新型コロナワクチン接種の勧奨(推奨)をやめた際、厚生労働省はその周知を自治体への事務連絡で基本的に済ませていたことが分かった。2023年12月まで続いた同ワクチンに関する臨床試験(治験)結果は独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)が評価を終えているが、国内で公表する予定はないという。
従来株対応4回目接種から、勧奨の対象を60歳以上と基礎疾患を持つ人のみに変更した際の事務連絡。国民の大半はこの変更を知らなかったはず
新型コロナワクチン接種の勧奨をやめた時期について福岡資麿厚労省は7月22日の記者会見で、対象となる年代とワクチンの種類を次のように答えている。
・2022年4月 従来株対応の4回目から60歳未満一般は終了
・2023年4月 追加接種(オミクロン株対応)で65歳未満一般は終了
・2023年9月 従来株対応初回を含む全てで65歳未満一般は終了
・2024年3月 全ての人が終了
この会見で筆者は、①〈それぞれの年代で推奨をやめた際、厚労省としてどのように周知を図ったか〉尋ねると、福岡氏は「周知は行っている」と答えた。筆者が「ホームページでもなかなか見つけられなかった」と重ねると、「事務方に確認する」と応じていた。
併せて、②〈推奨をやめた理由は23年12月まで続いた治験の結果が影響しているのか〉と追及すると、「事務方に確認する」との返答だった。
7月24日、厚労省予防接種課の担当者から電話で回答があった。それによれば、①勧奨終了の周知については、自治体に事務連絡を出したのが基本だった。当時リーフレットも作成し、ホームページに掲載したが、「混乱を避けるために削除した」という。その内容は、「事務連絡と同じ内容を分かりやすくしたもの」だそうだ。
各自治体から住民への周知状況については「対象者には周知していたものと思う」と話す。しかし、筆者が問題にしているのは、対象から外れた人にそのことが周知されたかどうかである。
各事務連絡が載っていると案内されたのは、同省の次のページである。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_notifications.html
「新型コロナワクチンに関する自治体向け通知・事務連絡等【令和6年3月31日まで】」と題するが、関係文書を見るには相当下までスクロールしなければならない。
推奨を一部終了した各段階の文書は、次の通りである。
2022年4月 https://www.mhlw.go.jp/content/000935002.pdf
2023年4月 https://www.mhlw.go.jp/content/001068073.pdf
2023年9月 https://www.mhlw.go.jp/content/001137294.pdf
上段2022年4月28日付文書内の「1.」には、「上記の4回目接種対象者のうち60歳未満の者については、予防接種法(昭和23年法律第68号)第9条に規定する努力義務を適用しないこととすることが適当であるとの方針も取りまとめられたため、留意すること」とある。4回目接種の対象者が狭められたと説明しているが、このことを周知せよではなく、「留意すること」にとどまっている。
中段2023年3月7日付文書「1.(2)」第2段落には、「各市町村においては、住民に対して、令和4年秋開始接種終了時期を周知し、未接種であって接種を希望する者には早期の接種予約を促すこと」とある。前年の接種終了時期を周知することをうたっているが、オミクロン株対応型となった新タイプのワクチン接種を促すのが目的になっている。
下段2023年9月8日付文書「2.(2)」後半には、次の記述がある。
「また、予防接種法第8条の接種勧奨の規定が適用されない重症化リスクが高くない者についても、必ずしも予め接種券を送付する必要はなく、上記の対応例も踏まえて、希望者からの申請に応じて接種券を発行する等の取扱いとすることも差し支えない。ただし、その際、接種を希望する者が確実に接種機会を把握できるよう、予防接種法施行令 (昭和 23 年政令第 197 号)第5条に規定する予防接種の公告等、必要な周知は引き続き行うよう留意すること。」
接種勧奨の対象から外れた65歳未満の健常者には前もっての接種券の送付が不要とつづる一方で、希望者が接種できるよう広告や必要な周知は引き続き行うよう促している。
これでは接種勧奨の対象から外れた人にそのことが伝わることは見込めないだろう。だから、筆者の記事や、大臣との問答を収めた藤江成光(まさみつ)氏の動画投稿に「知らなかった」「しれっと推奨をやめていた」など驚きのコメントが連なるのだ。
②〈推奨をやめた理由は23年12月まで続いた治験の結果が影響しているのか〉の問いについては、「接種勧奨の対象を狭めたことと関係ない」との返答だった。なぜならば、ファイザー社では最終的に23年12月まで続けていた第3相試験(治験)までの結果はPMDAに提出され、評価を終えるも、「審査報告書等を作って報告する予定はない」(担当者)からである。よって当然、審議会にも諮られていない。
今後も「PMDAから公表する予定はない」とのこと。「全く公表されないのか」とただすと、「ファイザー社から米国の臨床試験の公的データベースに登録して公表する予定はある。ただ、その時期は未定」と答えた。
コロナ騒動末期まで続いた臨床試験の結果がワクチン政策に何ら生かされてないとは、驚きである。
そもそも、多くの人が「推奨していないの??」と驚いている。24年3月で全額公費による特定臨時接種は終えたとはいえ、65歳以上と60歳から64歳までの基礎疾患を持つ人には定期接種が続けられている。自治体によっては、補助を付けている所もある。
接種を始めるときはマスコミまで使って大々的に広報する一方、推奨をやめるときは一般国民の耳目にはほとんど触れなかった。治験結果も政策に反映されることなく、巨大製薬企業の利益と副反応被害者だけが増えている。
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