【連載】櫻井ジャーナル

【櫻井ジャーナル】2025.10.07XML : 米国防総省の戦略に従って戦争の準備を進めている日本に右翼キャラの首相誕生へ

櫻井春彦

 イスラエルがアメリカを巻き込み、イランを再び攻撃するのではないかと言われている。

 

アメリカのドナルド・トランプ大統領は6月22日、イスラエルの要請に基づき、7機のB-2爆撃機でイランの核施設へ合計14発のGBU-57爆弾を投下した。大統領はイランの核開発を止めたと主張したのだが、アメリカのDIA(国防情報局)は計画を数カ月遅らせたに過ぎないと評価、その情報を有力メディアが伝えた。その情報漏洩に怒ったトランプ大統領はDIAの局長を務めていたジェフリー・クルーズ中将を8月22日に解任したが、DIAの分析は正しいと見られている。

 

6月13日未明にイスラエルはイランを攻撃、イラン軍のモハメド・バゲリ参謀総長やイラン革命防衛隊(IRGC)のホセイン・サラミ司令官やゴラム・アリ・ラシド中央司令部司令官を含む軍幹部、そして核科学者のモハンマド・メフディ・テランチやフェレイドゥーン・アッバシなど6名以上の核科学者を殺害した。この攻撃では親イスラエル派として知られているアメリカ中央軍のマイケル・E・クリラ司令官が重要な役割を果たしたとも推測されている。

 

イスラエル軍のエフィー・デフリン報道官によると、イスラエル軍は200機の戦闘機を用いて100以上の標的を攻撃したというが、要人の殺害は、テヘラン周辺に作られた秘密の基地から飛びたったドローンが使われたようだ。ウクライナがロシアで使用した戦術と似ている。

 

それに対し、イランは6月13日夜、イスラエルに対する報復攻撃を実施、テル・アビブやハイファに大きなダメージを与えた。モサドの司令部や軍情報部アマンの施設、イスラエルの核開発計画でも中心的な役割を果たしてきたワイツマン研究所も破壊された。

 

そうした状況を隠すためにイスラエル政府は戦争に関するあらゆる報道を禁止、イランのミサイル攻撃や被害の画像や動画を投稿した者は敵幇助罪で起訴し、長期の懲役刑に処すると脅迫したが、漏れた。

 

イスラエルにはイランの核開発施設を破壊する能力がないことが明確になり、アメリカ軍が乗り出すことになったのだが、その攻撃でも目的を達成することはできなかった。また攻撃するとするならば、投下するバンカー・バスター爆弾の数をさらに増やさなければならないが、それでも成功するかどうかは不明だ。しかもイランではロシアによる核開発計画が進んでいる。軍事力による破壊と殺戮で中東各国を威圧してきたイスラエルだが、イランを相手にした戦争で限界が明確になった。

 

しかもイスラエルはパレスチナで非武装の住民を大量虐殺、そうしたイスラエルに対する怒りの声は世界中に広がり、ヨーロッパでは抗議活動の激しさが増している。

 

2023年10月7日から24年6月30日までの間にガザで殺害された住民の数をガザの保健省は3万7877人だとしていたが、​医学雑誌「ランセット」はその期間にガザで外傷によって死亡した人数の推計値を6万4260人としている​。しかも女性、18歳未満、65歳以上が全体の59.1%だとする論文を発表した。

 

「ハーバード大学学長およびフェロー」のウェブサイト「データバース」に掲載されたヤコブ・ガルブの報告書によると、2023年10月7日にイスラエル軍とハマスの戦闘が始まる前には約222万7000人だったガザの人口が、ガルブによると、現在の推定人口は185万人。つまり37万7000人が行方不明だ。​ガザは事実上の強制収容所であり、住民が逃走した可能性は小さい。つまり殺された可能性が高いと言える。

 

この大量殺戮はイギリスの侵略計画から始まっている。1838年、イギリス政府はエルサレムに領事館を建設。その翌年にはスコットランド教会がパレスチナにおけるユダヤ教徒の状況を調査している。イギリスの首相を務めていたベンジャミン・ディズレーリは1875年にスエズ運河運河を買収したが、この運河も「ユダヤ人の国」と関係があると言えるだろう。運河買収の資金を提供したのは友人のライオネル・ド・ロスチャイルドだ。(Laurent Guyenot, “From Yahweh To Zion,” Sifting and Winnowing, 2018)

 

パレスチナに「ユダヤ人の国」を建設する第一歩と言われる書簡、いわゆる「バルフォア宣言」をアーサー・バルフォアがウォルター・ロスチャイルドへ出したのは1917年11月のこと。

 

イギリスは1920年から48年の間パレスチナを委任統治、ユダヤ人の入植を進めたが、1920年代に入るとパレスチナのアラブ系住民は入植の動きに対する反発を強めた。

 

そうした動きを抑え込むため、デイビッド・ロイド・ジョージ政権で植民地大臣に就任したウィンストン・チャーチルはパレスチナへ送り込む警官隊の創設するという案に賛成、アイルランドの独立戦争で投入された「ブラック・アンド・タンズ」のメンバーを採用した。

 

この組織はIRA(アイルランド共和国軍)を制圧するために設立されたのだが、殺人、放火、略奪など残虐さで有名だった。イングランドでは、ピューリタン革命を指揮したオリバー・クロムウェルの軍隊がアイルランドを軍事侵略、大量虐殺している。17世紀の半ばのことだ。

 

今回のガザでの虐殺は2023年10月7日にハマスをはじめとする武装勢力がイスラエルを攻撃したところから始まった。その際、ハマスの戦闘員は1200名のイスラエル人を殺されたとされたが、​イスラエルのハーレツ紙によると、イスラエル軍は侵入した武装グループを壊滅させるため、占拠された建物を人質もろとも砲撃、あるいは戦闘ヘリからの攻撃で破壊している​。イスラエル軍は自国民の殺害を命令したというのだ。いわゆる「ハンニバル指令」である。

 

この攻撃には伏線がある。2023年4月1日にイスラエルの警察官がイスラム世界で第3番目の聖地だというアル・アクサ・モスクの入口でパレスチナ人男性を射殺、4月5日にはイスラエルの警官隊がそのモスクに突入、ユダヤ教の祭りであるヨム・キプール(贖罪の日/今年は9月24日から25日)の前夜にはイスラエル軍に守られた約400人のユダヤ人が同じモスクを襲撃。そしてユダヤ教の「仮庵の祭り」(今年は9月29日から10月6日)に合わせ、10月3日にはイスラエル軍に保護されながら832人のイスラエル人が同じモスクへ侵入している。イスラム教徒に対する挑発を繰り返したのである。

 

そして襲撃の直後、ベンヤミン・ネタニヤフ首相は「われわれの聖書(キリスト教における「旧約聖書」と重なる)」を持ち出し、パレスチナ人虐殺を正当化している。

 

聖書の中でユダヤ人と敵だとされている「アマレク人があなたたちにしたことを思い出しなさい」(申命記25章17節から19節)という部分を彼は引用、「アマレク人」をイスラエルが敵視しているパレスチナ人に重ねたのである​。

 

その記述の中で、「アマレク人」を家畜と一緒に殺した後、「イスラエルの民」は「天の下からアマレクの記憶を消し去る」ことを神は命じたというわけだ。「アマレク人」を皆殺しにするという宣言だが、このアマレク人をネタニヤフたちはアラブ人やペルシャ人と考えている可能性がある。

 

サムエル記上15章3節には「アマレクを討ち、アマレクに属するものは一切滅ぼし尽くせ。男も女も、子供も乳飲み子も牛も羊も、らくだもろばも打ち殺せ。容赦してはならない。」と書かれている。これこそがガザでイスラエルによって行われていることだと言えるだろう。ネタニヤフによると「われわれは光の民であり、彼らは闇の民」なのである。ネタニヤフは8月23日、ナイル川からユーフラテス川に至る大イスラエルを創設するという「歴史的かつ精神的な使命」を宣言している。だからこそ、ネタニヤフはイランを攻撃したがっているのだ。そうした行為や計画を欧米諸国は支援してきた。

 

イギリスが始めた帝国主義的な計画に、狂信的なシオニストのカルト的な信仰もパレスチナ問題には関係している。

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