【連載】今週の寺島メソッド翻訳NEWS

☆寺島メソッド翻訳NEWS(2025年8月26日):デクラン・へイズ:8月15日に思う。いまでも敗北を抱きしめたままの日本。

寺島隆吉

※元岐阜大学教授寺島隆吉先生による記号づけ英語教育法に則って開発された翻訳技術。大手メディアに載らない海外記事を翻訳し、紹介します。

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同盟国米国に取り返しがつかないほど歪められた日本。

また今年ももうすぐ8月15日を迎える。この日は聖母マリアの被昇天祭にあたる。この日、東京のロシア大使館でハズレくじを引いたものは、大使館の外の右翼団体の抗議文を目にする羽目になる。この右翼団体は、未だに80年前の日本の無条件降伏に納得せず、ロシアが戦争後に併合した北方領土の返還を求めている。

こんな右翼団体の歌舞伎芝居は、実際に目にし、耳にしないと、信じられないだろう。何万人もの日本の右翼団体が、 世界最大の拡声器を使って、日本の警察機動隊と睨み合っている。日本の警察は世界各国の警察と比べて断然最強だ。これらの警官らが剣道の竹刀よろしく警棒を振り始めると、 頭蓋骨にヒビが入り、流血の事態になる、と覚悟を決めた方がいい。

ただし、ほかの場所での抗議活動と同様に、そんなことにはならない。こんな茶番は歌舞伎芝居に過ぎず、その後の何かに繋がることもない。というのも、日本はもうはるか昔に、自らの敗北を受け止め、今はNATOという囲いに囲まれた、ただの資金力のある飾り物のようなちっぽけな国に成り下がっているのだから。

こんにちの超大国中国と同様に、大日本帝国は富国強兵という合言葉のもとに打ち立てられ、その皇帝は現人神あるいはそのような寓話的な神格化をされていた。ヒロヒトが歩き、話し、生活する神であるということを信じていた日本人はほとんどいなかったが、ほとんどの日本人はその神話を受け入れ、その神話にあわせて行動していた。その理由はおそらく、日本には信じないものは、首がはねられるという長い伝統があったからだけだろう。

ヒロヒトが神であるという馬鹿げた話が特に朝鮮半島で上手くいかなかった理由は、朝鮮の人々はながらく中国の従属国であったからであり、神として祭り上げられた存在としては、日本の天皇よりも中国の皇帝の方がそうであると考えられてきたためだった。これらの要因全てが、日本による朝鮮半島の支配を特に困難にし、今でも在日韓国人・朝鮮人さらには北朝鮮政府が抱える傷口となっている。

北朝鮮や中国、ロシアとの関係が良くないという問題だけではなく、このマリア被昇天祭の8月15日に日本が直面すべき課題がある。それは、日本の魂や根本にそれよりも遥かに激しい損害を与えた、米国の占領による変節であり、その影響は今日に至るまで、日本の心を蝕み続けている。

関心を持たれた読者がいらっしゃるのであれば、ジョン・W・ダワーの無比なる名著『敗北を抱きしめて――第二次大戦後の日本人』を手に取るべきだ。この著書は、米国人が如何に日本人に植民地根性を植え付けたかを明らかにしている。文明社会(笑)がそれまで目にした中で最悪の戦争犯罪として、原爆を落とされ、たくさんの都市が空襲を受けた、その米国に対してそんな根性を如何に持たされたか、についてだ。いま歴史を振り返れば、日本兵は勇敢に戦った、と言える。 大日本帝国は、当時の自国が有していた能力を遥かに超えることをしようとしていたし、その暴力は当時の欧州の植民地支配の基準からしても極端に過ぎるものだったが、それは日帝の広大な帝国を征服し、支配するためにはやむを得ないことだった。

しかし、そんなことはもう過去のことだ。死の行進をおこなうネズミのレミングさながら、日本兵はバンザイしながら特攻隊として果て、何千人もの日本の女性や子どもたちはグアムやサイパン、沖縄で崖から身を投げた。米海兵たちが現れ、集団強姦される前に、そうするしかなかった彼らは日帝中枢部からは必要のない人たちだったのだ。現在彼らと同様中枢部からは必要ないとされているのは、日本の何千人もの若者たちからなる「トー横キッズ」だ。彼らはかつてのヤクザの本拠地新宿で、売春に身をやつしている。

以前本サイトで米国海兵隊らがハワイから沖縄に侵攻する際と太平洋戦争中、更にはその後におこなった極悪非道についての記事*を書いたが、これらのトー横キッズをはじめ、彼らと同じような境遇にある何千人もの若者たちについては、放送で取り上げる価値があろうし、もっと言えば、彼らに救いの手を差し伸べるべきだ。トー横キッズとは、独特の「地雷系」服装に身を包んだ少年や少女たちのことであり、いわゆる立ちんぼで、通行人や観光客に対して客引きをし、売春行為をおこなっていない時は真珠の東宝ビル周辺で群れをなしている。これらの少年・少女たちの様子や彼らが路上で生きるために営んでいるパパ活については、ここここここなど数え切れない動画で確認できる。
*この記事の翻訳記事「ヒロシマ、ナガサキ、ロシアンルーレット」はこちら

さらに、このような行為を養成する大学の性交クラブの詳細はこちらで見られるし、「引き込もり」という学校や職場やといった社会的交流の場から逃避している家に引きこもっている日本の若者たちのことについても、ここで読めるが、 共通理解としてとらえるべきなのは、日本の250億ドル市場であるホストクラブ業界が、トー横キッズたちが日々の稼ぎのために堕落した仕事をしなければならない状況の理由となっているようである、という点だ。私たちには理解し難いことなのだが、ホストクラブという施設は、しばしば自身が売春婦である若い女性たちが、イケメンで個性的な男性たちに楽しませてもらって お金を払うところだ。そしてこの業界は日本では規模が大きく、幼すぎて飲酒が法律で禁じられている10代の少女たちを対象にした派生店まである。これらの店や男娼たちの振る舞いについての動画はYouTube上でゴマンとあるが、彼らをとんでもない恋愛詐欺師である、と考えて間違いないだろう。彼らの手管により女性たちが揺り動かされる様は、ナイジェリア詐欺師と呼ばれる国際恋愛詐欺師さえ赤面してしまうほどだ。高額の支払いに直面させられた若い女性たちは、 借金返済の術がなく、人目をはばかる仕事で稼いだ小切手で払うしかない。こんな詐欺がまかり通ってもうなん10年にもなるが、こんな卑劣な手口が大規模なものになったのは、コロナ禍による都市封鎖措置があってからのことだ。

これらのことが米国による占領と何か関係があるかどうかを知りたければ、米国がフィリピン、もっと新しい例でいうとイラクを占領した際と同様だと考えればよい。その国の古いものを捨てさせ、米国の利益に奉仕するような新しいものにすげ替える、というのが米国の常套手段だ。第二次世界大戦後の日本でも同じ手口が使われ、日本を米国の軍や経済の需要に奉仕させたことにより、今のトー横キッズのような状況が副次的に引き起こされたのだ。カンボジアのポル・ポト派の極左過激組織クメール・ルージュ後の児童売春のことを思い起こせば、 それにハロー・キティとトヨタやパナソニックの製品を幾つか付け足せば ニホンの落ちぶれた力が一次元的に浮かび上がるだろう。

日本の経済力の強さは、高度に発展した革新的なハイテク産業、特に電子工学や自動車部門、日本の輸出力を背景にした経済や世界各国との貿易統合、かなりの額の金融資産、主要な再建国であるという事実、日本の技術が高く労働規律を守る労働者が支えているのだが、ここで取り上げているのは、株式会社日本の中枢についての話であり、何とかかじりついている大多数の人たちのことではない。日本は主要な技術革新国であり続けてはいるが、主要な消費者層を韓国や中国などの新興国に大きく奪われている。ファーウェイやシャオミ、ビボやワン・プラスが、パナソニックや三菱、ソニー、オリンパス、ニコン、キャノンでも簡単に製造できるようなかっこよく革新的で高度な消費者受けする器具を作っているが、これらのゴジラのような日本製造業者は価値連鎖を「表舞台ではない分野」に移行し、地位を保とうとしている。現在韓国や中国の企業が支配している消費者向け電子機械産業の多くが、競争が激しく、非常に過密であり、順位が動きやすく、動きも速く、利益は薄いのだが、日本の企業はいま主により競争が激しくない分野に散見されている。その分野は高度で専門性の高い企業の参入は少数で、利益率は高い。その作戦は経済界においては理にかなったものだが、トランプが日本のあちこちに関税をかけようとしているなかで、日本の中核的な経済だけではやっていけない大多数の日本企業にとって、突破口を見いだすことが困難になっている。

株式会社日本が抱える経済問題は、こういった分野や他の主要な分野に置いて、破産しない状況を保つことにあるが、トランプによる関税の破壊力はすさまじく、トランプが目を付けたところならどこでも混乱が生じている。日本が現在受け入れている外国からの大量観光により恐ろしい状況が生じているが、それはオーストラリア人や中国人、米国人が無知を理由に日本の礼儀作法をズタズタにしているからだけではない。産業としてもちこまれた米国のその日暮らしの生活様式もこの恐ろしい状況の一つの要因になっている。

日本が戦後、再建されたとき、日本は従来の労働者の労働規律を維持したし、警察とヤクザが手を取り合っている状況も1946年の渋谷事件以来そのままだ。彼らが日本に入りそうになっていた共産主義を食い止め、日本の社会的結束を維持してきた。しかしそんな時代は去年の桜の花のように色あせてしまっている。新宿のトー横キッズが売春を自由に行えているということからわかることは、ヤクザは街の喧騒の中でさえ勢力を失っており、トクリュウ(匿名・流動型犯罪組織)という匿名で流動的な闇バイトの犯罪が横行していることからもヤクザが暴力などの犯罪界隈からも必要とされなくなっていることがあきらかになっている。

べつにヤクザがなくなったことを嘆いているわけではく、多くの理由の中でも、東京の立ちんぼやトクリュウ請負殺人者、ビル・カリー神父が学長を務めた上智大学の性行クラブの3つが、日本が根本的な社会改革をしないといけない理由であることが言いたいのだ。ホストクラブ問題が典型的に示している推し活に寄生された社会関係から脱さなければならないのだ。

推し活」とは、激しくはまった対象の人やものに対して活発かつ熱烈に応援をする好意のことだ。このことばは、「応援したいもの」あるいは「お気に入り」を表す「推し」ということばと「活動」ということばを短くした「活」の合成語だ。当初は女性のアイドルファンの間でよく使われたことばだったのだが、「推し」という概念が芸能人や役者、歌手、アイドル、声優、ユーチューバー、マンガやアニメやゲーム内の登場人物、歴史上の人物、運動選手、動物、電車、建造物、仏像にまで広がった。「推し活」信者は、私財をなげうってコンサートやライブ、ファンイベントに参加し、商品や限定グッズや「推し」関連商品を購入し、投稿やファンアートや討論で自分の「推し」をソーシャルメディア上で拡散し、ファンの会やオンラインの集まりに参加して「推し」の良さを共有し、自分たちの「推し」を特徴としたものを集めたり、集まりに参加したりしている。いわば国規模で「推し」が全てを奪う、ポンジ・スキーム(投資詐欺)に取り組んでいるようなものだ。

こんな流行がどれだけ常軌を逸しているかを確認したいならば、日本の中年男性たちが私財を投げ打って思春期になる前のお気に入りの少女に入れあげているこのドキュメンタリーを見ていただきたい。さらにはこちらの熟練した女性詐欺師の様子も見ていただきたい。世間に顔向けできない仕事で稼いだお金をホストクラブにつぎこんでいたのだ。つまりニセモノの彼女体験をさせたお金でニセモノの彼氏体験を買っていたのだ。さらにはテレビの天気予報士の檜山沙耶についても見てほしい。この女性は、彼氏ができたことを彼女に心を奪われたファンに対して謝罪しなければならなくなったのだ。沙耶に彼氏ができた衝撃のせいで、そのテレビ局の株価が1割急落し、沙耶は彼氏ができたことを髪の毛を切って全国放送のテレビ局で謝罪しないといけない羽目になった。まさにffs(最悪)だ。

メイドカフェや中年オヤジが10代前半の女の子に色目を使う話はおいておこう。性行為を伴わないデート用に老人を借りる話も忘れよう。 日本ならどこにでもある自販機の中には、女性を買えるものまであるということも気にしないでおこう。日本で一番人気のあるホストは、女性に売春宿で働かせて自分と遊ぶ金を儲けさせていることも忘れよう。こんな狂った日本の背景には一体全体何があるのかを自問しないようにしよう。

上を向いて歩こうサクラ日本酒、新宿、相撲、靖国神社などの上澄みをみな剥いでしまえば、非常に厄介な現実が浮かび上がる。それは日本だけの問題ではなく、私たちの世界全体にとっても。日本は文化が死にゆく地となっている。

日本の歴史の夜明けにおいては、仏教や中国の書物がこの日出ずる国に届き、それらを日本人は分析して改造を加えて無きものにしてしまった。黒船来航の際も、同じことが起こった。 ペリー傘下の厄介な荒くれ者たちも、マッカーサーと共に横田に上陸したり横須賀に入港した米国民たちみな、日本人は受け入れて無きものにしてしまった。これらの米国民は、日本を自分たちの意のままに折り曲げ、まるで自分たちのことを何も知らない人々により形を変えられるのを待っているだけの盆栽のような存在にしてしまったのに、だ。

詳細については議論の余地があろうが、鳥瞰すれば、日本は米国という同盟国(笑)に修復不可能なほどねじ曲げられてしまった、と言える。確かにこの聖母被昇天祭の日、日本は、北はロシアや北朝鮮、南は中国の動きを注視し続けなければならないが、悲しいかな、日本自身も苦境に立たされていることを忘れてはならない。

ノーベル賞受賞者のサイモン・クズネッツはかつてこんな名言を残している。「国には4種類ある。それは、発展国と発展途上国、日本、アルゼンチンだ」と。確かにそうなのだろう。しかし日本はそのことを自国にとって有利なように利用して、アンクル・サムに踏みつけられているのをやめなければ。軍事面だけではなく、経済面や社会面においても、だ。

まずは米問題だ。日本人は自国米が好きだから、トランプが押し付けようとしているフランケンシュタインのような合成米など見向きもしないし、日本人はタイ米もベトナム米も好きではない。日本がこの米についての防衛線を保てなくなれば、他にどの防衛線が守れるというのか?明らかにマス・ツーリズムではない。というのもそれこそが、米国が占領国の文化を消し去る際の常套手段なのだから。

マッカーサー将軍は、神道や帝国の神話(そんなものを信じていた日本人はほとんどいなかったのだが)を粉砕したというまちがった評判を得ているが、同将軍は日本の家父長制を崩壊させたことの責任はとらねばならない。この家族制度は日本人を結びつけてきたものだったのに、日本をネオン輝くただの売春宿に変えてしまった。このような状況は米国によるカンボジア支配後の状況と同じだが、日本の場合、それに「本音と建前」という日本人の特徴が加味されたものだ。「本音と建前」とは自分の得にならなくても、大多数の世間の考えに取り込まれてしまう、という傾向のことだ。

この聖母被昇天祭の日にロシア大使館でハズレくじを引いた人は、右翼団体の抗議文を受け取り、右翼団体にお辞儀をして、大使館の中の私室で鼓膜の検査を受けないといけなくなるのだが、そこから外に出て地下鉄で数駅移動すれば、新宿のホストクラブが、日本の最も弱きものたちの生活を粉砕しようと待ち構えている。こんな状況についてヤクザが何かしてくれるなどと期待はしないが、一般の日本人はこの状況を変えるべく協力して直ぐにでも行動を起こすべきだ。さもなければ、日本はスッカラカンになってしまう。日本から消え失せた、スキヤキソングや桜などの過去の思い出にしがみついていても何にもならない。さらにはこの先もパクス・アメリカーナにしがみついて満足しては、その先には、無しかない。

 

※なお、本稿は、寺島メソッド翻訳NEWS http://tmmethod.blog.fc2.com/

の中の「デクラン・へイズ:8月15日に思う。いまでも敗北を抱きしめたままの日本(2025年8月26日)

http://tmmethod.blog.fc2.com/

からの転載であることをお断りします。

また英文原稿はこちらです⇒Still embracing defeat: Japan 1945-2025
筆者:デクラン・ヘイズ(Declan Hayes)
出典:Strategic Culture Foundation 2025年8月15日https://strategic-culture.su/news/2025/08/15/still-embracing-defeat-japan-1945-2025/

寺島隆吉 寺島隆吉

国際教育総合文化研究所所長、元岐阜大学教授

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