【連載】櫻井ジャーナル

【櫻井ジャーナル】2025.08.10XML : ウクライナで露国に敗北した米国はコーカサスを第2のウクライナにする動き

櫻井春彦

 ウクライナにおける戦争でロシアが勝利するのは決定的だ。アメリカのバラク・オバマ政権が仕掛けた2013年11月から14年2月にかけてのクーデターで始まった戦争だが、返り討ちにあったわけだ。

 

しかし、イギリスは最後の抵抗を試みている。8月2日にはイギリス陸軍のエドワード・ブレイク大佐とリチャード・キャロル中佐、そしてイギリスの対外情報機関MI-6の工作員ひとりがオデッサに近いオチャコフでロシアのスペツナズ(特殊部隊)に拘束されたが、それに対してイギリス軍はヘルソンやニコラエフに部隊を送り込んだと言われている。その部隊にはラテン・アメリカの傭兵も含まれているようだ。

ドナルド・トランプ米大統領は自分が「和平交渉」を主導しているかのような演出をしているが、ロシア政府の要求は一貫している。軍事作戦でウクライナの非軍事化と非ナチ化を実現し、西側諸国が凍結したロシアの資産を返還させ、ウクライナに対しては中立の立場の維持と領土の「現実」を認めさせることだ。この目的が達成されない限り、ロシア軍は停戦に応じないだろう。

 

そうした中、アルメニアのニコル・パシニャン首相とアゼルバイジャンのイルハム・アリエフ大統領は8月8日にワシントンで会談、両国はアメリカの影響下に入ったようだ。

 

両国はナゴルノ・カラバフと呼ばれる地域を巡り対立してきた。この地域における多数派のアルメニア人は1988年2月から94年5月にかけての軍事衝突後、アルツァフ共和国(ナゴルノ・カラバフ共和国)という看板を掲げ、統治する。

 

アルメニアでは2018年5月からパシニャンが首相を務め始めると、ロシアの影響力が低下。2020年9月にアゼルバイジャン軍はナゴルノ・カラバフとその周辺地域を攻撃し、第2次ナゴルノ・カラバフ戦争が勃発する。2020年11月にアゼルバイジャン、アルメニア、ロシアの3か国間で停戦協定が締結され、戦争は終結するのだが、ナゴルノ・カラバフ周辺の大半はアゼルバイジャンに支配されることになった。

 

そのアゼルバイジャンは2023年9月、ナゴルノ・カラバフにおいて新たな大規模な軍事攻撃を開始、アルツァフは解体され、アルメニア人の大半は脱出。アルメニア人はナゴルノ・カラバフに1000年の間生活していたのだが、その歴史に終止符がうたれた。

 

こうした状況を作り出したアルメニアのパシニャン首相は今年6月、エレバン国立大学で学生に対し、祖国の一部を失ったが、国家を獲得したと発言した。祖国の一部を失う以前、アルメニアは国家でなかったということになるが、パシニャン首相の時代にアルメニアは主権を奪われ続け、ロシアから離れ始めている。パシニャンはウォロディミル・ゼレンスキーの後を追っているようだ。

 

ロシアが設立したユーラシアにおける軍事同盟、CSTO(集団安全保障条約)からアルメニアは2026年初頭までに脱退する計画だと報じられている。この合意が成立すれば、西側はアルメニアとアゼルバイジャンをNATOに加盟させると秘密裏に約束したとも報じられている。しかもアメリカ軍がアルメニアに展開する予定だというのだ。

 

そのアルメニアは8月12日から20日までの期間、アメリカと合同軍事演習「イーグル・パートナー2025」を8月12日から20日までアルメニアで実施する。

 

アメリカの国防総省系シンクタンク「RANDコーポレーション」が2019年に発表した報告書には、拡大しるロシアを抑え込むため、ウクライナの武装を強化、シリアのジハード傭兵への支援を強化、ベラルーシの体制を転覆、そしてアルメニアとアゼルバイジャンの緊張を煽り、トランスニストリアを孤立化させるとしている。ベラルーシの体制転覆は失敗したが、他は実現しつつある。

**********************************************
【​Sakurai’s Substack​】
※なお、本稿は「櫻井ジャーナル」https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/
のテーマは「 ウクライナで露国に敗北した米国はコーカサスを第2のウクライナにする動き 」(2025.08.10ML)
からの転載であることをお断りします。

https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202508100000/

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202507240000/

※ISF会員登録およびご支援のお願いのチラシ作成しました。ダウンロードはこちらまで。
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202410130000/

ISF会員登録のご案内

「独立言論フォーラム(ISF)ご支援のお願い」

櫻井春彦 櫻井春彦

櫻井ジャーナル

ご支援ください。

ISFは市民による独立メディアです。広告に頼らずにすべて市民からの寄付金によって運営されています。皆さまからのご支援をよろしくお願いします!

Most Popular

Recommend

Recommend Movie

columnist

執筆者

一覧へ