
【櫻井ジャーナル】2025.07.15XML:エプスタインの親友だったトランプ大統領を取り込んだネオコンの手段は何か
国際政治ドナルド・トランプは大統領選挙の当時からウクライナでの戦闘を止めると主張していたが、風向きが変わった。トランプは7月7日、アメリカはウクライナへの武器供給を継続すると述べている。決別するはずのネオコンに取り込まれたようだ。
アメリカのネットワーク局NBCニュースは7月2日、ピート・ヘグゼス国防長官がウクライナへのミサイルと弾薬の輸送を一時停止するよう命じたと伝えた。同省の政策責任者であるエルブリッジ・コルビーが主導した見直しでアメリカ軍の備蓄兵器が枯渇していることを確認、それを懸念してのことだった。国防長官の発言を大統領が否定したわけだ。
NATOに加盟しているヨーロッパ諸国はアメリカよりも厳しい状況にあり、ウクライナのクーデター体制を支援してきた西側諸国はウクライナでロシアと戦争を継続することが難しくなっている。
こうしたことは2022年のうちに西側でも指摘されていたのだが、ロシアは経済的にも軍事的にも弱いと信じる西側の支配層は「簡単に勝てる」という思い込みのため、窮地に陥った。その窮地から抜け出そうと西側は有力メディアを使ったイメージ戦争を仕掛けているが、成功していない。
トランプの言うことを変えさせるため、ネオコンは故ジェフリー・エプスタインの問題を利用しているとも言われている。
1970年代にイスラエル軍の情報機関ERD(対外関係局)に所属、87年から89年にかけてイツァク・シャミール首相の特別情報顧問を務めたアリ・ベンメナシェによると、エプスタイン、ギレイン・マクスウェル、彼女の父親でミラー・グループを率いていたロバート・マクスウェルはいずれもイスラエル軍の情報機関、つまりアマンのために働いていた。ロバートは1960年代から、エプスタインとギレインは1980年代の後半からその情報機関に所属してたとベンメナシェは語っている。(Zev Shalev, “Blackmailing America,” Narativ, Septemner 26, 2019)
トランプとエプスタインは親友だと言われているが、このふたりが知り合ったのは1987年。ほぼ同じ時期にギレインとエプスタインも知り合っている。この当時、ベンメナシェはイランやニカラグアの反革命ゲリラに対する秘密工作、いわゆる「イラン・コントラ事件」に加わっていた。
しかし、スキャンダルで有力者を脅迫し、操るという仕組みを作り出したのはエプスタインが最初ではない。第2次世界大戦の後に限っても、例えば1953年から54年にかけてジョセフ・マッカーシー上院議員の法律顧問として「赤狩り」に参加、後にドナルド・トランプの顧問弁護士になるロイ・コーンも同じことをしていた。
ちなみに、マッカーシーの情報源はJ・エドガー・フーバー。1935年6月から72年5月までFBI長官を務めた人物だ。これだけ長い間、長官を務められたのは、有力者の弱みを握っていたからだと言われている。
コーンは弁護士だが、彼のボスだったルイス・ローゼンスティールは禁酒法時代に大儲けしたひとり。ローゼンスティールの妻だったスーザン・カウフマンによると、元夫はCIAの秘密工作にも協力していたユダヤ系ギャングの大物であるメイヤー・ランスキーと親しかった。
こうした脅迫人脈はネオコンと重なるが、そのネオコンはソ連が消滅した直後の1992年2月、国防総省のDPG(国防計画指針)草案という形で世界制覇計画を作成した。その時の大統領はジョージ・H・W・ブッシュ、国防長官はディック・チェイニー、国防次官はポール・ウォルフォウィッツで、ウォルフォウィッツが中心になってDPG草案は書き上げられた。そこで、このDPG草案は「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」とも呼ばれている。
このドクトリンの目的は新たなライバルの出現を防ぐことにあり、その対象には旧ソ連圏だけでなく、西ヨーロッパ、東アジア、西南アジアも含まれる。ドイツと日本の場合、アメリカ主導の集団安全保障体制に組み入れて「民主的な平和地域」を創設する、つまり日本とドイツを自国の戦争マシーンに組み込むと宣言したのだ。
2014年2月にウクライナのビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒したのもネオコン。NATOの訓練を受けたネオ・ナチの集団を利用したのだが、このネオ・ナチ体制への反発が強く、内戦になる。この戦闘は当初、反クーデター派が優勢だったため、ドイツやフランスが仲介する形で停戦が決まる。2014年の「ミンスク1」と15年の「ミンスク2」だ。
この停戦はクーデター政権の戦力を増強する時間稼ぎが目的だったことを、のちにアンゲラ・メルケル元独首相やフランソワ・オランド元仏大統領が認めている。この経験があるため、ロシア政府はウクライナ/NATOとの停戦に慎重だ。
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