛支出を国内総生産(GDP)比5%とする目標を巡り、スペインが求めていた同国を対象外とする例外措置について、NATO側と合意したと述べた。AP通信が報じた。
サンチェス氏は22日にルッテNATO事務総長と書簡を交わし、24~25日のNATO首脳会議で合意が見込まれる5%目標の文書には「全ての同盟国」という文言は含まれないことになったと表明。
NATOはトランプ米政権の要求に沿った形で、防衛費をGDP比3.5%、軍関連インフラ整備などに同1.5%の計同5%の目標を提案していた。
https://news.yahoo.co.jp/articles/2e5dc4bbdf5df76f6f4f255716ffa86c348218ef/images/000
〈関連情報〉スペイン首相、NATO国防費目標「現行のGDP比2%で十分」(ロイター、2025年6月26日)
[マドリード 25日 ロイター] – スペインのサンチェス首相は25日、同国の国内総生産(GDP)比2%という現在の国防費は「十分かつ現実的で、福祉国家として両立する」水準と考えているとの見方を改めて示した。同時に、オランダ・ハーグで開催中の北大西洋条約機構(NATO)首脳会議で加盟国が合意した新たな軍事能力目標は達成するとした。会議後に発言した。
サンチェス首相は「きょうの首脳会談でNATOは勝利し、スペインはわれわれの社会にとって非常に重要である安全保障と福祉国家を勝ち取った」と表明。同盟国が「スペインの主権への尊重」を示したことに謝意を示しつつ、スペインはNATOへのコミットメントを堅持すると強調した。
さらに、「明日ブリュッセルで行われる欧州連合(EU)の欧州理事会では、GDPの割合についてではなく、共同生産や共同購入、相互運用性についてさらに議論することを期待する」と述べた。
NATOは22日、加盟国の国防支出目標をGDPの5%に大幅に引き上げることで合意したが、スペインはこれに応じる必要はないと主張。NATOのルッテ事務総長はこの要求を公然と拒否した。
https://news.yahoo.co.jp/articles/d195a33ef6117b0c6895f26428d185af222d43af/images/000

❻NATO日本事務所開設を断念 当局者「もう協議せず」(KYODO、2025年6月24日)
【ハーグ共同】北大西洋条約機構(NATO)当局者は24日、日本での連絡事務所開設について「現在はもう協議されていない」と述べ、事実上断念したことを明らかにした。
アジア太平洋地域との連携強化を進めるNATOが日本事務所開設を検討していることは2023年に表面化し、中国やロシアが反発。フランスのマクロン大統領が開設に反対し、23年7月に当時のストルテンベルグNATO事務総長は「将来検討することになる」としていた。
https://news.yahoo.co.jp/articles/28c7bf8da9e6ffff00c472273d5bf35907aaf1d8/images/000

❼関税戦争と防衛費増額要求「異常事態」、仏大統領NATO内の平和呼びかけ(2025年6月26日)
[ハーグ 25日 ロイター] – フランスのマクロン大統領は25日、関税戦争を開始しながら欧州諸国に防衛費の増額を求めるのは「異常な事態」だとした上で、北大西洋条約機構(NATO)加盟国は貿易問題を巡って平和を取り戻す必要があるとの考えを示した。
NATOはこの日、オランダのハーグで開いた首脳会議で2035年までに加盟各国の防衛支出を国内総生産(GDP)比5%に引き上げる目標を承認した。
マクロン氏は首脳会議後、記者団に対し「支出を拡大しながら、NATO中核国の間で貿易戦争を開始することはできない」と指摘。こうしたことは「異常な事態」だとし、NATO加盟国間の本来のルールに戻る必要があるとの考えを示した。
https://news.yahoo.co.jp/articles/e3b8b5bf34f24ea096ffbcdef9178ff2a450c388/images/000

❽スペイン、貿易協定で「倍のコスト負担へ」 トランプ氏警告 NATO国防費増免除で(2025年6月26日)
[ハーグ 25日 ロイター] – トランプ米大統領は25日、北大西洋条約機構(NATO)加盟国が防衛支出の大幅な増額を約束したとし、素晴らしいことが達成されたと述べた。
同時に、トランプ大統領は記者会見で、NATO国防費の目標を免除されたスペインについて「ひどい」とし、米国は貿易交渉でスペインに2倍のコストを負担させると警告した。
NATOはオランダのハーグで開いた首脳会議で、2035年までに加盟各国の防衛支出を国内総生産(GDP)比5%に引き上げる目標を承認した。NATO加盟32カ国が防衛支出を引き上げる目標を明文化した声明を支持。ただ、スペインはこの目標を達成する必要はなく、はるかに少ない支出で自国の義務を果たすことができると表明した。
https://news.yahoo.co.jp/articles/47f2de63c075b2a68593e1991466962595ff22d7/images/000

❾イタリア、NATOの防衛・安保支出目標順守へ 10年かかると首相(ロイター、2025年6月24日)
[ローマ 23日 ロイター] – イタリアのメローニ首相は23日、防衛と安全保障に国内総生産(GDP)の5%を支出するという北大西洋条約機構(NATO)の新しい目標を順守する方針だとしつつ、達成には10年かかり、それを可能にするために欧州連合(EU)予算規則の変更を望んでいると述べた。
今週のEU・NATO首脳会議を前に議員らに対し「これらは重要なコミットメントであり、イタリアは履行する意向だ。わが国を弱体化させ、自国を守ることができないままにしておくつもりはない」と語った。
一方で、EU当局は予算規則を見直し、NATO同盟国との間で合意される防衛費増額と整合性を持たせるべきとも訴えた。
https://news.yahoo.co.jp/articles/a7d581385dceef21c7534c531fea7ed6c18dc92a/images/000

❿オルバーン氏:「NATOはウクライナに関与すべきではない」―サミットで記者団と衝突 (APT、2025年6月25日)
ハンガリーのヴィクトル・オルバーン首相はNATO首脳会議において、一連の挑発的な発言を行い、「NATOはウクライナに関与するべきではない」と主張し、「現状維持が自分の仕事だ」と主張した。
ハンガリーの国防費目標について問われたオルバーン首相は、EUの規制は非現実的だと一蹴し、加盟国が提案されているGDP比5%の国防費目標を達成するためには、EUの予算構造を根本的に見直す必要があると訴えた。
オルバーン首相はまた、ドナルド・トランプ前米大統領を擁護し、「常識人」と呼び、イラン・イスラエル紛争の緩和に貢献したと称賛した。また、ロシアがヨーロッパにとって最大の脅威であるという見方を否定し、むしろ経済競争力こそがヨーロッパの真の脆弱性だと主張した。
ウクライナがNATO交渉から除外され、ロシアが敵対国として描かれていることについて記者団から追及されたが、オルバーン氏は毅然とした態度を崩さなかった。「ウクライナはNATO加盟国ではないし、ロシアも同様だ。私の仕事は、この状況を維持することだ。」
https://youtu.be/xOz83d9nNAg
https://www.youtube.com/watch?v=xOz83d9nNAg

2025年6月24日ウクライナ情報pdfはこちら

 


 

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安斎育郎 安斎育郎

1940年、東京生まれ。1944~49年、福島県で疎開生活。東大工学部原子力工学科第1期生。工学博士。東京大学医学部助手、東京医科大学客員助教授を経て、1986年、立命館大学経済学部教授、88年国際関係学部教授。1995年、同大学国際平和ミュージアム館長。2008年より、立命館大学国際平和ミュージアム・終身名誉館長。現在、立命館大学名誉教授。専門は放射線防護学、平和学。2011年、定年とともに、「安斎科学・平和事務所」(Anzai Science & Peace Office, ASAP)を立ち上げ、以来、2022年4月までに福島原発事故について99回の調査・相談・学習活動。International Network of Museums for Peace(平和のための博物館国相ネットワーク)のジェネラル・コ^ディ ネータを務めた後、現在は、名誉ジェネラル・コーディネータ。日本の「平和のための博物館市民ネットワーク」代表。日本平和学会・理事。ノーモアヒロシマ・ナガサキ記憶遺産を継承する会・副代表。2021年3月11日、福島県双葉郡浪江町の古刹・宝鏡寺境内に第30世住職・早川篤雄氏と連名で「原発悔恨・伝言の碑」を建立するとともに、隣接して、平和博物館「ヒロシマ・ナガサキ・ビキニ・フクシマ伝言館」を開設。マジックを趣味とし、東大時代は奇術愛好会第3代会長。「国境なき手品師団」(Magicians without Borders)名誉会員。Japan Skeptics(超自然現象を科学的・批判的に究明する会)会長を務め、現在名誉会員。NHK『だます心だまされる心」(全8回)、『日曜美術館』(だまし絵)、日本テレビ『世界一受けたい授業』などに出演。2003年、ベトナム政府より「文化情報事業功労者記章」受章。2011年、「第22回久保医療文化賞」、韓国ノグンリ国際平和財団「第4回人権賞」、2013年、日本平和学会「第4回平和賞」、2021年、ウィーン・ユネスコ・クラブ「地球市民賞」などを受賞。著書は『人はなぜ騙されるのか』(朝日新聞)、『だます心だまされる心』(岩波書店)、『からだのなかの放射能』(合同出版)、『語りつごうヒロシマ・ナガサキ』(新日本出版、全5巻)など100数十点あるが、最近著に『核なき時代を生きる君たちへ━核不拡散条約50年と核兵器禁止条約』(2021年3月1日)、『私の反原発人生と「福島プロジェクト」の足跡』(2021年3月11日)、『戦争と科学者─知的探求心と非人道性の葛藤』(2022年4月1日、いずれも、かもがわ出版)など。

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