【特集】沖縄の日本復帰50周年を問い直す

戦争につながる全てに声を  ~「想定」と抑止論による有事準備~

与那覇恵子

自衛隊と米軍が昨年の台湾有事「想定」の机上演習で、中国の核兵器使用を「想定」して自衛隊が米軍に「核の脅し」での対抗を再三求め、米側が最終的に応じた(7/27共同通信)との報道に、今や日本(自衛隊)が先導する戦争準備に危機感が増した。

2021年3月「台湾有事」の言葉など聞いたこともない東アジアで最初にそれを言い出したのは米軍だが、それは証拠や根拠も無い「想定」による予告だった。予告には、相手の動きを分析した上での予告と自身が望む方向に導く計画があるが故の予告があり、証拠や根拠を提示できない米軍幹部発言は後者と判断できた。発言は12月には「日米共同作戦計画」で具体化され、24年10月には日米共同総合演習が日本全域で実施され、25年3月台湾有事を「想定」の12万人避難計画を内閣官房が発表、今や自衛隊の訓練に反対する住民は「許可をもらえ」と恫喝され、基地に反対する住民は朽ちたフェンスに手をかけただけで逮捕され、自衛隊が核戦争を「想定」し核による抑止を米軍に要請する状況なのだ。ここまでで「想定」という言葉が5回も使われたことでわかることは、軍事要塞化などの戦争準備は、根拠や証拠なき「想定」に始まり「想定」で進められるということだ。

この「想定」で進む戦争準備を肯定する論が「軍備増強が戦争を抑止する」との抑止論だが、軍備増強の戦争準備は逆に戦争に進む危険を高める。戦争前提の軍備である抑止論には平和外交が念頭に無いからで、その軍備拡大に限度設定も無いからだ。また、敵国の存在を前提とする抑止論は、敵視する国との関係悪化につながる。中国近海で合同演習を継続してきた米軍と自衛隊は2024年2月中国を仮想敵国と明示した。中国より先んじての敵国明示は、「台湾有事」を言い出したのは米国で、安倍総理の「台湾有事は日本有事」発言が示すように拡散したのは日本だが、戦争へと先んじているのも日米であることを私たちに教える。

昨年7月、自衛隊の護衛艦が中国領海に誤侵入、進路変更を何度も求めるも領海に進む艦に中国が2発の警告射撃をする一触即発の事態があったと報道された。(8/11)米国軍機が台湾に頻繁に飛来、反応して中国軍機も台湾に飛来、スクランブル発進を余儀なくされている一触即発の危ない台湾の空の状況も聞く。戦争は誤認や誤射などで勃発するが、実はそれが意図的に行われることも歴史は教える。根拠なき想定で始まり抑止論で進む戦争準備、想定を現実化しようとする作られる戦争の犠牲になりたくない。無意味な戦争につながる全てに声をあげる勇気が必要とされる今である。

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与那覇恵子 与那覇恵子

独立言論フォーラム・理事。沖縄県那覇市生まれ。2019年に名桜大学(語学教育専攻)を退官、専門は英語科教育。現在は非常勤講師の傍ら通訳・翻訳を副業とする。著書は「沖縄の怒り」(評論集)井上摩耶詩集「Small World」(英訳本)など。「沖縄から見えるもの」(詩集)で第33回「福田正夫賞」受賞。日本ペンクラブ会員。文芸誌「南瞑」会員。東アジア共同体琉球・沖縄研究会共同代表。

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