【連載】植草一秀の「知られざる真実」

植草一秀【連載】知られざる真実/2025年9月17日 (水) 石破内閣巨大な負の遺産

植草一秀

石破内閣が日米関税交渉を置き土産にしたが、これがとてつもない負の遺産になるリスクがある。

石破首相が辞意を表明したのが9月7日。

7月20日の参院選結果は首相辞任を免れない客観情勢を示すものだった。

本ブログ、メルマガは7月21日付記事に「石破首相辞任は免れない」と明記した。

ものごとが見える為政者なら、この時点で辞意を表明しただろう。

引き際の潔さがその後の影響力維持につながる。

しかし、石破首相は最後の最後まで総理の座にしがみついた。

日本の政界を本格的に再編する覚悟があるなら、満を持して「政界大再編解散」に踏み切ればよかった。

しかし、その覚悟は足りなかった。

何より、その考えがあるなら、参院選で政界大再編の方針を明示すべきだった。

それをせず、参院選で敗北したから政界再編解散では、保身のための解散としか受け取られない。

自民党内から総裁選前倒しの要求が噴き出し、これを阻止するために前倒し要求の意思表示を記名式にした。

「踏み絵」を踏ませることにしたわけだ。

この高圧姿勢が逆効果だった。

人事権で自由意思を抑圧すると受け止められた。

8日に前倒し要求が過半を超えることが明確になって万事休す。

その直前に日米合意の署名が行われた。

日米合意成立の成果をアピールして首相続投を図ったと考えられる。

このことは、合意内容が日本の国益に反する可能性を示唆するもの。

決着を急げば足元を見られる。

足元を見られれば合意内容が不利になる。

赤澤担当相は自画自賛したが、合意内容は日本の国益を損なうものでなかったのか。

日米合意内容の文書が公開されている。

これを見る限り、日本は著しく国益を失ったと言える。

自動車関税は15%になったがTPP交渉の際の日米並行協議で決定された乗用車の関税率は2.5%。

15%の関税率は6倍の水準。

ピックアップトラックの税率は25%が維持されるとされてきたから、これは下がる。

自動車業界は25%あるいは上乗せで25%の関税率が適用されることを警戒してきたから交渉妥結を歓迎しているだろう。

しかし、自動車の優遇を買うために何を売ったのか。

これが問題だ。

決着した内容を三つに分類できる。

関税率、日本の輸入措置、日本の対米投資。

日本の輸入措置では米国産米の輸入を直ちに75%増やすことが決定された。

日本のコメ輸入保証枠であるミニマムアクセスの範囲内で米国産米の輸入を75%増やす。

これが米国産米輸入拡大の端緒となるリスクは大きいだろう。

また、米国製の軍事装備品の輸入を毎年数十億ドル規模で行うことも取り決められた。

さらに、ボーイング社航空機を100機購入すると定められた。

不可思議な取り決めだ。

航空機を購入するのは日本の民間航空会社。

エアバスにするかボーイングにするかは企業に決定権がある。

政府がボーイング社製航空機を100機購入することを約束するのは不当。

1985年8月12日に日航123便が墜落。

墜落原因は「異常外力の着力」にあったと見られるが、政府の公式見解はボーイング社の修理ミス。

ボーイングに冤罪をかぶせた疑いが強く存在する。

その冤罪を引き受けた代償として巨額の請求書が届いているということか。

最大の問題は5500億ドルの投資。

日本から米国への新たな巨額上納金が確約された疑いが濃厚だ。

石破内閣は延命のために国益を著しく損なった可能性が高い。

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植草一秀 植草一秀

植草一秀(うえくさ かずひで) 1960年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒。大蔵事務官、京都大学助教授、米スタンフォード大学フーバー研究所客員フェロー、早稲田大学大学院教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役、ガーベラの風(オールジャパン平和と共生)運営委員。事実無根の冤罪事案による人物破壊工作にひるむことなく言論活動を継続。 経済金融情勢分析情報誌刊行業務の傍ら「誰もが笑顔で生きてゆける社会」を実現する『ガーベラ革命』を提唱。人気政治ブログ&メルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」を発行。1998年日本経済新聞社アナリストランキング・エコノミスト部門1位。『現代日本経済政策論』(岩波書店、石橋湛山賞受賞)、『日本の独立』(飛鳥新社)、『アベノリスク』(講談社)、『国家はいつも嘘をつく』(祥伝社新書)、『25%の人が政治を私物化する国』(詩想社新書)、『低金利時代、低迷経済を打破する最強資金運用術』(コスミック出版)、『出る杭の世直し白書』(共著、ビジネス社)、『日本経済の黒い霧』(ビジネス社)、『千載一遇の金融大波乱』(ビジネス社、2023年1月刊)など著書多数。 スリーネーションズリサーチ株式会社 http://www.uekusa-tri.co.jp/index.html メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」 http://foomii.com/00050

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