
植草一秀【連載】知られざる真実/2025年7月29日 (火) 日本が財政危機という大ウソ
社会・経済5月29日に開いたガーベラの風国会イベント
「参院選で一票一揆 しょぼい減税を-ぶっ壊す!」
で「地球温暖化CO2起源説のウソ」のテーマで極めて貴重な説得力のあるご講演を賜った工学博士で元静岡大学教員の松田智氏
https://youtu.be/EzzACGUxZ1I
(35分50秒~1時間5分15秒まで)
が拙著
『財務省と日銀 日本を衰退させたカルトの正体』(ビジネス社)
https://x.gd/nvmU9
の書評を公開くださった。
この場を借りて深く感謝申し上げたい。
7月27日に開かれたISFシンポジウム
「財務省解体と消費税ゼロを問う」
でも拙著についてのご講評を賜った。
重ねて厚くお礼申し上げたい。
https://isfweb.org/post-60667/
松田氏の書評から一部を紹介させていただく。
「植草氏はこれまでも多数の著書を世に問うてこられたが、今回の新刊は、格別に優れた出来映えだと私には思われる。その根拠は、まず何と言っても読みやすく分かりやすいことだ。」
「例えば昨年出版された白井聡氏との共著「沈む日本 4つの大罪」も、ほぼ同じ主張を述べた本だが、今回の新刊の方が断然分かりやすい。
その理由の一つは、データの記載された図表が豊富に載っていて、主張の内容が一目瞭然に理解できるからだろう。
そして、大手マスコミでは解説されない真実が、次々と露わにされる。その有様はまさに「壮観」で、私などはページを繰って読み進みながら「へえ〜ッ、そうなんだ・・」と何度もつぶやいたものだった。読んでいて、実にワクワクした。」
「その例を挙げよう。
まず「日本の財務状況は危機的な状態にあって、財政破綻したギリシャよりも深刻なくらいだ」との主張が石破首相からも言われたしマスコミにも何度も出てくるが、これが実は大ウソだということ。
確かに日本政府の23年度末での負債は1442兆円にものぼるが、一方金融・非金融の資産総額は1700兆円もあり、日本政府は259兆円もの資産超過の状態にある。
この数字は、内閣府が発表する国民経済計算年報に載っている、政府発表データである。
だから、政府自身が財政破綻するリスクはゼロに近いと言っているに等しいのだが、マスコミに宣伝されるのは、国民一人当り1000万円相当の借金(1300兆円の負債)だけで、それを上回る資産があることなど、ほぼ全然伝えられていないのだ。
上の数字は「一般政府」つまり日本政府全体での数字で、一般政府は中央政府、地方政府、社会保障基金の三カテゴリーに分かれる。その中央政府だけを見れば、23年度末で負債が1474兆円、資産が778兆円で、696兆円もの赤字になる。財務省が盛んに宣伝するのは、この数字の方だ。実際には、地方政府と社会保障基金を合わせると上記のように大きな黒字なのに。故に、財政健全化のために大型増税などは全く不要なのに、大ウソ宣伝がまかり通っていることになる。」
「次に、日本経済の実情を見ると、1995年から2024年までの30年間に、ドル建ての名目GDPは中国が25.7倍、米国が3.8倍に伸びているのに、日本は0.73倍、つまり目減りしている。
しかし経済が全く成長していないのに大企業の利益だけは激増し、内部留保は増え続けた。
その分、労働者の実質賃金は減り続けた。
この事実を、政府与党はもちろん、大半の野党も正面切って取り上げてはこなかった。
この点をしっかり強調するのが「本物の野党」のはずである。
今回の参院選の大きな争点は、消費税をどうするかだったが、政府与党や大手マスコミの説明では、消費税は社会保障の財源だから、これを廃止するなら代わりになる財源を示すべきだとなっていた。
しかし実際には、消費税が導入された1989年度から2023年度までの間に、消費税で509兆円を得ているのに、個人と法人の所得税・法人税の減収は605兆円にのぼる。
つまり、消費税は、富裕層の所得税と大企業の法人税の減税に使われたのと同じで、社会保障などに使われてはいないのである。
この重大な事実の広報を抜きにして、消費税に関するマトモな議論など不可能だったはずだ。
つまり、間違ったウソの情報を前提とした消費税論議しかなされなかったというのが実際なのだ。私も、この本を読むまでは、そんなこととは「つゆ知らず」であった。」
拙著を一人でも多くの人に読んでもらいたいと思う最大の理由の一点がここにある。
財政論議にさまざまな意見があるのは当然だが、意味のある議論を行うには、まず現実の事実を正確に把握することが必要不可欠。
しかし、日本では真実が完全に覆い隠されている。
いや、大ウソが権力によって流布され、この間違った事実認定の下で論議が特定の方向に誘導されている。
まずは、日本財政の真実、日本経済の真実を一人でも多くの方に知っていただきたいと思っている。
『ザイム真理教』(森永卓郎著)の神髄を深堀り、最重要政策争点財務省・消費税問題を徹底解説する新著が公刊されました。
『財務省と日銀 日本を衰退させたカルトの正体』
(ビジネス社)
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植草一秀の『知られざる真実』2025年7月29日 (火)「日本が財政危機という大ウソ」
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植草一秀(うえくさ かずひで) 1960年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒。大蔵事務官、京都大学助教授、米スタンフォード大学フーバー研究所客員フェロー、早稲田大学大学院教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役、ガーベラの風(オールジャパン平和と共生)運営委員。事実無根の冤罪事案による人物破壊工作にひるむことなく言論活動を継続。 経済金融情勢分析情報誌刊行業務の傍ら「誰もが笑顔で生きてゆける社会」を実現する『ガーベラ革命』を提唱。人気政治ブログ&メルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」を発行。1998年日本経済新聞社アナリストランキング・エコノミスト部門1位。『現代日本経済政策論』(岩波書店、石橋湛山賞受賞)、『日本の独立』(飛鳥新社)、『アベノリスク』(講談社)、『国家はいつも嘘をつく』(祥伝社新書)、『25%の人が政治を私物化する国』(詩想社新書)、『低金利時代、低迷経済を打破する最強資金運用術』(コスミック出版)、『出る杭の世直し白書』(共著、ビジネス社)、『日本経済の黒い霧』(ビジネス社)、『千載一遇の金融大波乱』(ビジネス社、2023年1月刊)など著書多数。 スリーネーションズリサーチ株式会社 http://www.uekusa-tri.co.jp/index.html メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」 http://foomii.com/00050