【特集】沖縄の日本復帰50周年を問い直す

宮古島の反基地闘争の現況

清水早子

・下地島空港に付きまとう軍事利用の悲運

2015年に完成した伊良部大橋は宮古島―伊良部島―下地島を繋げている。この下地島には、島の玄関口の宮古空港とは別にもう一つの空港がある。滑走路3000m、パイロット訓練飛行場として1979年開港した管制塔は成田空港以上の機能を持つ。

1960年代後半の建設計画当初から米軍の軍事利用が懸念され、島を二分する反対運動が起こり、「基地なし復帰」を求める復帰運動の高揚の中で、当時の琉球政府の屋良朝苗主席が日本政府と1971年に交わした覚書が、「下地島空港は沖縄県の管理空港であり、軍事利用しない」と確認した「屋良覚書」である。しかし、開港以来今までに給油を口実にした米軍ヘリの飛来は300回を超えている。

2001年5月、アメリカの国防総省系シンクタンクのランド研究所は、「下地島空港は軍事的要衝」と報告している。03年小泉政権下の有事法制反対運動、イラク反戦運動の中、05年頃から防衛大綱・中期防にて島嶼防衛が語られ、防衛族が暗躍し宮古島への陸自配備の情報が流れ始めた。

伊良部大橋の完成で下地島空港と宮古島が繋がる時が危ないと私たちは語り合っていたがその通り、15年1月架橋、5月15日に当時の左藤章防衛副大臣が宮古島市長下地敏彦に通知しに訪れ、私たちのミサイル基地建設に反対する新たな運動が始まった。

自衛隊誘致の動向は下地島空港から始まったのだが、島の軍事要塞化の総仕上げも下地島空港ではないか?

これまでも、米軍普天間基地の代替候補にあがったり、F35戦闘機の訓練場として取りざたされたり、1979年の開港以来40年以上軍事利用の動向に翻弄されて来たのは3000mの滑走路を持つが故の悲運である。

翁長雄志県政の頃の「下地島空港の利活用公募」から選ばれて三菱地所が空港ターミナルを建設し、今はLCC航空会社の便が飛んでいるが、一方、PDエアロスペース社が2025年に有人宇宙旅行へと航空機を飛ばし、下地島空港を「宇宙港」にする計画だと報道されている。
那覇空港のように軍民共用にならないか? 日米共同作戦計画が明らかになった今は、米軍のHIMARS(高機動ロケット砲)の配備も懸念される。

・コロナ禍でも次世代兵器に血税をつぎ込む防衛省

安倍政権から菅政権への置き土産は「土地規制法」という悪法だけではない。イージスアショアの計画撤回と引き換えのように登場してきた「敵基地攻撃能力」保有論。これは菅政権から岸田政権へと引き継がれた。

北朝鮮が「超音速ミサイル」を飛ばしただの、中国が「極超音速ミサイル」実験をしただのと日本のメディアはかまびすしく報道するが、日本も「超高速滑空弾」の研究開発と、位置情報を米国に提供するための準天頂衛星の運用に血税の投入を惜しまない。

しかも、この「超高速滑空弾」は宮古島の地対艦ミサイルに運用するのだと報道された。この「滑空弾」の中間誘導に準天頂衛星みちびきのシステムが利用される。準天頂衛星7機の管制局は7局のうち5局は種子島、久米島、沖縄島恩納村、宮古島、石垣島と、琉球弧の島々である。19年4月に開催された日米安全保障協議委員会(日米「2+2」)で衛星みちびきに米軍のSSA監視センサーを搭載することが決められた。

・宮古島空自レーダー基地の重要性

米国は19年12月に米国宇宙軍を編成し、日本でも20年5月に航空自衛隊の部隊として宇宙作戦隊が発足した。宇宙での戦争を担う初めての部隊となった。まさに、宇宙空間の軍事利用でも、日米一体化である。今後は「サイバー戦争」の時代でもある。宮古島の航空自衛隊レーダー基地の重要性こそ実は大きい。

最新鋭のFPS7レーダー(強い電磁波を放出している)や国際的なスパイレーダーである地上波傍受施設(J/FLR-4A)の他、地下30mまで、3階構造で延べ面積800坪の地下室が作られている。この地下室は隊員用「シェルター」の可能性があるが、住民には秘匿されている。

・米軍の再編、2021年「とんでもないクリスマスプレゼント」

中国のミサイル能力向上で、米軍による空海域の優位性確保が難しくなっており、海兵隊は新作戦「遠征前方基地作戦(EABO)」を打ち出している。小規模に編成された海兵隊部隊が、離島の自衛隊基地を攻撃拠点にして移動を繰り返しながらミサイル攻撃し、味方の艦船の展開を支援するという作戦。海兵隊はこれまでの「殴り込み部隊」からその性格を変えるのだ。

その戦略のもと、21年10月~12月現在、自衛隊3万人と米軍5800人の大規模な共同の戦争訓練が実施された。台湾有事に挑発的な事態を引き起こす実戦訓練である。洋上では大規模訓練が多国間で行われ、国内では民間の船や鉄道などの輸送手段を使って軍事兵器を北海道の自衛隊第12師団から、九州へと運輸、集結させる実戦訓練を戦後最大規模で行った。

そして12月24日のクリスマスイブに、共同通信配信の報道で「南西諸島(の離島)に米軍が台湾有事で攻撃拠点を設けることを日米共同作戦計画で策定することが明らかになった」と沖縄県紙トップで大きく伝えられた。米軍の戦略「EABO」への再編の情報は周知の事実だったが、防衛省も一体化の事実の公然化に踏み切った。離島が戦場になる危機が加速した。米中の攻防の最前線である琉球弧の離島は、否応なくその戦闘・戦禍に巻き込まれる。

「住民を避難させる余力は自衛隊にはないので自治体にやってもらうしかない」などと自衛隊制服組の幹部は語っている。南の島々の海に囲まれた各自治体がどのようにして住民避難や保護を行うことができるというのだ。種子島から与那国島にいたる島々の百数十万人を超える住民は打ち棄てられる。

12月26日、この報道に呼応するようにNHKは「台湾有事」を特集した。「戦争」が刷り込まれようしている。人々を潜在的な不安に陥れ、軍備増強を正当化することが、暗に意図されているかのようだ。

続く軍事(戦争)訓練

 

ミサイル車両訓練

 

琉球弧の島々で始められる「有事」に、日本全土が無傷でいられるはずはない。戦争に向かう日本社会の空気を、政治経済、私たちが拠って立つあらゆる領域で変えて行かなければならない。

 

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清水早子 清水早子

1995 年、進学塾講師として関⻄より宮古島教室へ赴任。宮古島の子どもたちと向き合い、反戦活動や持ち上がる基地問題への取り組みを地元の市⺠と共に続けている。ミサイル基地いらない宮古島住⺠連絡会事務局⻑、宮古島ピースアクション実行委員会代表。

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