【連載】櫻井ジャーナル

【櫻井ジャーナル】2025.08.17XML :アラスカでの米露首脳会談が終了、罵詈雑言を浴びせるしかないネオコンの苦境

櫻井春彦

 ウラジミル・プーチン露大統領とドナルド・トランプ米大統領がアラスカのエルメンドルフ・リチャードソン基地で会談、ロシア側からユーリ・ウシャコフ大統領補佐官、セルゲイ・ラブロフ外相、アメリカ側からマルコ・ルビオ国務長官、そして大統領特使のスティーブ・ウィトコフが同席した。会談後、両国から正式な発表はなく、実際に何が話し合われたのかは不明だ。会談はレッドカーペット上での短い会話を含め、3時間にわたった。

 

プーチン大統領は会談の「建設的で敬意に満ちた」雰囲気を称賛し、トランプ大統領との合意が新たな国際バランスへの政治的移行への道を開くことを期待すると述べ、トランプ大統領は正式な合意に至っていないことを認めつつも、会談は「非常に生産的」だったと述べた。

 

今回の会談でもウクライナ問題に関してロシア側の要求は変化していない。ウクライナの非軍事化、非ナチ化、NATO非加盟の保証、ロシア国境付近への西側諸国軍の展開の制限、ウクライナに対する武器供与の制限、ウクライナにおけるロシア語の特別扱い、また西側諸国が凍結したロシア資産を返還し、ウクライナの中立を維持するほか、領土の「現実」(ドネツク、ルハンシク、ザポリージャ、ヘルソン)を承認することなどだ。

 

この会談でトランプが口にしていた「制裁」などは消え、アメリカの有力メディアに登場するコメンテーターはプーチンに対して罵詈雑言を浴びせていたが、それしか「コメント」することができなかったようである。今回の会談で中国などからのウクライナ和平に関する圧力も減ると見られている。

 

2013年11月から14年2月にかけてアメリカのバラク・オバマ政権はウクライナでネオ・ナチを使ったクーデターを実行、ビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒し、そこからアメリカの対ロシア戦争は本格化していくのだが、ウクライナ国内にはクーデター体制を拒否する人びとは少なくなく、ミンスク合意による「停戦」で戦力を増強するための時間を稼ぐ必要があった。

 

オバマ政権を戦争へと導いたのはシオニストの一派であるネオコンだが、この勢力は1970年代、ジェラルド・フォード政権で台頭、どの政権でも軍事と外交に大きな影響を及ぼしてきた。ソ連が消滅した直後に「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」を作成、それに基づいて世界征服プロジェクトを始めたのもこの勢力。このプロジェクトはソ連が消滅した後にロシアを属国(植民地)にできたという前提で作成されているのだが、その前提た21世紀に入ってプーチンがロシアを再独立させたところで揺らぎ始め、迷走することになった。

 

西側の有力メディアはオバマのクーデターを正当化するために「暴君を民衆が倒した革命」というイメージを広め、その「勇敢な革命政権がロシアを倒そうとしている」と宣伝してきた。ロシア軍は崩壊寸前で、ロシア経済は破綻しているというわけだ。これはソ連消滅直後にネオコンが作成したシナリオにはそう書かれているのだが、その御伽話が現実によって崩壊しつつあり、ネオコンの宣伝機関と化している有力メディアは慌てている。

 

ロシアのセルゲイ・リャブコフ外務次官はアラスカでの会談について、両国間の正常な対話が再開し、危険な状況に陥っている戦略問題と軍備管理問題への対応を始めることが重要なのだとしている。つまり、今回の会談で何か重要なことが決まったということではないということのようだ。ウクライナの問題でもプーチン大統領はこれまでに示してきた停戦条件を維持し、この問題で特に大きな変化は見られなかった。

 

それに対し、イギリスの情報機関や政策立案者たちは米露首脳会談を阻止すべきだと主張していた。ロシアとアメリカが正常な対話を再開して緊張が緩和されることを恐れている。アラスカで会談が開かれる直前にはアメリカのE-3A(AWACS)、E-7T(AEW&C)、11日からはイギリス軍のRC-135偵察機がクリミアからクラスノダールにかけての空域を飛行、何らかの作戦を目論んでいるのではと見られていた。

 

そうした中、8月14日にロシア軍はウクライナ北部のチェルニーユにある軍事訓練場を短距離弾道ミサイルのイスカンデルMで攻撃、数十人が死亡したと伝えられている。ここではウクライナ人約70名とイギリス人約30名の工作員がクリミアとクラスノダールを攻撃する準備を進めていたという。イギリスは追い詰められているようだ。イギリスの対外情報機関MI-6のエージェントだと見られているウォロディミル・ゼレンスキーの立場も厳しくなっている。

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