
☆寺島メソッド翻訳NEWS(2025年7月2日):イラン核疑惑に対して、トランプ大統領は自ら任命した情報局長官よりも民営情報会社パランティア社を信頼
国際※元岐阜大学教授寺島隆吉先生による記号づけ英語教育法に則って開発された翻訳技術。大手メディアに載らない海外記事を翻訳し、紹介します。
トランプはイスラエルの肩をもち、イランは核爆弾を有することに「非常に近づいている」と推測し、さらに自身はトゥルシ・ギャバードの考えは気にしない、とも述べた。
IAEA当局が2025年6月12日に出した「不遵守」決議は、その翌日におこなわれたイスラエルによる「青天の霹靂」攻撃に向けた計画的な前触れとなった。イスラエルによると、イランとの戦争に踏み切ろうというこの計画のもとになったのは、攻撃する「好機」が出現したためであり、イランが核爆弾の開発を急いでいる(から戦争の口実にすべきだ)という情報があったからではない、という。―アラステア・クルック
イランが核爆弾の開発に非常に近づいているという突然の主張(こんな降って湧いたような話に米国民はどうしてこんなことになったのか、と困惑し、一瞬にして、わが国の戦争はじまるのか、とびっくりしたようだが)は、その後の6月17日にIAEA(国際原子力機関)のグロッシー事務局長が否定した。(しかしそれは、イランに対する突然の攻撃が既におこなわれたあとのことだった)。
「私たちは、核兵器開発に向かうという(イランによる)体系的な取り組みがあった証拠を持っていません」とグロッシー事務局長はCNNに対して明言した。
この声明に対して、イランのエスマイル・バケイ外務省報道官が6月19日に以下のような反論をおこなった。
「グロッシー事務局長、手遅れです。この真実をあなたは完全に偏った先日の報告書の中に隠していましたね。その報告書により、EUの三国と米国が手を加えた上で(イランの)「非遵守」決議を出させていました。その決議が利用されることにより、最終的な口実として、あの大虐殺嗜好政権がイランへの侵略に乗り出したのです。そして、わが国が平和利用している核施設に対する不当な攻撃を加えたのです。この犯罪的な戦争行為により、何人の無実のイラン国民が殺傷されたか、ご存知ですか?あなたはIAEAを、NPT(核兵器の不拡散に関する条約)非加盟国(イスラエル)がNPT加盟国(イラン)から第4条*に基づく基本的権利を奪うための都合の良い道具に仕立て上げました。あなたには良心があるのでしょうか?」
*第4条・・・締約国が原子力の平和的利用を追求する権利を認めている
この発言に対して、アリー・ラーニージャーニー最高指導者顧問がこう付け加えた。
「この戦争が終わった際には、わが国はIAEAのラファエル・グロッシー事務局長の責任を追求します」と。
二人が言っているのはつまりこういうことだ。
ロシアの外務省は、イラン・イスラエル間の衝突事故の激化について以下のような声明を出した。
「(IAEAという)機関の指導者に圧力をかけ、イランの核開発計画について、矛盾の多い「総合評価」を出させたのは、これらの「同情者たち(EU三国)でした。そしてこの間違った評価は(2025年)6月12日のIAEA理事会が出した、反イランに偏った決議案を押し通す際に利用されました。この決議案が、西エルサレム当局が行動を起こす青信号となり、悲劇を産むことになったのです。(つまり、その翌日の6月13日におこなわれた奇襲攻撃のこと)」
その背景は以下のとおり:
2025年6月12日にIAEAが出した決議案は、イスラエルがイランを攻撃する前提となった(さらには、トランプ大統領を揺るがし、自身の国家情報長官からの警告を拒否する要因となった)のだが、報道によるとこの決議案の基礎は、モサドなど西側の諜報機関から伝え聞いたのではなく、IAEAが持つソフトウェアからの情報だった、という。サイト「DD Geo-politics」の報道のとおり、2015年以来、IAEA は、パランティア社のモザイクという基盤に依存してきた。この基盤は5000万ドル相当の人工知能体系であり、衛星画像やソーシャルメディア、人事記録といった何百万もの観測値を通して、核の脅威を予見するためのものである。
「イランの(濃縮ウラン)備蓄量はここ何ヶ月もの間、安定して増え続けていたが、事態の打開が間近に迫っているという見方が一気に広まったのは、2025年6月6日にIAEAが非難決議を採択した後のことだ。19対3で採択されたこの決議は、イスラエルに必要な外交的裏付けを与えた。パランティア社のモザイク基盤は、この転換において重要な役割を果たした。そのデータは5月31日の報告書の骨子となり、フォードウ地区とラヴィサン=シアン地区における異常を警告し、長年にわたるイランの否定と妨害工作にもかかわらず、トルクザバード地区における以前の疑惑を再現した。モザイク基盤は もともと、イラクとアフガニスタンにおける反乱活動を特定するために考案されたものだ。
モザイク基盤が使用している演算法は、確認された証拠ではなく、付加情報や行動特性、ネット上の情報などの間接的な指標から「敵対的な意図」を特定し、推測することを目指している。言い換えれば、容疑者が何を考え、計画しているかを仮定するためのものなのだ。6月12日、イランは、IAEAのラファエル・グロッシ事務局長がモザイク基盤の弾き出した出力をイスラエルと共有していることを示す文書を漏洩した。2018年までに、モザイク基盤は4億を超える個別のデータ関連情報を処理し、JCPOA(包括的共同作業計画、イランへの制裁解除を目的とした合意)の下でのこれらの施設へのIAEAの抜き打ち査察を正当化するなど、60を超えるイランの施設に疑いを掛けさせることに役立ってきた。これらの出力は、演算上の方程式に大きく依存していたが、正式なIAEA保障措置報告書に組み込まれ、国連加盟国と核不拡散体制からは、信頼できる証拠に基づく評価として広く受け入れられてきた。しかし、モザイク基盤は受動的な体系ではない。演算から敵対的な意図を推測するように訓練されたものであるが、核監視に再利用されると、その方程式は単純な相関関係を悪意のある意図に変換する危険性がある。
イスラエルの有力な評論家は次のように述べている。
イスラエルの著名な中道右派評論家、ベン・カスピット氏(マアリヴ紙):
イランの核兵器開発への『突破』は実際に検知されたのか?おそらくそうではない。最高指導者による軍事核兵器開発の『命令』は実際に出されたのか?おそらくそうではない。では、なぜわが国は戦争に突入したのか?他に選択肢がなかったからだ。イラン側はイスラエル殲滅計画を推進しており、わが国には他に選択肢がなかったのだ…。10月7日:冷水がわが国全体を目覚めさせた。関係者全員が、わが国の破滅を企む者は必ず破滅することを理解する必要がある。目を凝らして状況を見極め、両目の間に銃弾を撃ち込め…。今後、敵がどこかでおこなったあらゆる行動には、必ず行動が伴わなければならない。蛇の頭が上がるたびに、その首をはねなければならない…。そしてもう一つ。わが国の前に突如現れた、稀有で一度きりの歴史的な好機…。これらすべてが、この戦争への決断を正しかったものにした…。ネタニヤフ首相は現在、陶酔状態にある。」
イスラエルの解説者、ナフム・バルネア氏(サイト、イェディオト・アホロノット):
「戦争開始の決定はすべてネタニヤフのものだ。そして今、彼が決定権を持ち、責任を負っている。すべての功績は彼のものだ。トランプは、イスラエルに戦争開始の青信号を出した。その条件は、米国がイスラエルの友好国としてこの戦争に責任をもつ存在として見せないこと、だった。トランプのやり方は、ゼレンスキーのウクライナとハメネイのイランを区別しない。途中で屈辱を与えることで、最終的に合意に至ることを保証する、というものだ。」
イスラエルとNYタイムズの解説者、ローナン・バーグマン氏(サイト、イェディオット・アホロノット):
先週の一連の暗殺の必要性は、昨年9月に8200部隊や情報局調査部、モサド、そして政府関係機関の他の部門の高官の間で初めて考えられた。きっかけは、イスラエル国防軍(IDF)がヒズボラに与えた敗北、それに続く10月のイラン攻撃の成功と防空体系の破壊、そして12月のダマスカスにおけるアサド政権の崩壊とIDFによる防空体系の破壊であった。一連の出来事から、多くのイスラエル高官は、イランを攻撃する前例のない好機、千載一遇の好機が到来した、と信じるに至った。…こうして、数千マイル離れた科学者の運命を左右する斬首討論会が開かれ、誰を最高重要度A段階に、誰を最低重要度段階レベルB、C、Dに格付けするかが決定された。
全体像はこう:
どうやら、トランプは、ネタニヤフやイスラエル戦略問題相ロン・ダーマー、米国中央軍のクリラ将軍に説得されたようだ(Politico紙は、クリラ将軍が、イランには「爆弾はない」というトゥルシ・ギャバード国防長官の評価が間違っている、とトランプを説得するのに重要な役割を果たした、と報じている)。トランプはイスラエルの側に立ち、イランが爆弾保有に「非常に近い」と主張し、「彼女(ギャバード)がどう思うかは気にしない」と付け加えた。トランプは、6月13日の潜入作戦の前日には、イスラエルによるイランへの攻撃が「合意を早める可能性がある」と声高に推測していた。シリアの予想外の突然の「陥落」が、ネオコンを刺激して、イランでも同じことがすぐに繰り返せるかもしれない、と想像させたことは間違いない。最高指導者の暗殺にこれほど重点が置かれているのも、このためである。しかし、イランが崩壊せず、イランの防空体系が予想外に素早く再起動し、イランのイスラエルへの報復攻撃が始まると、親イスラエル派は混乱状態に陥り、米国がイスラエルに代わって戦争に参加するようトランプ大統領に多大な圧力をかけた、というわけだ。
これにより、トランプは、オデュッセウスが怪獣、サイレン、スキュラ、カリュブディスの中からどれかを選ぶのに苦しんだくらいのひどい板挟みに陥った。MAGA支持基盤(米国がまたしても永遠の戦争に加わるのを防ぐためにトランプに投票した人たちで、イスラエルの戦争に加担すれば、次回の中間選挙で共和党が敗北する可能性が高い)を遠ざけるか、それとも、超富裕層のユダヤ人寄付者(ミリアム・アデルソンなど。その資金は議会に影響力を持ち、その資源はディープステートによってイスラエル第一主義者との相互利益を追求するために利用されている)に嫌悪される道を選び、遠ざけるかという選択だ。
「大量破壊兵器がある」と明言したコリン・パウエル国務長官がその後のイラクの顛末に果たした役割が頭をよぎる・・・
※なお、本稿は、寺島メソッド翻訳NEWS http://tmmethod.blog.fc2.com/
の中の「イラン核疑惑に対して、トランプ大統領は自ら任命した情報局長官よりも民営情報会社パランティア社を信頼」(2025年7月2日)http://tmmethod.blog.fc2.com/
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また英文原稿はこちらです⇒The key nuclear allegation that started the war was coaxed from a Palantir counter-intelligence algorithm
筆者:アラステア・クルック(Alastair Crooke)
出典:Strategic Culture Foundation 2025年6月23日https://strategic-culture.su/news/2025/06/23/key-nuclear-allegation-that-started-war-was-coaxed-from-palantir-counter-intelligence-algorithm/