
青山透子氏インタビュー「日航123便墜落」真相究明に政治の言論封殺(紙の爆弾2025年7月号掲載)(下)
社会・経済青山透子氏インタビュー「日航123便墜落」真相究明に政治の言論封殺(紙の爆弾2025年7月号掲載)(上)はこちら
なぜ政府と日航は事実に向き合わないのか
――佐藤氏も問題の質疑にあたって青山さんの著作を「ベストセラー」と紹介したように、墜落の真相究明を求める声が急激な高まりをみせています。どう感じていますか。
青山 私は正直、驚いています。私の本を絶賛してくださった森永卓郎さんが、墜落40年の今年1月に残念ながら亡くなられました。まず人気のある森永さんが世間に衝撃を与え、次に私にも注目が集まった形です。
佐藤議員の発言も、彼や支持層の焦りを受けてのものであることは、間違いありません。自衛隊の存在意義が問われれば、防衛予算にも影響するかもしれません。国内軍事産業などと経済的関係が深い元幹部も、広報宣伝マンの軍事評論家も含めて今までのような商売ができなくなる可能性があります。彼らが最も必死になっているのは、その点なのではないでしょうか。
――政府見解では、「ボーイング社の圧力隔壁の修理ミス」が原因とされています。この言い分を、訴訟大国アメリカを代表する企業が引き受けたことも、大きな疑問のひとつです。
青山 日航はボーイング社を訴えないどころか、ボーイング社は同年の売上が過去最高を記録。全日空も政府・自衛隊も、みんなこぞってボーイングを買い支えたのです。
――政府としても、自衛隊の存在意義が問われる事件だけに、アメリカに永続的な貸しをつくったように見えます。
青山 森永さんも、その点を強調されていますね。
――ちなみに、佐藤氏の質疑と青山さんらの抗議を採り上げた産経新聞(5月1日付)は、「青山氏は取材に応じる意向を示した」と書き、翌日付で回答を掲載したものの、それに対する続報がありません(5月20日現在)。
青山 私のことはさておいても、産経新聞が罪深いのは、息子・娘・妹・甥・姪の5人を失った小田周二さんが建立した慰霊碑に関する報道です。小田さんは私よりもずっと以前から墜落原因に疑問をもたれていた方です。当初、慰霊の園財団で日航の管理で立てた木の墓標が台風で流されてしまったために、遺族にスペースが与えられ、そこに小田さんが慰霊碑を建立されました。ご自身の問題意識から、亡くなったご家族の名前や写真とともに2023年に立てたのです。
それを産経新聞が批判。慰霊碑のアップの写真を掲載して、小田さんが大々的にアピールしているように見せましたが、実際は与えられたスペースに建てた小さな石碑にすぎません(下写真)。産経も佐藤氏も、墜落原因に疑問を持つ人たちの声をすべて封じ込めたいのでしょう。実は私が本を出す前の1990年代から、小田さんのような技術畑の遺族たちは事故調の結論に疑問を呈し続けてきました。それが、40年目にして無視できなくなるほど広まったからだと思います。
産経新聞や佐藤氏に限らず、私たちの活動は、圧力にさらされてきました。今年1月にも、「JAL123便事故究明の会」会長を名乗る岡部俊哉元陸上幕僚長から公開質問状が送られてきて、私の代理人弁護士を通じて2月13日付けですでに回答したにもかかわらず「回答を得られなかった」などと書いています。彼らが一方的に送り付けて、回答なしとは失礼千万であって、このように嘘つきばかりです。
――最後に、真相究明の意義とは。
青山 一人でも事故原因に疑問を持つ遺族がいる限り、その方々をサポートし、真実を追求するのは日本航空にいた人間としての使命です。それを口封じする日航は、亡くなった自らの仲間を貶めている事実をどう考えているのか。
救助や検死を含め、関わった人々がたくさんおられます。地元の人たちも、当時の記憶を大事にされています。
1月末にもアメリカで民間機と軍用ヘリの衝突事件があり、撃墜事件も世界中で起き続けています。それでも、たとえば2014年に発生したマレーシア航空MH370便墜落では、同国政府が今から何十億円もかけてインド洋海底を探すといいます。なぜ日本の123便墜落では、目の前の相模湾に垂直尾翼が沈んでいるのに放置を続けるのか。二千万円もあれば引き上げられるという指摘すらあるのです。
昨年1月の羽田空港炎上事故も、いまだボイスレコーダーが開示されません。これでいいわけがありません。なにより、520人を殺してしまった日航に、公共交通機関としての使命を思い出させなければなりません。
――ありがとうございました。
本記事は、「紙の爆弾2025年7月号」の転載原稿になります。
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元日本航空国際線客室乗務員、東京大学大学院博士課程修了。主な著書に『日航123便 墜落の新事実 目撃証言から真相に迫る』(2017年)、『日航123便墜落事件 JAL裁判』(2022年)、『日航123便墜落事件 隠された遺体』(2024年)など(いずれも河出書房新社)。