【連載】櫻井ジャーナル

【櫻井ジャーナル】2025.08.03XML :欧米支配層の戦略に従ってパレスチナ人を大量殺戮しつづけるイスラエル

櫻井春彦

ガザの虐殺は続く

 

イスラエルは軍事攻撃でガザの建造物を徹底的に破壊、住民を虐殺しつづけている。また兵糧攻めで飢餓状態。多くの住民が虐殺されつつある。そうした残虐行為を支援してきた欧米の「民主主義国」にも厳しい目が向けられている。

 

「ハーバード大学学長およびフェロー」のウェブサイト「データバース」に掲載されたヤコブ・ガルブの報告書によると、2023年10月7日にイスラエル軍とハマスの戦闘が始まる前、約222万7000人だったガザの人口が現在の推定人口は185万人。つまり37万7000人が行方不明だ​。

 

SIPRI(ストックホルム国際平和研究所)によると、軍事物資の69%はアメリカから、30%はドイツから供給されている​。そうした物資の空輸やパレスチナの武装勢力を偵察する飛行で中心的な役割を果たしてきたのはイギリスだ。イスラエルは「国」というより「空母」に近い。イスラエルへの物資の輸送や偵察の拠点としてキプロスの軍事基地は重要な役割を果たしてきた。

 

現在、国連加盟193カ国のうち147カ国がパレスチナを正式に承認しているが、勿論、アメリカは承認していない。EU加盟国ではキプロス(1988年)、チェコ(1988年)、スロバキア(1988年)、ハンガリー(1988年)、ルーマニア(1988年)、ブルガリア(1988年)、ポーランド(1988年)、スウェーデン(2014年)、アイルランド(2024年)、スペイン(2024年)、スロベニア(2024年)。ソ連消滅前に承認して旧ソ連圏の国が目立つ。パレスチナを支援している国民が多いと言われているアイルランドでも昨年だ。

 

フランスのエマニュエル・マクロン大統領は今年9月にパレスチナを承認すると発表、イギリスのキア・スターマー首相はイスラエルが「ガザ地区の悲惨な状況」を終わらせるために行動しない限り、イギリスはパレスチナ国家を承認すると述べた。

 

両国の政府はネオコンに踊らされ、ロシアとの無謀な戦争に突入して自国を崩壊させつつあるうえ、ガザでの大量虐殺を支援してきたことへの批判が高まっている。イメージを改善しようとしているのかもしれないが、パレスチナ人の主権を認めるわけではない。

 

欧米諸国はイスラエルへ武器を供給、軍事情報の収集に協力、兵糧攻めを黙認している。つまりパレスチナ人を大量虐殺する手助けをしているのであり、共犯。こうした残虐な行為を止めたいなら行えることはたくさんあるが、行わない。ネオ・ナチやアル・カイダ系武装集団がそうであるように、イスラエルは欧米帝国主義諸国に代わって「汚い仕事」を行なっているわけで、当然だろう。イスラエルによる虐殺を嘆くだけでは意味がない。それを「偽善」と呼ぶ人もいる。

 

イスラエルは軍事力を使い、先住民であるパレスチナの75万人を追放し、土地の78%の奪い取り、帰還権を剥奪した。その上でガザやヨルダン川西岸を奪おうとしている。

 

侵略国家としての英国

 

パレスチナにイスラエルを作り上げたのはイギリスだが、この国はアイルランドや北アメリカで行ったようなことをパレスチナでも行った。

 

イギリス政府は1838年、エルサレムに領事館を建設。その翌年にはスコットランド教会がパレスチナにおけるユダヤ教徒の状況を調査し、イギリスの首相を務めていたベンジャミン・ディズレーリは1875年にスエズ運河運河を買収した。その際に資金を提供したのは友人のライオネル・ド・ロスチャイルドだ。(Laurent Guyenot, “From Yahweh To Zion,” Sifting and Winnowing, 2018)

 

パレスチナに「ユダヤ人の国」を建設する第一歩と言われる書簡、いわゆる「バルフォア宣言」をアーサー・バルフォアがウォルター・ロスチャイルドへ出したのは1917年11月のこと。

 

イギリスは1920年から48年の間パレスチナを委任統治、ユダヤ人の入植を進めたが、1920年代に入るとパレスチナのアラブ系住民は入植の動きに対する反発を強めた。

 

そうした動きを抑え込むため、デイビッド・ロイド・ジョージ政権で植民地大臣に就任したウィンストン・チャーチルはパレスチナへ送り込む警官隊の創設するという案に賛成、アイルランドの独立戦争で投入された「ブラック・アンド・タンズ」のメンバーを採用した。

 

この組織はIRA(アイルランド共和国軍)を制圧するために設立されたのだが、殺人、放火、略奪など残虐さで有名だった。イングランドでは、ピューリタン革命を指揮したオリバー・クロムウェルの軍隊がアイルランドを軍事侵略、多くの人を虐殺した。17世紀の半ばのことだ。

 

ピューリタン革命

 

クロムウェルが出現する前、イングランドのジェームズ6世(イングランド王ジェームズ1世)はアングロ・サクソンをユダヤ人の「失われた十支族」の後継者だと信じ、自分はイスラエルの王だと信じていたという。

 

ジェームズ6世の息子であるチャールズ1世はピューリタン革命で処刑されたが、クロムウェルの私設秘書だったジョン・サドラーも同じように考え、彼は1649年に作成されたパンフレット『王国の権利』の中でイギリス人はイスラエルの失われた部族のひとつであり、ユダヤ人と同族であると主張している。

 

クロムウェルと同じように考えていたようで、彼の聖書解釈によると世界に散ったユダヤ人はパレスチナに再集結し、ソロモン神殿を再建することになっていた。この解釈に基づいて彼は政権を樹立し、1656年のユダヤ人のイングランド定住禁止令を解除、パレスチナにイスラエル国家を建国することを宣言した。海賊の国だったイングランドでビジネスを育てるためだったともいう。

 

これがシオニズムの始まりだが、ピューリタン体制が倒されるとシオニズムは放棄され、クロムウェルを支持する人びとの一部はアメリカへ亡命、ジョージ・ワシントン、トーマス・ジェファーソン、ベンジャミン・フランクリンらはその後継者だと主張したという。その北アメリカで先住民は「民族浄化」された。今、欧米の支配者は中東を新たなアメリカにしようとしているのではないだろうか。彼らはその先にロシアと中国を見ていたはずだ。

 

パレスチナ侵略

 

ブラック・アンド・タンズはIRA(アイルランド共和国軍)を制圧するために設立されたのだが、殺人、放火、略奪など残虐さで有名だった。そして1936年から39年にかけてパレスチナ人は蜂起。アラブ大反乱だ。

 

1938年以降、イギリス政府は10万人以上の軍隊をパレスチナに派遣する一方、植民地のインドで警察組織を率いていたチャールズ・テガートをパレスチナへ派遣、収容所を建設する一方、残忍な取り調べ方法を訓練した。イギリス軍はパトロールの際、民間のパレスチナ人を強制的に同行させていたともいう。

 

反乱が終わるまでにアラブ系住民のうち成人男性の10パーセントがイギリス軍によって殺害、負傷、投獄、または追放された。植民地長官だったマルコム・マクドナルドは1939年5月、パレスチナには13の収容所があり、4816人が収容されていると議会で語っている。その結果、パレスチナ社会は荒廃していく。

 

イスラエル建国

 

シオニストはパレスチナから先住民を追い出し、イスラエルなる国を建てるため、1948年4月4日に「ダーレット作戦」を発動、ハガナに協力する形でテロ組織のイルグンとスターン・ギャングは9日にデイル・ヤシン村を襲撃、その直後に村へ入った国際赤十字のジャック・ド・レイニエールによると、村民254名が殺され、そのうち145名が女性で、そのうち35名は妊婦だった。

 

イギリスの高等弁務官を務めていたアラン・カニンガムはパレスチナに駐留していたイギリス軍のゴードン・マクミラン司令官に殺戮を止めさせるように命じたが、拒否されてしまう。ハガナもイルグンとスターン・ギャングを武装解除しようとはしない。(Alan Hart, “Zionism Volume One”, World Focus Publishing, 2005)

 

この虐殺を見て多くのアラブ系住民は恐怖のために逃げ出し、約140万人いたパレスチナ人のうち5月だけで42万3000人がガザ地区やトランスヨルダン(現在のヨルダン)に移住、その後、1年間で難民は71万から73万人に達したと見られている。イスラエルとされた地域にとどまったパレスチナ人は11万2000人にすぎなかった。1948年5月14日にイスラエルの建国が宣言されている。

 

国際連合は1948年12月11日に難民の帰還を認めた194号決議を採択したが、現在に至るまで実現されていない。

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