【連載】櫻井ジャーナル

【櫻井ジャーナル】2025.07.29XML: タイとカンボジアの軍事衝突の背景に中国と米国との対立

櫻井春彦

タイとカンボジアは7月24日から軍事衝突、26日にはアメリカのドナルド・トランプ大統領が両国の首脳に即時停戦を求めた。両国は28日からマレーシアで停戦交渉を始めたものの、戦闘は続いている。

 

両国の国境をめぐる争いは数十年前から始まっていると言われているが、今回の場合、中国が進めている全長6000キロメートル以上という東南アジアの鉄道網が関係しているのではないかと推測する人もいる。

 

この鉄道網は中国の昆明から東側はベトナム、中央はラオス、タイ、マレーシア、西側はミャンマー、カンボジアからタイを経由してマレーシアを結ぶ計画だが、今後、ベトナムとカンボジア、ミャンマーとタイも繋げ、タイからマレーシアへつなげようということになるかもしれない。ミャンマーとインド洋を繋ぐCMEC(中国・ミャンマー経済回廊)もある。

 

このネットワークが完成したなら、東南アジアがひとつの経済圏として結びつきを強める一方、中国はアメリカが支配している南シナ海やマラッカ海峡を迂回して物資を運ぶことができ、アフリカとの関係も強化される。

 

中国をライバルとして危険視しているアメリカにとって好ましい出来事も引き起こされている。中国の習近平国家主席は2020年1月17日から18日にかけてアウンサンスーチー体制のミャンマーを公式訪問、両国の関係を強化しつつあった。その体制を軍がクーデターで倒したのは翌年の2月である。そして今回のタイとカンボジアの衝突。

 

東側ルート、中央ルート、西側ルートの3ルートがタイのバンコックで合流しているため、タイとカンボジアとの戦闘が長引いた場合、両国だけでなく、ネットワーク全体がダメージを受けることが予想できる。

 

バングラデシュでもアメリカにとって好都合な出来事があった。昨年6月から8月にかけて、バングラデシュでは学生が主導する反政府運動により、インドや中国と友好的な関係あったシェイク・ハシナ政権が倒され、ムハマド・ユヌスを首席顧問とする暫定政府へ移行したのだ。デモは雇用配分制度に対する不満が原因だとされているが、その背後にはパキスタンやアメリカが存在していたと言われている。

 

アメリカはベンガル湾の北東部にあるセント・マーチン島に注目してきた。この島に軍事基地を設置し、ミャンマーの港湾を利用している中国に対抗できるからだ。ハシナはクーデターの背景にこの島があると示唆していた。ベンガル湾をアメリカに支配させていたら、彼女は権力を維持できたかもしれないとしている。ハシナは昨年5月、外国の軍事基地許可を拒否していたのだ。

 

バングラデシュはアメリカ海軍にとって重要な物流拠点になる可能性があり、同国の海軍基地は中国とインド洋をつなげるCMECを監視できるとアメリカは指摘​、マラッカ海峡のコントロールにも役立つとも考えているようだ。

 

欧米の帝国主義諸国は中国との戦争を東南アジアで始めようとしているのかもしれない。

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