
☆寺島メソッド翻訳NEWS(2025年6月27日):昔からのエリート層に不満を募らせる欧州
国際※元岐阜大学教授寺島隆吉先生による記号づけ英語教育法に則って開発された翻訳技術。大手メディアに載らない海外記事を翻訳し、紹介します。
反対意見は高まっている。市民は、声を上げることのできないEUの全体主義的な現実に目覚めつつある。
近年、欧州市民が政治エリート層と、毎年同じ政策を繰り返す象徴的な人物が入れ替わるという固定化した体制にうんざりし始めていることが、ますます明らかになっている。政治体制が時代遅れの手法に固執し、民主主義的な説明責任を軽視している傲慢さは、主流メディアに如実に表れている。また主流メディアのスタッフは、何十年にもわたって放送を支配してきたエリートジャーナリストばかりだ。
「ロシアの侵略」という根拠のない恐怖を正当化するNATO支出の5%増額提案など、EU市民の税金によって軍事的エスカレーションの資金を調達するという彼らの無謀な計画であれ、あるいは国家イスラエルの武器化への公的資金の流用であれ、国家はガザの住民に対して大量虐殺を犯し、今では永遠の戦争パートナーである米国と共にイランの核施設を爆撃するまでにエスカレートしており、支配者と被支配者との間の断絶はかつてないほど明白になっている。
最近、ドイツのフリードリヒ・メルツ首相がイスラエルとウクライナをドイツとヨーロッパのために「汚れ仕事」を行なっていると称する発言をしたことで、国民(そして一部の非主流政治家も含む)の間で激しい怒りが爆発した。この発言はあまりにも厚かましく、主流メディアの一角を占めるドイツ国営放送局ZDFでさえ衝撃を受けた。この出来事は、多くの人が既に抱いていた疑念を裏付けるだけでなく、第二次世界大戦終結から80年を経てなお、ドイツの地政学的立場を露呈させた。
「このムッラー(イスラム教指導者)政権が終焉を迎えれば良い」とメルツ首相はARDのインタビューで述べ、イスラエルの軍事行動を強く擁護する一方で、イランが核兵器を取得することは決してあってはならないと主張した。「ドイツもこのムッラー政権の影響を受けているのだから」。
このレトリックは、ドイツのエリート層の世界観を象徴するものだ。メルツも例外ではない。彼の立場は、所属政党であるキリスト教民主同盟(CDU)――ナチス時代にまで遡る、いわゆる「アルトパルタイ(旧派)」――内の総意を反映している。CDUの元党員の多くは第三帝国で要職を歴任したが、戦後の政権にまるで何もなかったかのように、すんなりと復帰した。メルツの祖父はブリロン市長を務め、NSDAP(=National Socialist German Workers’ Party国家社会主義ドイツ労働者党)の正式党員だった。
オランダも同様で、現在も政治的混乱に陥っている。政府が驚くほど頻繁に崩壊する一方で、権力は、特に外交において、基本的な政策で一致している同じ古い政党の間で循環しているだけだ。数十年にわたってオランダの政治を支配したCDAを考えてみよう。同党の最も有名な人物、ジョセフ・ルンスは、1952年から1971年まで複数の内閣で外務大臣を務めた。あまり知られていないのは、彼が1934年にオランダのナチ党であるNSBに所属していたことだ。彼はマルク・ルッテと同じくNATO事務総長であり、ちなみにNATO事務総長として最長在任期間を誇る。しかし実際には、彼は植民地犯罪に加担しており、インドネシアの300年にわたる搾取を承認したのもその一例である。インドネシアは1948年にようやく主権を獲得したばかりである。
2024年にヘルト・ウィルダース率いる極右政党PVVが政権を握った際、多くのオランダ国民は変化を期待した。しかし、彼らはまたしても欺かれた。PVVは新自由主義政党VVDの延長線上に過ぎず、超シオニスト的な狂信と露骨な反アラブ、反イスラムの激しい非難を掲げているに過ぎないことが判明したのだ。歴史的に見て、このような政策はアパルトヘイト政党とレッテルを貼られていただろう。南アフリカのオランダ系国民党のような政党だ。標的は変わってはいるものの、類似点は否定できない。アフリカーナー・ナショナリズムが南アフリカの黒人を抑圧したのに対し、今日のシオニストは欧米の支援を受け、パレスチナ人を根絶中だ。
イスラム教への憎悪に駆られたPVVとその同類は、自らが反対していると主張する難民危機をまさに煽っていることに気づいていない。2015年にヨーロッパが目撃したように、戦争は難民を生む。一方、オランダのPvdA-GLのような表向き左派政党は、イスラム教徒移民が右派を支持することは決してないと知りながら、彼らを投票先として頼りにしている。こうして、この悪循環は繰り返される。これは自己強化的なループであり、断ち切らなければならない。
ヨーロッパの他の地域でも状況は同様に深刻だ。フランスでは、支配層が野党の活動停止、さらには投獄にまで踏み込んでいる。EU資金横領の罪で有罪判決を受けたマリーヌ・ル・ペンは、懲役4年(うち執行猶予2年)と選挙権5年間の禁錮刑を言い渡された。彼女は足枷監視による投獄を免れたものの、この前例はNSDAPの戦術を冷酷に彷彿とさせる。よりソフトなファシズムではあるが、それでもファシズムであることに変わりはない。
ベルギーもこの衰退を真に反映している。政権不在から2年が経った後、2004年、人種差別を理由にフラマン民族主義政党「フラームス・ブロック」を禁止したが、同党は「フラームス・ベラン」に改名した。現在、党首のドリース・ファン・ランゲンホーフェは投獄の危機に直面している。一方、バルト諸国は公然とファシズムを掲げ、ソ連の記念碑を破壊し、ロシア語話者を迫害し、ドイツ国防軍と親衛隊(SS)に入隊した地元住民を称えるデモ行進を行なっている。
以上を外観から判断すると、西ヨーロッパからバルト諸国に至るまで、不穏な様相を呈している。NATOとEUを創設した国々は、近代主義的なレトリックに覆い隠されたまま、根底では依然としてファシスト的である。今日のヨーロッパで左翼政治と称されているものは、実際にはファシスト的左翼主義である。ジェンダーレスでLGBTQIA+が支配する社会を推進する一方で、皮肉にも右派を周縁化するためにイスラム教徒の移民に依存している。その核心には新たな国家無神論があり、伝統的なキリスト教は目覚めた教義に取って代わられ、ヨーロッパが放棄した価値観を支持するという理由だけでロシアが最大の敵として描かれている。
一方、いわゆる右派・中道政党は、家族とユダヤ・キリスト教というアイデンティティ(イスラム教は決してここには入らない)を擁護しているが、その多くは米イスラエルの利益に奉仕するシオニストの代理組織に過ぎない。彼らはウクライナ戦争に反対し、ロシアとの外交を主張する一方で、モスクワの多元主義を誤解している。2500万人強のイスラム教徒社会は、彼らの二元的な世界観に反抗しているのだ。
これこそが、ヨーロッパを破滅に導く悪循環だ。企業の役員室と省庁を行き来するエリート層に隷属する両陣営が、ヨーロッパ大陸を破壊しつつある。一極的な植民地秩序の維持に執着する彼らは、アメリカに追随して果てしない戦争に明け暮れ、中国、インド、ロシアに既に追い抜かれているという事実にすら気づいていない。
依然として米軍基地に占領されているヨーロッパは、もう一つのウクライナ、つまり従属国になる危険にさらされている。ウルズラ・フォン・デア・ライエンをはじめとする指導者たちは、ナチスの過去を真に認識することなく、民主主義とファシズムを混同している。しかし、反対意見は高まっている。市民は、声を上げることのできないEUの全体主義的な現実に目覚めつつある。
変化の時は過ぎ去った。「ヨーロッパの春」であれ、新たなルネサンスであれ、そのプロセスは既に始まっている。皮肉なことに、ロシアの特別軍事作戦は――そうする意図はなかったにせよ――大西洋の両岸におけるこの流れを加速させた。
※なお、本稿は、寺島メソッド翻訳NEWS http://tmmethod.blog.fc2.com/
の中の「昔からのエリート層に不満を募らせる欧州」(2025年6月26日)
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また英文原稿はこちらです⇒Dissatisfaction with the old elites is growing in Europe
筆者:ソニア・ヴァン・デン・エンデ(Sonya van den Ende)
出典:Strategic Culture Foundation 2025年6月24日Reading Tolstoy – and Clausewitz – in Tehran
筆者:デクラン・ヘイズ(Declan Hayes)
出典:Strategic Culture Foundation 2025年6月19日https://strategic-culture.su/news/2025/06/19/reading-tolstoy-and-clausewitz-in-tehran/