
秋嶋亮(社会学作家)連載ブログ/29:知性崩壊の時代に
社会・経済早いもので作家活動がもうすぐ15年目になるのだが、この節目に思うことは、日本社会で「シャローイング(ITにより思考が浅薄になる現象)」が加速度的に進行していることだ。
要するにスマホなどの情報機器への過度な依存により思考力が衰え、抽象や、洞察や、深慮という知的営為が不全になっているわけだ。つまり人間を進化させるはずのITが、真逆に人間を退化させているのだ。
もっともこれは日本だけではなく世界的な現象であり、人類はデジタル社会の帰結として(利便性や膨大な情報と引き換えに)途方もなく知的劣化しているのだろう。つまり「シャローイング(ITにより思考が浅薄になる現象)」は高度情報化の収斂現象なのである。
その顕著な例として政治議論が挙げられるだろう。
今やソーシャルメディアが世論形成の中心的な場と化しているが、その元となるのは「人文知」ではなく「断片知」である。つまりSNSの支配的な意見の多くは、正統な学問や検証された事実に基づくものではなく、X(旧ツイッター)やTikTokなどのバズワード(もっともらしいが事実ではないこと)なのだ。もっと言えば、SNSで定説≒常識のように語られることの多くが理論的起源を持たないアドホック(その場限りの言葉)なのである。
しかし「シャローイング(ITによる思考の浅薄化)」が定着した今では、知的負荷の重い「人文知」は忌避され(理解に努力を要する高度な言説は敬遠され)、スローガンのように単純明快で耳障りのよい「断片知」が好評を得るのだ。そしてそのような知的消極性に付け入る格好で「ポスト真実の政治(虚偽に虚偽を塗り重ねるスタイルの政治)」が登場したわけだ。
「コロナワクチンで誰も死んでいない」という河野発言は、そのモデルとも象徴とも言えるだろう。つまり反論する気力が失せるほど大きな嘘をぶち上げ、説明責任を放棄し、反証を無視し、ゴリ押しすることが政治の手法として定式化されているのだ。そして気がつけば、こうした態度を許容する異常なアンビエンス(時代の特有の空気)が生じているのだ。
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☆秋嶋亮(あきしまりょう:響堂雪乃より改名) 全国紙系媒体の編集長を退任し社会学作家に転向。ブログ・マガジン「独りファシズム Ver.0.3」http://alisonn.blog106.fc2.com/ を主宰し、グローバリゼーションをテーマに精力的な情報発信を続けている。主著として『独りファシズム―つまり生命は資本に翻弄され続けるのか?―』(ヒカルランド)、『略奪者のロジック―支配を構造化する210の言葉たち―』(三五館)、『終末社会学用語辞典』(共著、白馬社)、『植民地化する日本、帝国化する世界』(共著、ヒカルランド)、『ニホンという滅び行く国に生まれた若い君たちへ―15歳から始める生き残るための社会学』(白馬社)、『放射能が降る都市で叛逆もせず眠り続けるのか』(共著、白馬社)、『北朝鮮のミサイルはなぜ日本に落ちないのか―国民は両建構造(ヤラセ)に騙されている―』(白馬社)『続・ニホンという滅び行く国に生まれた若い君たちへ―16歳から始める思考者になるための社会学』(白馬社)、『略奪者のロジック 超集編―ディストピア化する日本を究明する201の言葉たち―』(白馬社)、『ニホンという滅び行く国に生まれた若い君たちへOUTBREAK―17歳から始める反抗者になるための社会学』(白馬社)、『無思考国家―だからニホンは滅び行く国になった―』(白馬社)、などがある。