【連載】櫻井ジャーナル

【櫻井ジャーナル】2025.10.08XML : ウクライナで米露の関係悪化につながると言われているトマホークを日本は配備

櫻井春彦

 ここにきてアメリカ軍もレンジャー部隊の隊員がロシア軍の攻撃で死亡したというが、ドナルド・トランプ米大統領はウクライナを舞台としたロシアとの戦争から距離を置こうとしている。戦死者の報告はイギリスやフランスの方が多く、ウクライナにおけるロシア軍とは英仏が中心になって戦えという姿勢をアメリカは見せている。

 

トランプ大統領は英仏をはじめとするヨーロッパ諸国に対し、ウクライナへ兵器を売るので代金を支払うように求めている。戦況は以前からNATO/ウクライナが劣勢だが、ここにきてロシア軍が進撃するスピードが速まっている。ロシアは経済も順調だ。

 

しかし、トランプ大統領の発言が迷走していることも否定できない。その原因のひとつはウクライナ担当大統領特使を務めているロシアを蔑視するネオコンのキース・ケロッグ中将。この軍人はネオコンの一員として知られる好戦派で、ロシア蔑視の感情が強い。

 

ケロッグはロシア蔑視の感情が生み出す幻影の中で生きているため、事実が見えていない。ロシア軍は戦場で苦戦し、経済は崩壊の瀬戸際にあると主張、トランプ大統領もその判断に基づく発言を続けてきた。ロシアは軍需も民需も生産力は向上、経済は順調だ。泥沼の中へ引き摺り込まれたのはアメリカを含むNATO諸国。ドイツの自動車産業は壊滅的な状況だ。

 

これまでNATOはウクライナに対し、「ゲーム-チェンジャー」と称する兵器を供与してきた。アメリカ製の「M1エイブラムズ」、イギリス製の「チャレンジャー2」、ドイツ製の「レオパルト2」といった戦車のほか、F-16戦闘機、ATACMS(陸軍戦術ミサイル・システム)ミサイル、空中発射型巡航ミサイルのストームシャドウ、HIMARS(高機動ロケット砲システム)など。

 

ここにきて検討していると言われ始めたのは核弾頭を搭載できる巡航ミサイルのトマホーク。J・D・バンス米副大統領は9月28日、アメリカがNATO加盟国へトマホークを提供し、その後、それをウクライナへ供給することを検討していると語った。

 

このミサイルで戦況が一変するとは思えないが、核戦争へ近づくとは言え、ロシア政府は挑発と判断するだろう。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、アメリカがウクライナにトマホーク・ミサイルを供給する決定を下した場合、ロシアとアメリカとの関係を悪化させる可能性があるとしている。

 

トマホーク以外のミサイルでも言えることだが、NATOが提供したミサイルをウクライナだけで使用することはできない。衛星や地上で集めた情報、その情報の分析、ミサイルを誘導する衛星のシステムなどが必要だからだ。

 

日本もトマホークと無縁ではない。アメリカ国防総省系のシンクタンク「RANDコーポレーション」が2022年4月に発表した報告書で説明されているように、アメリカ軍はGBIRM(地上配備中距離弾道ミサイル)で中国を包囲する計画を彼らは持っている。

 

その計画に基づき、自衛隊は2016年に与那国島でミサイル発射施設を建設、19年には奄美大島と宮古島、そして23年には石垣島でも施設を完成させた。

 

2022年10月に「日本政府が、米国製の巡航ミサイル『トマホーク』の購入を米政府に打診している」とする報道​があり、23年2月に浜田靖一防衛相はトマホークを一括購入する契約を締結する方針だと語った。その年の10月には木原稔防衛相がアメリカ国防総省でロイド・オースチン国防長官に対し、トマホークの購入時期を1年前倒しすることを決めた伝えられている。

 

 

9月26日に自衛隊の駆逐艦「ちょうかい」がアメリカのサンディエゴへ向かって出航した。これは艦船を改修してトマホークの発射能力を獲得させ、来年夏頃まで実射試験を実施、その一方で乗員を訓練するためだという​。

 

こうした日本の動きロシアや中国を刺激していることは間違いないだろう。最近の動きを見ると、すでに中露は対応し始めている。日本はアメリカがついていると思っているかもしれないが、トランプ政権は中国との戦争にも消極的になってきた。ネオコンの影響下にある日本の政治家や官僚に微妙な舵取りができるのだろうか?

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