【連載】櫻井ジャーナル

【櫻井ジャーナル】2025.08.11XML : 恫喝に失敗したトランプ大統領はアラスカでプーチン大統領との話し合いを開始

櫻井春彦

 ドナルド・トランプ米大統領とウラジミル・プーチン露大統領は8月15日にアラスカで会談すると発表された。この会談から交渉は始まるのであり、ここで結論が出ることはないだろうと見られている。すでに任期が切れているウォロディミル・ゼレンスキーの正当性をロシア政府は認めていない。ゼレンスキーが会議に参加する余地はないということだ。

 

恒久的で安定した平和を求めているロシアが示している戦闘を終結させる条件は、ウクライナの非軍事化と非ナチ化、西側諸国が凍結したロシア資産の返還、ウクライナの中立維持、そして領土の「現実」を認めること。ロシアはウクライナがドンバス(ドネツク、ルガンスク)、ザポリージャ、ヘルソンから軍隊を撤退させ、NATOがウクライナへの軍事支援をすべて中止することを要求している。この要求が認められなければ、ロシアは軍事力でドニエプル川東部の全地域を統合することになるだろう。

 

トランプ大統領はプーチン大統領に対し、50日以内に停戦に応じなければロシアからの輸入品に100%の関税を課すとともに、ロシアとの取り引きを継続する国や企業に対し、二次的な制裁を課すと脅していたのだが、7月28日、期限を50日ではなく10日から12日後に短縮すると発表していた。

 

強気のように感じた人もいるようだが、ロシアの攻勢が強まり、ウクライナ軍はロシア軍と接触している場所全てで深刻な状況に陥っているからだと考える人が少なくない。50日も待てないということだ。

 

2014年2月にアメリカのバラク・オバマ政権はネオ・ナチを使ったクーデターでビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒したが、ヤヌコビッチの支持基盤だった東部や南部の住民はクーデター政権を拒否、南部のクリミアでは住民がロシアとの一体化を選び、東部のドンバスでは武装闘争が開始された。軍や治安機関のメンバーのうち約7割がクーデター政権を拒否して離脱、その一部はドンバスの反クーデター軍に合流したと言われている。

 

劣勢になったクーデター軍の戦力を増強するための時間を稼がねばならなくなった。ドイツやフランスが仲介する形で停戦合意が成立する。2014年の「ミンスク1」と15年の「ミンスク2」だ。この停戦がクーデター政権の戦力を増強する時間稼ぎにすぎなかったことを、のちに​アンゲラ・メルケル元独首相​や​フランソワ・オランド元仏大統領​が認めている。

 

アメリカ/NATOは8年かけ、兵器の供与や兵士の育成だけでなく、マリウポリ、マリーインカ、アブディフカ、ソレダルの地下要塞を結ぶ要塞線をドンバスに築いた。ロシア軍を挑発し、この要塞線の内側へ誘い込む計画だったようだが、その前にロシア軍がウクライナに対する攻撃を開始、ウクライナ/NATOは劣勢になった。その後、ウクライナ/NATOの置かれた状況は悪化し続けている。

 

8月2日にイギリス陸軍のエドワード・ブレイク大佐とリチャード・キャロル中佐、そしてイギリスの対外情報機関MI-6の工作員ひとりがオデッサに近いオチャコフでロシアのスペツナズ(特殊部隊)に拘束され、8月9日にロシア軍はキエフとオデッサにあるウクライナ軍とNATO軍の軍事施設を攻撃した。

 

8月9日の攻撃で特に注目されたのはオデッサ。石油貯蔵石油がドローンで攻撃されて大火災が発生、「レクリエーションセンター」はドローンのほか短距離弾道ミサイルのイスカンデルMで攻撃された。ここには西側諸国が供給したミサイルが保管されていて、それらが大爆発、キノコ雲が目撃された。また、そのセンターにいた数十人のイギリス軍将兵が死傷、ヘリコプターで運ばれる様子が目撃されている。このところイギリス軍やフランス軍の将兵が死傷したとする話をよく聞くようになった。

 

米陸軍欧州アフリカのクリス・ドナヒュー司令官は7月16日、ドイツで開催されたアメリカ陸軍協会主催の会議において、ロシアの飛地であるカリーニングラードを前代未聞の速さで、地上からこれを撃破することができると述べた。この人物は7月30日、第1回ランドユーロ会議において、NATOの東部側面防衛に関する新たなドクトリンを発表、ロシアとの全面戦争が発生した場合にNATOがカリーニングラードを攻撃する計画について語っている。

 

ロシアの領土であるカリーニングラードを攻撃するという意味を米陸軍欧州アフリカの司令官は理解できていないのか、あるいは正気でないのか。

 

そのドナヒューはイラクとアフガニスタンにおける軍事作戦に参加、アメリカ軍がカブールから不様な撤退をした時、米陸軍第82空挺師団の司令官を務めていた。ウクライナでは第18空挺軍団司令官としてウクライナ空軍への武器、情報、訓練の供給を担当している。

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