
【櫻井ジャーナル】2025.08.08XML: 米国の中東担当特使が露国を訪問する一方、NATO内に露国の飛地を攻撃する幻想
国際政治アメリカのスティーブ・ウィトコフ中東担当特使は8月6日にモスクワでロシアのウラジミル・プーチン大統領と会談した。クレムリンのユーリ・ウシャコフ補佐官は、プーチン大統領とドナルド・トランプ米大統領が近日中に会談するとしている。プーチン大統領は会談に適した候補地としてアラブ首長国連邦を挙げた。
プーチンとウィトコフはウクライナにおける戦闘のほか、ロシアと米国の間で戦略的パートナーシップを構築する見通しについても話し合われたとされているが、先日、ロシアのスペツナズ(特殊部隊)がオデッサに近いオチャコフにあるウクライナ軍の司令部で拘束したイギリス陸軍のエドワード・ブレイク大佐とリチャード・キャロル中佐、そしてMI-6の工作員ひとりの解放について交渉したとも推測されている。ウィトコフのロシア訪問は当初、この拘束が伝えられた8月2日に予定されていたが、延期された。
ロシア政府は軍事作戦でウクライナの非軍事化と非ナチ化を実現し、西側諸国が凍結したロシアの資産を返還させ、ウクライナに対しては中立の立場の維持と領土の「現実」を認めさせようとしている。この目的が達成されない限り、ロシア軍は停戦に応じないはずだ。
ウクライナの防衛線は2、3カ月で完全に崩壊するという見方も出てきた。トランプ大統領が7月28日に停戦合意の期限を50日ではなく10日から12日後に短縮すると発表した理由もそこにあるというのだ。この分析が正確かどうかは不明だが、ウクライナでの戦闘でNATOがロシアに負けていることは間違いない。ロシアが首脳会談に同意したということは、アメリカが現実をある程度受け入れたということなのかもしれない。
イギリスのジョン・ヒーリー国防大臣の戦略顧問に就任したマルコム・チャーマース元RUSI(王立防衛安全保障研究所)副所長は2022年5月、ウクライナによるクリミア半島奪取をめぐるロシアとの「ステロイド入りキューバミサイル危機」こそがロシアを屈服させる最善の選択肢かもしれないと提言、今年3月にはエコノミスト誌のシャシャンク・ジョシに対し、イギリスが潜水艦からロシアを核攻撃することに何ら問題はないと述べたことで知られている。実際、イギリスの特殊部隊や情報機関はクリミアに対するテロ攻撃を目論んできたが、成功していない。
ここにきて注目されているのはロシアの飛地であるカリーニングラード。米陸軍欧州アフリカのクリス・ドナヒュー司令官は7月16日、ドイツで開催されたアメリカ陸軍協会主催の会議において、カリーニングラードを「前代未聞の速さで、地上からこれを撃破する」ことができると述べたが、勿論、NATOに加盟するヨーロッパの軍隊にそうした能力はない。トランプ米大統領はイギリスのレーケンフィールドを含むヨーロッパの少なくとも6カ所にB61-12核爆弾を再配備した。
もし、カリーニングラードが本当に攻撃された場合、ロシアは容赦せずに報復する可能性が高く、核兵器を使用する可能性があるとも主張している。リトアニア、ラトビア、エストニアは制圧されそうで、フィンランドとポーランドも非武装化と非ナチ化の対象となると見られている。
アメリカは2019年8月2日にINF(中距離核戦力)条約から脱退しているが、ロシアは今年8月4日に条約を遵守しないと発表。今後、ロシア領内だけでなく、ラテン・アメリカや東アジアの親ロシア国に中距離ミサイルを配備することもありえる。日本ではすでに2016年に与那国島でミサイル発射施設を建設、19年には奄美大島と宮古島、そして23年には石垣島でも施設を完成させているが、これはアメリカ国防総省の戦略に基づくもので、中国やロシアをターゲットにしているはずだ。
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