【連載】櫻井ジャーナル

【櫻井ジャーナル】2025.07.19XML: イラン攻撃の拠点と噂されたアゼルバイジャンがイランと関係が悪化していない

櫻井春彦

アゼルバイジャンのイリハム・アリエフ大統領は6月27日、イランの新任特命全権大使の信任状を受け取ったと伝えられている​。アゼルバイジャンはNATOやイスラエルが攻撃の拠点として使っている国だが、こうした話を否定する動きだ。6月1日に実行されたウクライナのSBUによるロシアの戦略核基地に対する攻撃、あるいは6月13日からイスラエルが始めたイランに対する攻撃でも使われたと言われていた。

 

これに対し、イスラエル軍はイラク北部やシリア北東部にあるクルド人の支配地域からイランの西アゼルバイジャン州、東アゼルバイジャン州、さらにアルダビール州を経てカスピ海へ出て、そこから南下してテヘランなどを奇襲攻撃したという見方がある。アゼルバイジャンの方角からテヘランへミサイルやドローンは向かったのだが、アゼルバイジャンで発射されたわけではないというのだ。

 

イラクのクルドはバルザニ家が率いていたが、その家に所属するムスタファ・バルザニは1960年代の後半からイスラエルの情報機関モサドのオフィサーだったと言われ、その息子であるマスード・バルザニもイスラエルの影響下にあるという。イスラエルがこの地域からミサイルやドローンを発射しても不思議ではない。

 

イランとの関係が悪化していないようなアゼルバイジャンだが、ロシアと関係は悪化しているように見える。アゼルバイジャンではロシア人ジャーナリストが弾圧され、その一方でロシアではアゼルバイジャン系犯罪組織の摘発が強化されているのだ。

 

ソ連消滅後、ボリス・エリツィン時代のロシアでは国民の資産が不正な手段で国外の強大な私的権力に奪われ、その手先として活動していた一部のロシア人も巨万の富を築いた。「オリガルヒ」と呼ばれる人びとだが、そのオリガルヒが犯罪組織と連携した。

 

ウラジミル・プーチン政権はオリガルヒの力を弱め、政府に従属することを求めたが、少なからぬ富豪はロンドンやイスラエルへ逃げた。ロンドンに富豪が逃げ込めば、シティへ大量の資金が流れ込む。そこでロンドンは「ロンドングラード」と呼ばれるようになった。

 

西側諸国が反プーチンの象徴に仕立てたアレクセイ・ナワリヌイもそうした流れと無関係ではない。彼の妻の父親、ボリス・アブロシモフは元KGBで、ロンドンではロシア人の財産を管理する銀行家だったのである。

 

犯罪組織のネットワークも世界へ広がったはずだが、CIAは工作の手先として、犯罪組織やカルトをしばしば使う。イスラエルの場合、ウイリアム・ケイシー元CIA長官の友人であるブルース・ラッパポートはロバート・マクスウェルを介し、ロシア暗黒街におけるボスの中のボスと言われたセミオン・モギレビッチと結びついていた。この話はイスラエル軍の情報機関AMANの局長を務めた後に参謀総長に就任、1999年7月から2001年5月まで首相を務めたエフード・バラクの話だ。(Whitney Webb, “One Nation Under Blackmail Vol. 1,” Trine Day, 2022)

 

アゼルバイジャン系の犯罪組織もアゼルバイジャン系の実業家と結びつき、その背後に西側の情報機関が存在している可能性がある。ソ連消滅後に出現した「実業家」は犯罪組織と関係があり、その犯罪組織は内外の情報機関と結びついている可能性がある。ロシアの内務省やFSB(連邦保安局)が犯罪組織を国家安全保障上の問題だと認識しても不思議ではない。この問題はイランにとっても深刻だ。

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