【連載】櫻井ジャーナル

【櫻井ジャーナル】2025.07.14XML:シリアのアル・カイダ政権の高官がアゼルバイジャンでイスラエルの高官と会談

櫻井春彦

シリアのアフマド・アル-シャラア(アブ・モハメド・アル-ジュラニ)暫定大統領が7月12日にアゼルバイジャンを訪問したが、それと並行してシリアとイスラエルの政府高官がバクーで会談したと報道されている。ゴラン高原やシリアにおけるイスラエル軍の駐留などが話し合われたようで、対イラン政策のほか、ヒズボラやパレスチナ武装勢力の武器なども問題にしているようだ。

アゼルバイジャンはイスラエルと緊密な関係にある国で、NATOやイスラエルが攻撃の拠点として使っている。6月1日に実行されたウクライナのSBUによるロシアの戦略核基地に対する攻撃、あるいは6月13日からイスラエルが始めたイランに対する攻撃でも使われたと言われ、イスラエルにとってアゼルバイジャンは兵站や情報収集の拠点でもある。

 

イランのIRIBテレビはアゼルバイジャンとの国境近くにあるイランの村の住民を取材、複数の住民がアゼルバイジャンからイランに向かって飛行するイスラエルのドローンを見たと語っている。​中にはイスラエル軍の戦闘機も見たとしている。

 

アル-シャラアが率いていたHTS(ハヤト・タハリール・アル・シャム)はアル・カイダ系のアル・ヌスラ戦線を改名した組織で、その前身はAQI(イラクのアル・カイダ)。2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターやバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃された後、アメリカのジョージ・W・ブッシュ政権が「テロリストの象徴」に祭り上げ、世界侵略の口実に使った武装集団だ。

 

しかし、「アル・カイダ」という組織が存在しているわけではない。​イギリスの外相を1997年5月から2001年6月まで務めたロビン・クックが05年7月に書いているように、「アル・カイダ」はCIAの訓練を受けた「ムジャヒディン」の登録リストを意味する​。プロジェクトが決まると、そのリストから戦闘員を選ぶだけだ。

 

2011年2月にリビアを攻撃した際にはLIFG(リビア・イスラム戦闘団)というアル・カイダ系の武装勢力を編成、NATO軍と連携させてムアンマル・アル・カダフィ体制を同年10月に倒し、カダフィを虐殺している。

 

2011年3月にはシリアに対する攻撃を開始するが、そこでもアル・カイダ系武装勢力が使われた。リビアで目的を達成した後、アメリカをはじめとする侵略戦争の黒幕国は戦闘員や兵器をリビアからシリアへ移動させ、さらに軍事支援を強化するのだが、それを危険だと警告するアメリカの機関が存在した。アメリカ軍の情報機関DIA(国防情報局)である。

 

DIAが2012年8月にホワイトハウスへ提出した報告書によると、外部勢力が編成した反シリア政府軍の主力はAQIであり、その集団の中心はサラフィ主義者やムスリム同胞団だと指摘、さらにオバマ政権の政策はシリアの東部(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配地域を作ることになると警告している​。その時にDIAを率いていた軍人がマイケル・フリン中将にほかならない。

 

この警告通り2014年には新たな武装集団ダーイッシュが登場する。この武装集団はこの年の1月にイラクのファルージャで「イスラム首長国」の建国を宣言、6月にはモスルを制圧。その際にトヨタ製の真新しい小型トラック、ハイラックスを連ねてパレードし、その後、首を切り落とすなど残虐さをアピールし、NATO軍の介入を誘った。

 

その一方、オバマ大統領は政府の陣容を好戦派へ入れ替える。例えば2015年2月に国防長官をチャック・ヘーゲルからアシュトン・カーターへ、同年9月には統合参謀本部議長をマーチン・デンプシーからジョセフ・ダンフォードへ交代させた。

 

ところが、デンプシーが統合参謀本部議長の座を降りてから5日後の9月30日、ロシア軍がシリア政府の要請で介入し、ジハード傭兵を攻撃して占領地域を急速に縮小させていく。そこでアメリカはクルドを新たな傭兵として使い始めるが、クルドを敵視するトルコは侵略同盟から離脱。理由は不明だが、ロシア軍はイドリブへ逃げ込んだアル・カイダ系武装勢力にとどめを刺さなかった。その後、アサド政権は経済戦争で疲弊、昨年11月27日にHTSがシリア軍を奇襲攻撃すると、呆気なくアサド政権は倒れてしまう。

 

そして作られたアル-シャラアを中心とする暫定政権は欧米やイスラエルと緊密な関係にあるのだが、シーア派やキリスト教徒を虐殺している。欧米諸国が支援しているキエフのクーデター体制もキリスト教の一派である正教会を弾圧しているのと似ている。

 

その政権を率いるアル-シャラアの側近として注目されているのがラザン・サフォーというイギリス系シリア人。この女性はムスリム同胞団の家庭に育った反アサド体制の活動家だが、バシャール・アル・アサド政権が倒れるまでシリアを訪れていない。

 

サフォーはロンドンで生まれ育ち、SOAS(東洋アフリカ研究学院)で学んだ人物。シリアで戦争は始まった直後、シリアの反体制派として名前を売っている。彼女の父親であるワリド・サフォーがムスリム同胞団の指導的な活動家だったことも影響したのだろう。ここでもムスリム同胞団がアメリカやイギリスの手先として動いている。

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