【連載】植草一秀の「知られざる真実」

植草一秀【連載】知られざる真実/2025年7月28日 (月) 諸悪の根源は利権のバラマキ

植草一秀

財政政策運営で重要なことは貴重な財源を何にどう使うのかである。

日本財政の最大の特徴は利権補助金が大きすぎること。

利権補助金は政治屋にとって献金や裏金の原動力になる。

官僚機構にとっては天下り等の利権キックバックの原動力になる。

民間の事業者がロケット事業を手がけるときに、なぜ国民が補助金での負担をする必要があるのか。

正当な根拠はない。

経済活動は自己責任をベースに行われるべきとの主張がなされる。

新自由主義を主張する勢力は常にこのような言説を発している。

その当事者が政府から補助金を受け取ることが大きな矛盾。

民間事業者が半導体工場を建設するのに、なぜ国民が兆円単位の補助金を負担する必要があるのか。

自動車会社がリチウムイオン電池を開発するのに、なぜ国民が数千億円の補助金を負担する必要があるのか。

補助金を受領する企業の関係者が「政府から補助金をもらうために政府にすり寄る発言をするのか」と聞かれて、政権が代わっても補助金はもらえる」とうそぶいているという。

完全な間違い。

見識ある政権が創設されれば利権補助金を廃止することになる。

正しい財政政策を運営できる新しい政権を樹立することが求められているだけだ。

世界の競争に負けないために政府が補助金を投下する必要がある。

この理屈で巨大な資金が補助金として投下されてきた。

その結果、日本企業が世界に冠たる地位を確保できたのか。

否である。

政府が主導して巨大な財政資金を投下してきた半導体企業がどうなっているか。

政府系ファンドのINCJ(旧産業革新機構)が約1390億円を投融資していた有機ELパネル製造会社「JOLED」は2023年3月に破綻。

同じく官民ファンドのINJCは、前身の産業革新機構の時代から7回、4620億円を投下してきた中小型液晶パネルメーカーのジャパンディスプレイ(JDI)の全株式を売却。

金融収益を含めて回収できたのは3073億円で1547億円の損失が確定した。

「日の丸半導体」を旗印にしたエルピーダメモリは2012年に破綻して政府保証の約280億円が消滅した。

また、台湾の半導体企業であるTSMCが熊本に工場を建設することに対して日本政府が1.2兆円の補助金を投下。

なぜ台湾企業の工場建設に日本国民が1.2兆円もの資金を提供する必要があるのか。

政府が利権補助金を提供して利権政党が献金をキックバックされ、官僚が天下りや社外取締役などの利益を供与される。

結局、国民の税金を使って利権政治家と官僚が私腹を肥やしているだけなのだ。

拙著『財務省と日銀 日本を衰退させたカルトの正体』(ビジネス社)

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に日本財政の根本問題を詳述した。

「反ジャーナリスト」として精力的な活動を続ける高橋清隆氏が拙著の書評を公開くださった。

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「旧大蔵省に勤務経験のある植草氏が、政治経済学者の視点から財務省の真の姿を告発した新刊書。にわかに「財務省前デモ」が関心を集める中、過去40年にわたる同省の悪行と欺瞞(ぎまん)が白日の下にさらされている。」

「消費税が所得税と法人税の穴埋めに使われていることは知られるようになった。正確には35年間に消費税で509兆円税収を得たのに、605兆円も減税している。「つまり、一般庶民から500兆円をむしり取り、そこに100兆円足して600兆円の減税を富裕層と大企業に施していた」。そして、掛け声と裏腹に、「消費税の税収は、1円たりとも財政再建や社会保障の拡充には使われてこなかった」のが実態である。」

「国会審議を通じて注目を集めるのが当初予算だが、政策支出に当たる部分は年間約23兆円。一方、補正予算はこの4年間で合計154兆円も計上されている。1年平均39兆円で、財源は全額国債の発行で賄われている。2025年度の予算審議で野党が高額療養費制度の「改悪」をやめるべきだと主張すると、テレビ朝日の大越健介氏が「制度改変凍結を唱えるのであれば財源を明示せよ」と批判した。この「改悪」による社会保険料負担軽減効果は60億円程度にすぎないのに、154兆円分の国債発行はどのメディアも問題にしない。

植草氏はこれを家計に例え、「毎月の家族全員の衣食住を賄うために月23万円でやりくりしているのに、配偶者は連日連夜飲み食いに明け暮れ、ギャンブルにうつつを抜かし、月39万円も放蕩三昧(ほうとうざんまい)している姿。家族が病に倒れても病院に行くことを許しません」とやゆしている。」

詳しくは高橋氏のサイトでご高読を賜りたい。

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『財務省と日銀 日本を衰退させたカルトの正体』
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植草一秀の『知られざる真実』2025年7月28日 (月)「諸悪の根源は利権のバラマキ」

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植草一秀 植草一秀

植草一秀(うえくさ かずひで) 1960年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒。大蔵事務官、京都大学助教授、米スタンフォード大学フーバー研究所客員フェロー、早稲田大学大学院教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役、ガーベラの風(オールジャパン平和と共生)運営委員。事実無根の冤罪事案による人物破壊工作にひるむことなく言論活動を継続。 経済金融情勢分析情報誌刊行業務の傍ら「誰もが笑顔で生きてゆける社会」を実現する『ガーベラ革命』を提唱。人気政治ブログ&メルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」を発行。1998年日本経済新聞社アナリストランキング・エコノミスト部門1位。『現代日本経済政策論』(岩波書店、石橋湛山賞受賞)、『日本の独立』(飛鳥新社)、『アベノリスク』(講談社)、『国家はいつも嘘をつく』(祥伝社新書)、『25%の人が政治を私物化する国』(詩想社新書)、『低金利時代、低迷経済を打破する最強資金運用術』(コスミック出版)、『出る杭の世直し白書』(共著、ビジネス社)、『日本経済の黒い霧』(ビジネス社)、『千載一遇の金融大波乱』(ビジネス社、2023年1月刊)など著書多数。 スリーネーションズリサーチ株式会社 http://www.uekusa-tri.co.jp/index.html メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」 http://foomii.com/00050

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