
非暴力抵抗運動としての「焼身自殺」を再考する――イスラエルの「ジェノサイド」に抗議して自殺した若い米軍兵士を例にして
国際国際教育(2025/08/28)
アマレク(イスラエル民族の敵とされ「聖絶」の対象となる)
聖絶(神の名によりユダヤに敵対する異民族およびその家畜なども全て殺戮する行為)
餓死戦術(「ジェノサイド」「民族浄化作戦」の一環としてイスラエル軍が使っている戦術)
ジェノサイド(大量虐殺。ギリシャ語の「種族(geno-)」とラテン語の「殺害(-cide)」を組み合わせたもの)
ティック・クアン・ドック師(ベトナムの高僧、抗議の焼身自殺)
マジョリティ・テイラー・グリーン(Marjorie Taylor Greene、共和党下院銀員)
アーロン・ブッシュネル(Aaron Bushnell、米国空軍現役兵死。イスラエルの蛮行に抗議して焼身自殺、25歳)
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拙著『イスラエルに鉄槌を!』を知人(Mさん)に差し上げたところ、その御礼メールの1節に次のようなコメントが書かれていました。
「ひとつ引っかかったのは、非暴力について。私が理解していたガンジーの非暴力は、焼身自殺のような行為とは違うような気がしたこと」
そこで私は「これについてはブログでゆっくり解明したいと思いますので、このメールでは割愛させていただきます」という返事を書きました。
そこで以下では、それに対する私見=反論を書きたいと思います。しかし、いつも私の活動や書籍に賛同や励ましの言葉をいただいているかたに反論を書くのは気が重く、ついつい筆をとるのがずいぶん先送りになって今日に至ってしまいました。
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しかし、イスラエル軍によるガザ虐殺が日増しに激しくなり、今や砲撃による殺戮ではパレスチナ人をガザ地区から追い出すことは不可能と悟ったのでしょうか、ついにネタニヤフ首相は「餓死作戦」という手段に移ったようです。
一見すると、砲撃で住居まるごと破壊する作戦は、手足のない死体や瀕死の重症者が散乱する光景が世界の眼に曝(さら)されるわけではないので、残虐さが小さいように見えるかも知れませんが、こんなに残酷な戦術はありません。
これまでのブログでは、イスラエル軍が「テロリスト」とみなした人物を砲撃し殺傷する作戦を展開してきたこと、それが最近では「ラベンダー」というAIソフトを使ってカザ住民から「テロリスト」を選別し、その人物が帰宅したときに住居ごと破壊する戦術に移行したことを紹介しました。
それだけでなく、家ごと砲撃しても生き残る家族が出ることは少なくないわけですから、今度はその生き残った家族が治療される病院も破壊するという戦術まで併用することになりました。それどころか生き残った家族のため、その治療や手術の先頭に立っている医者や看護師まで攻撃対象として選ぶようになりました。
その典型例として、ガザ地区カマル・アドワン病院院長でイスラエル軍によって拉致されたまま行方不明になっているサフィヤ医師を、ブログ(2025/05/18)で取り上げました。イスラエルの刑務所に連行され拷問死する医師が少なくなくなったので、サフィア医師も同じ運命をたどるのではないかと心配されているからです。
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ところが、このような残酷な手段をとっても、住民はネタニヤフ首相やトランプ大統領が用意すると称する国外の居住地を望まず、住民はガザに居住し続けることを選びました。 そこでネタニヤフ首相が最後の手段として選んだのが「餓死作戦」でした。こうして全員が餓死すればガザ地区を丸ごと手に入れることが出来るわけですから、彼らの望む「大イスラエル建設」という目標に着実に近づけるわけです。
しかし大手メディアはこのような状況をほとんど報道してきませんでした。そこでこのような事態に目をつむることができず、やむなく再び筆をとることにしました。
私はもともとウクライナ紛争やイスラエルの民族浄化作戦のことを書くよりも、「寺島メソッド健康教室」や「寺島メソッド自然農法」のことを書きたかったのです。ブログでも少しずつそれについても書き始めていました。
が、大手メディアの報道があまりにもひどいので、義憤に駆られて、ついつい、「コロナ騒ぎ」「ウクライナ問題」どころか「イスラエルの民族浄化作戦」まで手を出すことになってしまいました。
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話が少し横に逸れたので、イスラエル軍の「餓死作戦」に戻ります。
イスラエル軍は国連の援助物資を積んだトラックが検問所前で列をなしていても、これをガザに入れようとしませんでした。こうして餓死者はうなぎ登りに増えていきます。これには国連の援助担当官も我慢がならず思わず声をあげました。
*‘Unthinkable’ catastrophe developing in Gaza – UN spokeswoman(想像を絶する惨事がガザ地区で進行している)
https://www.rt.com/news/622425-gaza-starvation-crisis-un/
3 Aug, 2025
イスラエル軍もこのような声を無視できず、空から救援物資を投げ落とすという行為に転じましたが、そのような空からの物資は、まともに住民に届かなかったどころか住民が住んでいるテントを直撃したり、落ちてくる援助物資で死傷したりしています。
さらには、地上に落下する援助物資に殺到する群衆に踏み殺される民衆まで出てくる事態になっています。検問所で待機している国連援助物資のトラックをガザ地区に入れてやれば済むことなのに何故こんなことをするのかという声が出てくるのも当然でしょう。
そのような声に押されてネタニヤフ首相は米国と共同でGHF(ガザ人道財団)をつくり支援物資を供給する施設をつくりました。ところがその施設は住民の居住地から遠く、炎天下を延々と歩いて行かねばならず、しかもそこまで到達した民衆にはイスラエル軍から銃撃が浴びせかけられるというおまけつきでした。
*Aid as ambush: The horrifying new face of Israel’s Gaza war
「エバ・バートレット:「援助」に見せかけた「待ち伏せ」。イスラエル軍「民族浄化作戦」の新手段」
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-3238.html(『翻訳NEWS』2025-07-17 )
空から救援物資を投げ落とし、物資は住民に届かないどころか住民のテントを直撃したり、落ちてくる援助物資で死傷したりしている
https://www.rt.com/news/622707-aid-drop-gaza-crush/
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このようなイスラエル軍の「民族浄化作戦」のなかで、子どもたちから餓死者が激増していきました。冒頭に掲げた写真がその典型的画像です。次の画像も中東カタールのアルジャジーラ紙に載っていたものです。
飢餓になるとどうしてお腹が膨れてくるのか分かりませんが、飢餓死が近づくと子どものお腹がこのように膨らんできます。普通の神経の持ち主なら正視するに耐えられない光景です。
https://omny.fm/shows/the-take/brief-starvation-deaths-mount-in-gaza-israel-intercepts-handala#description
(録音解説5分30秒)
こうした残酷な仕打ちに対して世界中から非難の声が浴びせかけられましたが、ネタニヤフ首相と彼を支援するトランプ氏は動じる気配が見えません。それどころか驚いたことにトランプ氏はネタニヤフ首相を「戦争の英雄」と称える始末です。トランプ氏は異常人格者なのでしょうか?
*Netanyahu a ‘war hero’ – Trump(!ネタニヤフを「戦争の英雄」と称えるトランプ大統領)
https://www.rt.com/news/623318-netanyahu-war-hero-trump/
20 Aug, 2025
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しかし、このような残酷な「民族浄化作戦」を仕掛けても平気だということは、トランプ大統領だけではなくネタニヤフ首相も、ヒトラー並みの異常人格者ではないか疑ってしまいます。
それどころか、そのような人物を首相に選ぶイスラエルという国も、どこか狂ってしまっているのではないかと思ってしまいます。そう思っていたら、それをみごとに描写している記事を見つけました。それが次の記事です。
*The Brainrot of a Nazified Society
「社会がナチス化され、子どもを含めたイスラエル国民の脳がイカレ始めた」
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-3267.html(『翻訳NEWS』2025-08-16 )
この記事は現在のイスラエルのようすを次のように記述しています。
今のイスラエルで私たちが目撃していることは、 ひとつの過程の終着点なのだ。それは、ドイツ出身の米国の政治哲学者である故ハンナ・アーレント女史が何十年も前に私たちに警告していたものだ。
つまり、ごく普通の人々が、全体主義国家のもつ枠組みを通して、寄って集(たか)って残虐な行為に意図的に参加する、という過程だ。 こんなことは、社会が完全に「ナチス化」された時におこるものだ。
「米国の例外主義」というポッドキャストの司会をつとめるアーロン・グッド氏の厳しいが的を射た表現を借りると、「大量虐殺が受け入れられるだけでは済まず、祝福の対象にされている」という状況なのだ。こういっても誇張ではない。イスラエル国民が、芝生用の椅子を用意して、ガザの爆撃の模様を見ようとしているところが映像に撮られているからだ。子どもたちは、アラブの女性たちが瓦礫の下で動けなくなっていることを嘲笑う音楽動画を作っている。
「アマレク」の死を祝福する歌が、音楽チャートの最上位を走っているが、このアマレクとは旧約聖書で全破壊の対象となるユダヤ人の敵の民族を意味することばだ。
これらの動きを見せているのは、少数の過激派ではない。イスラエル社会の主流派の動きを表すものだ。 そしてその社会は、「パレスチナの人々の命には価値がない」と見るように組織的に条件付けされてきたのだ。7
上の記事では、「子どもたちは、アラブの女性たちが瓦礫の下で動けなくなっていることを嘲笑う音楽動画を作っている」と書いてあります。
その音楽動画を見てみると、イスラエルの子どもたちが「私たちはガザの住民全員を絶滅させる」と歌っているのです。
次の画像はその一場面ですが、この記事の後には、このイスラエルの子どもたちが「アマレク」をパレスチナ人と重ね合わせて、その絶滅を願う歌を振り付けで踊りながら歌っている場面も付けられていました。
イスラエルの洗脳され狂ってしまった子どもたちが歌う「私たちはガザのすべての人を抹殺します」
https://youtu.be/sUpm2jGJc18(動画2分7秒)
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何という背筋が凍るような社会でしょう。ナチスがユダヤ人にたいしておこなった行為を、今度はパレスチナ人に対しておこなっても、それに対して疑問をもつどころか、それを祝福し賞賛したり達成感すら感じるようになっているのです。
上の記事には次のような解説が付けられていました。
ナチス化の過程は一夜にして成し遂げられたわけではない。それには数年、もとい数十年という年月と注意深い涵養を要した。
始まりは対象となる人々の非人間化だった。パレスチナの人々は、年齢や状況に関わらず、「人獣」や「テロリスト」と決め付けられた。
それに付け加えられたのは、永遠の被害者意識という神話だった。その神話を理由に、すべての残虐行為は「自衛」という名のもとに正当化された。
この神話があまりにも深くイスラエル国民の中に浸透させられたため、パレスチナ人の囚人を強姦する権利がある、とまで主張し、さらには餓死するパレスチナの子どもたちを見ても、達成感しか感じられなくなってしまっている。
しかし、このようにナチス化されたイスラエル社会の行為、ネタニヤフ首相の戦術を、トランプ大統領は「戦争の英雄」と持ちあげているのですから、信じがたい光景です。しかも、この点に関しては民主党もほとんど変わらないのです。
彼は一様に「イスラエルは自衛する権利がある」と言うのみです。このような残虐行為がどうして自衛なのでしょうか。
しかしアメリカ国民のなかには良心の呵責を感じるひともいます。そのひとりがかつては強烈なトランプ支持者だった下院議員グリーン女史です。
*US congresswoman labels Gaza ‘a genocide’(米国の女性議員がガザ虐殺を「ジェノサイド(集団大虐殺)」だと糾弾)
https://www.rt.com/news/622173-republican-congresswoman-gaza-genocide/
29 Jul, 2025
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かつては強烈なトランプ支持者だったグリーン議員でさえ、ガザ虐殺を「ジェノサイド(集団大虐殺)」だと糾弾しているのですから、一般の米国民から同じ声が上がっても当然でしょう。それを象徴する事件が若い米軍兵士の焼身自殺でした。
空軍現役隊員のアーロン・ブッシュネルさん(25歳)が、2024年2月25日にワシントンのイスラエル大使館前で、イスラエルによるガザのパレスチナ人に対する「大量虐殺」に抗議するため、自らに火をつけて死亡したのです。
*US airman dies after self-immolation Gaza protest
「米国のイスラエル大使館前で現役軍人が焼身自殺した」
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-2327.html(『翻訳NEWS』2024-03-02)
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ところで、上の画像は私がRTというニュースサイトの動画を一時停止させて切り取ったものですが、この動画のなかでブッシュネルさんはイスラエル大使館に向かう途上で次のように語っていました。
私はもうジェノサイドに加担するつもりはありません。
私の行動が極端な抗議行動に見えるかも知れませんが、植民地支配者の手によってパレスチナの人々が受けている仕打ちに比べれば、まったく極端なことではありません。
パレスチナの虐殺行為は、私たちの支配階級が決定したことであり、今後は日常茶飯事のことになるでしょう。
https://www.rt.com/news/593158-man-self-immolates-embassy/(このニュースの末尾に、2分34秒の動画があります)
彼はこの焼身自殺という抗議行動をおこなう前に大手メディアにその旨を通知してあったのですが、結局だれも現場に現れず、この動画はTalia Janeという女性の独立ジャーナリストが独自に手に入れたものでした。
ですから、この動画は大手メディアではほとんど紹介されず、この事件を知っているひとは多くなかったはずです。私がこの動画をISF(独立言論フォーラム)主催の講演で紹介したとき、「えっ、これはフェイクニュースではないんですか」という声があがったことが、それをよく示しています。
今まで一貫してイスラエル支持を表明してきた大手メディアとしては、このような抗議行動があったことを知らせたくなかったのでしょう。
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他方、ベトナム戦争時ではどうだったでしょうか。
すでに以前のブログでも紹介しましたが、ベトナムの高僧ティック・クアン・ドック師が焼身自殺を戦争に抗議したとき、まだ健全だった大手メディアは、これを大きく報道しました。
この写真がベトナム戦争の終結を早めたことは間違いないでしょう。私もこの写真に大きな衝撃を受け、反戦デモに参加するようになったからです。
しかしこの写真は、「子どもにとって残酷すぎるから」という理由でサイトから削除され、見つけ出すのに苦労しました(漫画『はだしのゲン』が公立図書館から排除されるようになった事態と似ています)。それほど権力者にとっては「焼身自殺」という抗議形態は、非暴力抵抗運動の一つとして怖い存在になっていることは間違いないように思われます。
ところが、このブログの冒頭にも書いたとおり、Mさんから、「ひとつ引っかかったのは、非暴力について。私が理解していたガンジーの非暴力は、焼身自殺のような行為とは違うような気がした」というメールをいただいているのです。
私が理解する「非暴力抵抗運動」は、「暴力に対して暴力と闘う」「武力に対して武力で戦う」のではなく、「暴力や武力に対して非暴力でたたかう」ことだと思っています。ガンジーはイギリスの武力的植民地支配から独立を勝ちとるためにあくまで「非暴力」で対抗し、ついに勝利しました。
ネルソン・マンデラも、南アフリカ共和国の黒人差別「アパルトヘイト」にたいして初めは武力闘争を主張していましたが、最後は「非暴力抵抗運動」を通じて勝利を勝ちとりました。
パレスチナのイスラエル軍によるジェノサイド(集団大虐殺)についても、圧倒的な武力を誇る敵に対して勝利するためには、ネタニヤフ首相が裏で育てた「ハマス」という武装集団の力に頼るのではなく、「非暴力抵抗運動」が結局は、長い目で見ると勝利に近道ではないかというのが私の主張でした。
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ところがMさんは「焼身自殺」というのはガンジーの言う非暴力とは違うのではないかと主張されているのです。
確かに調べてみると、キリスト教では自殺というのは「罪」だと捉えられているようです。たとえばあるサイトでは次のように書かれていました。
「自殺というのは、聖書的には殺人です。加害者と被害者が同じだというだけで、これが殺人であることに変わりはありません。ですから、自殺は『罪』です。」
https://seishonyumon.com/movie/2916/
Mさんはキリスト教徒なのでしょうか。
しかし、この同じキリスト教徒の帝国が世界の破壊の先頭に立っているのです。その例は拙著『イスラエルに鉄槌を!』で詳述しました。しかし、これはアメリカだけでなく「アメリカ大陸を発見したとされるスペイン人も同じでした。
拙訳『肉声でつづる民衆のアメリカ史』上巻、第1章54頁(明石書店)ではキリスト教宣教師ラス=カサスが、キリスト教を広めるためと称して先住民をどのように虐殺したかを次のように記述しています。
さらに、彼らは漸く足が地につくぐらいの大きな絞首台を作り、こともあろうに、われらが救世主と12人の使徒を称(たた)え崇(あが))めるためだと言って、13人ずつその絞首台に吊し、その下に薪をおいて火をつけた。
こうして、彼らはインディオたちを生きたまま火あぶりにした。・・・(この間、残虐な火あぶりの記述があるが省略)・・・
私はこれまで述べたことをことごとく、また、そのほか数えきれないほど多くの出来事をつぶさに目撃した。キリスト教徒たちはまるで猛り狂った獣と変わらず、人類を破滅へと追いやる人々であり、人類最大の敵であった。
(ラス=カサス『インディアスの破壊についての簡潔な報告』)13
ご覧のとおり、キリスト教徒のスペイン人たちは、先住民にキリスト教への改宗を強要し、それを先住民が拒否すると、「われらが救世主(キリスト)と12人の使徒を称え崇めるためだ」という理由で、先住民を13人ずつ火あぶりにしたのです。
それどころか、よく調べると、火あぶりにするだけでなく先住民の手足を切断しそれを焼き肉にして食べることすらおこなっていたのです。
ラス=カサスの前掲書は、「人体の中でもっとも美味とされるのが手足であったからである。ほかの地方に住むインディオたちはみなその非道ぶりを耳にして恐れのあまり、どこに身を隠してよいか判らなくなった」と書いています。
「自殺というのは、聖書的には殺人です。加害者と被害者が同じだというだけで、これが殺人であることに変わりはありません。ですから、自殺は『罪』です」と説いているはずのキリスト教徒が、人肉を喰うことすら許していたことを知り、驚愕してしまいました。
ですからイスラエルの民族抹殺という蛮行に「焼身自殺」という手段を使って抗議するのは、武器を使ってイスラエル軍と戦うのではなく自分の体・命を犠牲にして抗議の意思表示をするのですから、これはやはり一種の「非暴力抵抗運動」なのではないでしょうか。
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このように、歴史を振り返ってみると、「自殺は罪だ」と主張するキリスト教徒がアメリカ大陸で平気で先住民を殺し尽くしているのです。キリスト教国とされる米国も世界のあちこちで殺戮を繰りかえしてきました。
ですから、聖書が自殺を禁じているという理由でブッシュネルさんの焼身自殺を「ガンジーの言う非暴力」とは違うのではないかと言うのであれば、私としては大きな違和感を感じるのです。
私のような臆病者は、ガソリンを頭から浴びて焼身自殺することは想像するだけに怖じ気づいてしまい、実行する勇気が出ません。ですから、私はブッシュネルさんの勇気を尊敬することはあっても、彼の行動を批判したり疑問を呈したりすることは、とても思い浮かびません。
しかし、このような非暴力抗議行動のおかげでしょうか、着実に欧米の世論に変化が見られます。何しろ「反ユダヤ主義」という理由でフランスのマクロン大統領ですら「パレスチナを国家として認める」と今までの姿勢を変えたとたんネタニヤフ首相から批判され始めているのですから。
* Netanyahu accuses Macron of fueling anti-Semitism(ネタニヤフ首相、マクロン大統領を反ユダヤ主義助長で非難)
https://www.rt.com/news/623339-netanyahu-macron-france-antisemitism/
20 Aug, 2025
ですから「銃撃・爆撃」であれ「飢餓作戦」であれ、住民がGaza地区から一掃されないうちに何としてでも、この殺戮に終止符を打ちたいものです。
先住民を火あぶりにするどころか、先住民の焼き肉を楽しむキリスト教徒たち
https://www.meisterdrucke.jp/kunstwerke/1260px/Theodore_de_Bry_-_Description_of_crimes_inflicted_on_Indians_by_Spanish_settlers_-_Spanish_Conquis_-_%28MeisterDrucke-921418%29.jpg
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ただし、この「焼身自殺」が非暴力直接抵抗運動として効果を発揮するのは、それを大手メディアが正しく報道する場合に限ります、
というのは、ブッシュネル氏の場合に見られるように、それを大手メディアが黙殺する場合には、それが「無駄死に」となる可能性が大きいからです。
だからこそイスラエル軍がジャーナリストを狙い撃ちにして殺戮していく事件が増加しているのでしょう。
*A Massacre Within a Massacre: Israel Is Exterminating Palestinians in Northern Gaza and Killing Palestinian Journalists Reporting on It
エバ・バートレット:イスラエルによる数々の「ジャーナリスト殺害計画」
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-3149.html(『翻訳NEWS』2025-05-12)
他方、最近はYouTubeやFacebookあるいは「X」のような媒体を通じて重大ニュースが世界に拡散されることも多くなってきていますから、大手メディアが黙殺しても「焼身自殺」が非暴力抵抗運動として大きな力を発揮する可能性は、まだまだ大きく残されています。
そういう意味では、ガザ住民が携帯電話でイスラエル軍の残虐行為を録画・記録し、それを独立メディアを通じて全世界に発信し続けるという運動も、「非暴力抵抗運動」の新しい形態として検討してみる価値があるのではないでしょうか。
<追記>
最近、ネタニヤフ首相にたいする抗議行動がイスラエル国内でも活発化しています。が、その実態をよく調べてみると、「ハマス殲滅作戦よりも、休戦してハマスに捕らえられている人質の救出を優先しろ」との要求デモなのです。
要するに、イスラエルのユダヤ人にとって最優先事項は身内の救出・解放であって、ガザ地区で展開されている地獄すなわち「一般市民の虐殺」の停止ではないのです。ここにもイスラエルのユダヤ人の歪んだ人権感覚をうかがい知ることができます。
これではユダヤ教という宗教にたいする疑問を深め、ますます「反ユダヤ人や主義」を増長させることになると思わざるを得ません。ユダヤ人及びユダヤ教にとってこんなに不幸なことはないでしょう。
まして最近では「ユダヤ教とキリスト教は一心同体だ」という言説さえ現れ始めているのですから、イスラエルによる「民族抹殺」「民族浄化作戦」をトランプ大統領が無条件に支持するとなると、大統領や米国の威信そのものが失墜する原因をみずからつくり出していることになります。米国にとっても不幸なことです。
*The myth of a ‘Judeo-Christian’ West: Why the label doesn’t hold up
「西洋は『ユダヤ=キリスト教の国だ』という神話:なぜその言説は通用しないのか」
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-3291.html(『翻訳NEWS』2025-08-27)
☆寺島先生のブログ『百々峰だより』(2025/08/28)
*百々峰だより:「非暴力抵抗運動としての「焼身自殺」を再考する――イスラエルの「ジェノサイド」に抗議して自殺した若い米軍兵士を例にして」からの転載になります。