
☆寺島メソッド翻訳NEWS(2025年8月13日):世界各国が多面的にパレスチナの「大量虐殺」に貢献
国際※元岐阜大学教授寺島隆吉先生による記号づけ英語教育法に則って開発された翻訳技術。大手メディアに載らない海外記事を翻訳し、紹介します。
「あなたはすべての孤児や悲しんでいる母親たち、傷つき追放され飢えた魂にとっての敵だ。あなたは、何万もの無実の人々の涙の責任を取るべきだ。あなたの沈黙による裏切りのせいで流された涙なのだから」– アブ・ウバイダ(ハマスの軍事部門報道官)
いま、ガザで私たちが目にしているのは、パレスチナに対するイスラエルによる戦争だけではない。複雑に張り巡らされた網により引き起こされている全世界からの大虐殺行為なのだ。そしてこの網は、諸大陸や政治思想、経済体系にまで拡がっている。投下される全ての爆弾やすべての死んでしまう子どもたち、存在が抹殺されるすべての家族が生じることを可能にしているのは、全世界がそうなることの基盤をなしているからだ。
多極的大量虐殺
この大量虐殺の仕組みは無数の経路を通じて作動している。
トルコは、エルドアン大統領の芝居がかった非難にもかかわらず、バクー・トビリシ・ジェイハン・パイプラインを通じて石油を供給し続け、イスラエルの軍事力に供給している。グローバル・サウスの旗手を自称する中国は、イスラエルにとってアジア最大、世界でも第3位の貿易相手国であり、包囲網を支える経済的生命線となっている。今年3月、中国の肖軍正イスラエル駐在大使は「戦争はイスラエルと中国の二国間関係の主題ではない」と述べた。実際、中国は大量虐殺を「戦争」もしくは「人道的危機」と呼ぶことに慎重であり、大量虐殺への言及を組織的に避けてきた。かつては非同盟の灯台であり、自身もヨーロッパ列強によって残酷に植民地化されたインドは、現在では占領国イスラエルに軍事技術を供給し、強固な防衛協力を維持している。最も恥ずべきことは、インド国民が外国人戦闘員としてイスラエル軍に加わり、植民地支配下で自らの祖先が受けた犯罪そのものに加担していることである。
西側諸国の中核である米帝国は、期待された役割を容赦なく効率的に遂行している。米国は大量の軍事援助を提供する一方で、国連安全保障理事会の拒否権を行使し、イスラエルの責任追及を阻んでいる。大量虐殺の過去を永遠に背負うドイツは、武器販売と外交的保護を通じて新たな大量虐殺を助長している。フランスは軍事装備を供給しながら、マクロン大統領はイスラエルの「自衛権」を子どもや民間人から守る権利だ、と述べている。英国は情報共有と軍事装備を提供しながら、パレスチナ人の土地収奪の立役者としての歴史的役割を維持している。
中立を標榜する国でさえ、共謀関係にあることを露呈している。パレスチナの闘争への連帯を主張するアイルランドは、自国の空域とシャノン空港をイスラエル向け米国製武器輸送の中継拠点として認めている。国際司法裁判所(ICJ)と国際刑事裁判所(ICC)の所在地であるオランダは、本来自国の裁判所が裁くべき犯罪に対し、重要な武器部品とNATOによる隠蔽工作を同時に提供している。永世中立国スイスは、ガザ爆撃をおこなうイスラエルのドローンを購入しながら、大量虐殺発生時にはUNRWA(国際連合パレスチナ難民救済事業機関)への資金提供を削減することで、自国の中立宣言の空虚さを露呈している。国際法の守護者であるはずのスイスが、パレスチナ人虐殺の積極的な加担者へと変貌を遂げているのだ。
帝国の奴隷と化しているアラブ諸国
しかし、おそらく最も壊滅的なのは、アラブ世界の屈服だろう。その支配者たちは、かつての猛烈な反植民地主義指導者から、今日の卑屈な従属者へと変貌を遂げている。サウジアラビアはガザが燃え盛る中でも正常化路線を継続し、パレスチナ人の血よりもサウジビジョン2030(*)と欧米からの投資を優先している。アラブ首長国連邦はイスラエルとの「アブラハム合意」を公然と祝う一方で、パレスチナの子どもたちは、アラブ首長国連邦が仲介した武器取引で入手したイスラエルの兵器によって虐殺されている。かつてナセル政権下でアラブ民族主義の心臓部であったエジプトは、今やイスラエルによるガザ封鎖の強行を許し、シーシ大統領は欧米からの支援によって私腹を肥やしている。ヨルダンのアブドラ国王は、パレスチナ人の権利を主張しながらも、自国領土でイスラエルの軍事演習を主催し、この大量虐殺国家をイランのミサイルから守っている。
*サウジアラビアの石油への依存度を減らし、多様化するための戦略的枠組み
これが21世紀のアラブ指導者たちの悲しい現実である。独裁者や君主、そして国民の尊厳を西側諸国の安全保障と個人的な富と引き換えに、エプスタイン流の政権を維持してきた強者ならぬ弱者の集まりであり、シマ・ラフマニが適切に「子どもじみた民主主義政治」と呼ぶものである。かつてエジプトのナセルやアルジェリアのブーメディエン、その他の反植民地主義の巨人たちがいた場所に、今やムハンマド・ビン・サルマン、シーシ、その他の従属者たちがおり、彼らは忠誠心を国民ではなく帝国にいる資金源に向けている。
広範なグローバル・サウスは、多極化と南南協力に関する何十年にもわたる言説にもかかわらず、自らの道徳的破綻を露呈している。
ルラ政権下のブラジルは、イスラエルとの貿易関係を維持しながら象徴的な批判を展開し、同時に社会主義・反帝国主義のベネズエラをBRICS諸国から締め出している。反アパルトヘイト闘争発祥の地である南アフリカは、占領国イスラエルとの経済連携を継続しつつ、イスラエルを国際法廷に提訴している。台頭する多極秩序の旗手を自称するロシアは、イスラエルとの軍事協力を維持し、熱烈に称賛している。しかし、ロシアは自らを米国の最大の好敵手と位置づけている一方で、イスラエルはウクライナの対ロシア戦争を積極的に支持している。
ガザの呪いは全世界を悩ませるだろう
私たちが目撃しているのは、かつて世界の抑圧された人々に希望を与えた反植民地運動の完全な崩壊だ。
1955年のバンドン会議は、帝国主義と人種差別に対抗して南半球諸国を結集させたが、まるで遠い昔の出来事のように感じられる。かつて西側資本主義とソビエト社会主義からの独立の灯台であった非同盟運動は、今や形骸化し、加盟国は西側諸国の支配に挑戦するのではなく、西側諸国の承認を求めて競い合っている。
かつてソ連が自らの矛盾にもかかわらず、世界中の解放運動に物質的な支援を提供していた頃のような共産主義からの抵抗は存在しない。かつてアパルトヘイト下の南アフリカを孤立させ、ベトナムの抵抗を支援したような、第三世界の強固な連帯も存在しない。
約束された「多極世界」は、帝国の階層構造の廃止ではなく、単にその再編であることが明らかになった。
その代わりに、私たちが生きているのは、いわゆる敵同士が大量虐殺に加担し、国内消費のために敵対行為をおこなっている世界なのだ。人権を擁護すると主張する国々が、民族全体の組織的な絶滅を容認している世界なのだ。国連や国際司法裁判所、国際刑事裁判所といった国際法秩序は、帝国主義的な意思の前に全く無力であることが証明されている。
これはパレスチナだけの問題ではない。パレスチナ人の苦しみは、私たち人類全体の象徴であり、試練でもある。これは、地政学的な競争と政治思想の違いという表面の下に、暴力や搾取、そして少数への多数による従属の上に築かれた世界秩序の維持という、世界中の支配層特権階級たちの共通の決意が潜んでいるという、明白な事実を浮き彫りにしているのだ。
パレスチナ人は、この世界的な合意の祭壇に捧げられる生贄となった。彼らの大量虐殺は、服従を拒否したことへの罰であると同時に、抵抗を試みる者への警告でもある。
この虐殺を可能にするすべての政府は、直接的な軍事支援や経済援助、外交的庇護、貿易、あるいは単なる沈黙を通じてであろうと、特定の民族を見殺しにしてもいい、とみなす世界秩序への忠誠を宣言しているのだ。
パレスチナ人に対する全世界による大量虐殺
ガザが明らかにしているのは、イスラエルの入植植民地主義の残酷さだけでなく、私たちの国際体系全体の破綻だ。つまり、貿易の流れと武器の輸送が人命よりも重視される体系であり、経済的利益が道徳的義務よりも優先される体系であり、権力者が世界規模で連携し、地域の無力な人々を抑圧する体系だ。
パレスチナ人と抵抗の枢軸が孤立しているのは、彼らに世界的な同情がないからではない。何百万もの人々が彼らを支持してデモ行進している。ワシントンからアムステルダム、ブリュッセルからリヤドに至るまでの権力構造が、彼らの存続が、彼らの破壊の上に築かれた秩序の安定を脅かす、と判断したからだ。
これが現代の真の恐怖だ。大量虐殺が起こっていることだけでなく、事実上全世界がそれを可能にするために積極的に関与しているのだ。私たちはガザの破壊だけでなく、人類文明そのものの道徳的崩壊を目撃しているのだ。
私たちを悩ませているのは、この大量虐殺が終わるかどうかではなく――すべての大量虐殺はいずれ終わるのだから――瓦礫が片付けられ、死者が数えられた後、どのような世界が残るのか、という疑問だ。この世界は、ひとつの民族の壊滅がこれほど効率的に連携できることを示したことで、その本質についての根本的な何かを明らかにした、ということだ。そして、その啓示は私たち全員を恐怖に陥れて当然のはずだ。
– カリム
編集者から: 以下のリンクには、2024年にイスラエルと貿易をおこなっていた国の一覧が記されています。これは、なぜどの国も大虐殺を阻止するための適切かつ有意義な行動を取らなかったのかの説明になります。例えば、ラテンアメリカでは、メキシコやベネズエラ、ブラジル、ニカラグア、ホンジュラス、コロンビアなどが、大虐殺をおこなっているこの国と活発に貿易を続けていることがわかります。この事実は、誠実さと道徳性に疑問を投げかけ、あからさまな偽善と欺瞞を露呈しています。
※なお、本稿は、寺島メソッド翻訳NEWS http://tmmethod.blog.fc2.com/
の中の「世界各国が多面的にパレスチナの「大量虐殺」に貢献」(2025年8月13日)
からの転載であることをお断りします。
また英文原稿はこちらです⇒Palestine: A Multi-Polar Genocide
筆者:BettBeat Media
出典:Internationalist 360° 2025年7月25日https://libya360.wordpress.com/2025/07/20/palestine-a-multi-polar-genocide/