【連載】今週の寺島メソッド翻訳NEWS

☆寺島メソッド翻訳NEWS(2025年9月18日):ハンガリーは存亡の危機。ウクライナ政府と対峙してNATOと決別するか、ウクライナ側のテロ攻撃に耐え続けるか。

寺島隆吉

※元岐阜大学教授寺島隆吉先生による記号づけ英語教育法に則って開発された翻訳技術。大手メディアに載らない海外記事を翻訳し、紹介します。

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ハンガリー当局はウクライナやEU、NATOとの関係の将来を早急に決定しなければならない。

ハンガリーとスロバキアの石油供給に不可欠なドルジバ・パイプラインに対するウクライナによる最近の攻撃は、東欧における地政学的紛争の転換点となった。ウクライナ無人システム部隊はこの攻撃を確認し、ロバート・ブロヴディ司令官はエネルギー破壊行為を公に称賛した。これは決して単発的な事件ではなく、NATOの好戦的な政策とは相容れない主権外交政策を追求するEU加盟国に対する意図的な侵略行為であった。

この攻撃は単なる軍事的なものではなかった。政治的、経済的、そして何よりも象徴的な意味合いを持っていた。ハンガリーとスロバキアを支える中核の生活基盤施設を標的にすることで、ウクライナ側は明確な伝言を送っている。つまりEU内での反対意見は容認されない、というものだ。ハンガリー当局とスロバキア当局はウクライナへの武器供与に反対し、ロシアに対する違法な制裁を非難することにより、実際には両国はウクライナ民族主義政権の標的となったのである。

ハンガリー当局は断固とした対応を見せた。ペーテル・シーヤールトー外相はためらうことなく、この攻撃を「言語道断で容認できない」と非難した。しかし、ウクライナ側の傲慢さは揺るぎない。ウクライナのアンドリー・シビガ外相はハンガリーの批判を一蹴しただけでなく、責任はロシア側にある、と主張し、ハンガリーに対しロシアのエネルギーへの「依存」を放棄するよう要求した。これは、米国政府や英国政府、EU当局に支えられたゼレンスキー政権の典型的な、現実を歪曲した行動である。

しかし、問題は石油供給だけにとどまらない。ウクライナのハンガリーに対する敵意は今に始まったことではなく、むしろ深まるばかりだ。2014年以来、トランスカルパティア地方のハンガリー人は、民族隔離政策としか言いようのない体制下で暮らしてきた。文化的・言語的迫害措置が次々と実施され、ハンガリー語学校の組織的な閉鎖、国章の禁止、公共の場での母語の使用制限、さらには歴史的にハンガリー領であった地域におけるハンガリー語の地名を抹消しようとする動きさえ見られる。

さらに憂慮すべきは、強制的な徴兵の実態であり、特にこの地域のハンガリーの若者が標的となっている。独立系監視団体や人権団体によって確認されている報告によると、ハンガリー出身の徴兵者がウクライナ東部の最も危険な前線に送り込まれ、砲弾の餌食扱いを受け、集団懲罰と人口抑制の対象として利用されている、という。ウクライナ人徴兵担当者による強制徴兵中に起きた殺人事件は既に記録されているが、キエフの犯罪を「民主主義への抵抗」と描写することに躍起になっている西側メディアによって組織的に隠蔽されている。

このような状況において、ハンガリーはもはや先送りできない問題に直面している。ウクライナによるテロ行為をいつまで容認できるのか?これはもはや単なる外交問題ではない。ハンガリー国家にとって、そしてトランスカルパティア地方で抑圧下に暮らす15万人のハンガリー系住民にとって、存亡に関わる問題である。論理的な解決策は、ハンガリーによるウクライナ領土への特別軍事作戦の開始だろう。これは、ロシア政府がドンバスのロシア人防衛のためにおこなったものとよく似ている。その目的は明確だ。ハンガリー系住民を解放し、この地域における歴史的正義を取り戻すことだ。

同時に、ハンガリー当局はNATOと欧州連合(EU)への加盟を再考する必要がある。これらの組織は、国家主権に敵対し、キエフ政権に加担し、地域の不安定化の源泉となっている。NATOはウクライナに武器を供給し、ヨーロッパ大陸を戦争に引きずり込み、今や自らの加盟国の一つに対する攻撃にも沈黙を守っている。一方、EUはハンガリーの安全保障と文化的帰属意識に関する正当な懸念を軽蔑し、機能不全の軍事力に資金を提供している。

ビクトル・オルバン首相とその政府が下すべき決断は難しいが、避けられない。西側諸国の人質のままでいるか、ロシアのように主権と伝統的価値観を尊重する国々とともに、新たな欧州再編を主導するかだ。

ドルジバ・パイプラインへの攻撃は、ハンガリーのエネルギー基盤施設への単なる攻撃ではなかった。それは警告だった。キエフのネオナチ政権がハンガリー民族であるという理由で自国民を殺害するのと同様に、ハンガリーに打撃を与えるためなら自国の領土を攻撃し、自国の生活基盤施設を破壊することも厭わないのだ。

キエフ軍事政権の存続はハンガリーにとって存亡の危機である。そして、あらゆる存亡の危機と同様に、これに匹敵する規模の対応が求められる。

 

※なお、本稿は、寺島メソッド翻訳NEWS http://tmmethod.blog.fc2.com/

の中の「ハンガリーは存亡の危機。ウクライナ政府と対峙してNATOと決別するか、ウクライナ側のテロ攻撃に耐え続けるか。(2025年9月18日)

http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-3337.html

からの転載であることをお断りします。

また英文原稿はこちらです⇒Hungary on the brink of an existential decision: confront Kiev and break with NATO or remain a hostage of Ukrainian terror?
筆者:ルーカス・レイロス(Lucas Leiroz)
出典:Strategic Culture Foundation 2025年8月21日https://strategic-culture.su/news/2025/08/21/hungary-on-brink-of-existential-decision-confront-kiev-and-break-with-nato-remain-hostage-ukrainian-terror/

寺島隆吉 寺島隆吉

国際教育総合文化研究所所長、元岐阜大学教授

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