
【櫻井ジャーナル】2025.09.20XML : イスラエルのカタール攻撃がアメリカの支配体制の崩壊を早めている
国際政治サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子はカタールのドーハでパキスタンのムハンマド・シェバズ・シャリフ首相と戦略的相互防衛協定を9月17日に締結、サウジアラビアは核兵器保有国のパキスタンと軍事的な結びつきを強めることになった。パキスタンの核兵器開発はサウジアラビアの資金で行われてきたと言われているので、その関係が顕在化したと言えるかもしれない。この合意によれば、サウジアラビアまたはパキスタンに対するいかなる攻撃も両国に対する侵略とみなされる。
両者はイスラエルが9月9日にドーハを攻撃したことを受けて15日に開催されたアラブ・イスラム緊急首脳会議に出席していた。カタールは「親米国」であり、イスラエルとも友好的な関係にあると考えられていただけに、今回の攻撃がイスラム世界に与えた影響は小さくないはず。
カタールは防空のため、「パトリオット(MIM-104 Patriot)」や「ナサムス(NASAMS)」を配備、数千人以上のアメリカ兵が駐留しているのだが、今回の攻撃でパトリオットやナサムスは反応しなかった。イスラエルが攻撃する前、アメリカ軍は「シャットダウン機能」を使って防空システムを「オフ」にしていたと噂されている。サウジアラビアはロシアの防空システムS-400に興味を示していたが、今回の攻撃でその気持ちは強まっただろう。
サウジアラビアはイラン、ロシア、中国との関係を深めてきた。サウジアラビアと中国企業は共同で91メガワットの太陽光発電所を開発中であり、またサウジアラビアの産業鉱物資源相はロシアを訪問した際、ダイヤモンド採掘会社「アルロサ」、金採掘会社「ノルドゴールド」、そしてチタン生産会社「VSMPO-アビスマ」などの幹部と会談を行したたと伝えられている。
サウジアラビアとパキスタンが協定に調印する前、イランは最高国家安全保障会議のアリ・ラリジャニ議長をサウジアラビアに派遣しているのだが、その際、今回の協定について説明を受けたかもしれない。そのイランのほか、パキスタンと同盟関係にある中国はこの協定を歓迎すると見られている。
輸入する石油の多くがサウジアラビアから来ているインドはサウジアラビアとの関係がかつてないほど強固になっている言われていたが、今回の協定は懸念材料だろう。ロシアとの関係を強化しようとするかもしれない。
8月31日から9月1日にかけて天津で開催されたSCO(上海協力機構)の首脳会議でインドはロシアや中国との緊密な関係を見せていた。ロシアのウラジミル・プーチン大統領とインドのナレンドラ・モディ首相は同じリムジンに乗って移動するなど親密さをアピール、両国の会談でロシアの通訳は英語でなくヒンディー語を使っていた。この3カ国の結びつきはパキスタンを刺激したと推測されている。
欧米諸国やイスラエルの好戦的な政策は「グローバル・サウス」を屈服させることに失敗、多極的な新世界秩序を作り出している。
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