
植草一秀【連載】知られざる真実/2025年9月11日 (木) 石破氏が退陣させられた理由
社会・経済政党とは政治理念と基本政策方針に関して同じ考えを持つ人が集まり、主張を実現させるためにつくる政治団体。
だが、一つの政党のなかに異なる政治理念や基本政策方針が存在する。
これでは主権者はこの政治勢力に特定の政治理念と基本政策方針を託すことができない。
なぜこのような現象が生じるのか。
それは、これらの組織が「政治理念と基本政策方針を実現するための組織」ではなく、「単なる利権互助会」であるからだ。
政治権力を握ることは巨大な資金を握ること。
国は約100兆円の資金を配分する権限を有する。
制度によって決定される政府支出もあるが、裁量で決定できる政府支出もある。
この巨大な資金を握ることが政治勢力の目的になっている。
利権を維持することが最優先目標なのだ。
だから、自民党は政治理念と基本政策方針で統一性がないのに分解しない。
これを打破するために、政治理念と基本政策路線で政党を分化させるべきだ。
石破首相は5度目の党首選挑戦で念願の党首に就任し、首相の座を得た。
首相の座を射止めたのだから本望だろう。
自分が思う政策をひたむきに打ち出すべきだった。
ところが、首相に就任するやいなや、保身に走った。
だから、何も残すこともなく無残に首相の座を追われることになった。
とはいえ、石破氏に日本政治を刷新するための具体的提案があったのか。
この点は極めて疑問であり、結局、何も持ってはおらず、その空白がそのまま無残な退陣につながったと思われる。
25年の通常国会では「政治とカネ」問題の根幹を是正するチャンスがあった。
「企業団体献金全面禁止」を決めるべきだった。
しかし、石破氏はこの提案に反対した。
石破氏自身が企業献金の維持を求めた。
また、通常国会で消費税減税を決定するべきだった。
しかし、これにも石破氏は持論として反対した。
つまり、企業献金廃止と消費税減税に石破氏が自分の考えとして反対だったのだ。
この二つが参院選で自民党が大敗した主因。
元を質せば旧安倍派の裏金事件の影響は深刻だった。
しかし、裏金事件が浮かび上がらせたのは「政治とカネ」の問題。
その根本対応策は「企業献金禁止」だ。
これが「政治とカネ」問題の根幹。
この問題について、石破氏は自身の見解として「企業献金廃止に反対」だった。
財政運営についても、政府債務のGDP比が大きいから減税はできないとの立場を取った。
財務省の説明をそのまま表出した。
これで選挙に負けた。
誰のせいでもない。
自分のせいだ。
参院選で大敗したから退陣を回避する術はなかった。
この時点で残された道は二つ。
一つは敗戦80年談話の発出。
もう一つは衆院解散。
80年談話を9月2日に発するべきだった。
しかし、石破氏は動かなかった。
衆院解散は邪道だ。
自分の延命のための衆院解散は究極の権力濫用。
だが、一つだけ大義名分が立つとすれば、それは「政界大再編」だった。
一つの政党のなかに異なる政治理念と基本政策方針が混在している。
これを整理統合するための衆院解散であれば、説明の仕方によっては大義名分になり得たかもしれない。
しかし、結局、何もせずに石破氏は退いた。
何もしないなら、1ヵ月半の空白を作らずに参院選直後に辞意を表明するべきだった。
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植草一秀(うえくさ かずひで) 1960年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒。大蔵事務官、京都大学助教授、米スタンフォード大学フーバー研究所客員フェロー、早稲田大学大学院教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役、ガーベラの風(オールジャパン平和と共生)運営委員。事実無根の冤罪事案による人物破壊工作にひるむことなく言論活動を継続。 経済金融情勢分析情報誌刊行業務の傍ら「誰もが笑顔で生きてゆける社会」を実現する『ガーベラ革命』を提唱。人気政治ブログ&メルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」を発行。1998年日本経済新聞社アナリストランキング・エコノミスト部門1位。『現代日本経済政策論』(岩波書店、石橋湛山賞受賞)、『日本の独立』(飛鳥新社)、『アベノリスク』(講談社)、『国家はいつも嘘をつく』(祥伝社新書)、『25%の人が政治を私物化する国』(詩想社新書)、『低金利時代、低迷経済を打破する最強資金運用術』(コスミック出版)、『出る杭の世直し白書』(共著、ビジネス社)、『日本経済の黒い霧』(ビジネス社)、『千載一遇の金融大波乱』(ビジネス社、2023年1月刊)など著書多数。 スリーネーションズリサーチ株式会社 http://www.uekusa-tri.co.jp/index.html メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」 http://foomii.com/00050