レイチェル・クラーク:【「唯一の被爆国」という表現について、一考】

レイチェル・クラーク

爆風、熱風、放射能の3つの被害を被った人たちを被爆者(火偏)と書くのはご存知でしょうか? 読み方は同じでも、放射能被害だけの場合は被曝者(日偏)と書きます。

米国が意図的に武器として攻撃に使った結果、3つの要素を全て被ってしまったのが広島と長崎の被爆者の方々です。

核兵器・核エネルギー問題に関わるようになってから、どうしてもこの「唯一の被爆国」という表現、これで被害が広島と長崎、国際的に見ると日本に限定されてしまうことにとても違和感を感じるのです。「被爆」国は日本でも、「被曝」国は世界中にあり、「被曝」者も世界中で増えています。

「人工知能(AI)」という切り口から、この被曝について書かせていただきます。

「AI」がまるで水戸黄門の葵の御門のように、あるいはトランプゲームのオールマイティーカードのように、民間でも軍事でも大手を振って何でもできるかの如く扱われているような時代だからこそなおさら、私たちは次の二つの点に真っ向から向き合わなければいけないと思います:一つは「放射能問題」と「ヒバクシャ」が世界中に存在するということ、もう一つはAIの急激な需要の伸びによる原発の再稼働や新設問題に目をつぶらされていること、メディアが全く取り上げないことです。

AI のためのデータセンターでは、膨大な量の電力とこれまた膨大な量の冷却用水が消費されます。AI を優先するために原発の危険性と農業用水・飲料水の不足をこのまま放置してはいけません。もちろん原発の危険性には、核兵器用のプルトニウムの増産と保管の危険性という地球の存続そのものに関わる大問題も含まれます。

もうそろそろ「唯一の」という表現をやめませんか? 「放射能被害・水不足・プルトニウムの増産」と「AIのデータセンター」との関連を、「唯一の」ではなく世界中の「みんなが共有する問題」として受け止めませんか? AIの便利さだけを享受してこの問題に目を向けないことは人道に反する罪です。

「唯一の」と言い続けることで、日本はこの人道的な罪に知らず知らずと加担してしまっているのではないでしょうか?

そのために、マジョリティーのヒバクシャにもっとスポットライトを当てていただきたいのです。マジョリティ−ヒバクシャの数は、もちろん被爆者の数を凌駕します。そして何世代にもわたって放射能障害に苦しんでおり、その数はますます増え続けると思います。ウランの採掘・抽出・加工・使用(研究・開発も含む)それらの間の輸送から核廃棄物に至るまでの全ての過程と、風下や下流域にヒバクシャが存在し、その被害をきちんと法的に認められないまま放置されています。

今こそその人たちの実態を精査し、被爆者と同様の補償を求める声に耳を傾けるべきです。そしてその被害を起こした企業も国家政府も、誠意のこもった謝罪をし、補償責任を負うべきです。

– – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – –

★ISF(独立言論フォーラム)「市民記者」募集のお知らせ:来たれ!真実探究&戦争廃絶の志のある仲間たち

※ISF会員登録およびご支援のお願いのチラシ作成しました。ダウンロードはこちらまで。
ISF会員登録のご案内

「独立言論フォーラム(ISF)ご支援のお願い」

レイチェル・クラーク レイチェル・クラーク

日系米国人、通訳・コンサルタント・国際コーディネイター ベテランズフォーピース(VFP) 終身会員 核のない世界のためのマンハッタンプロジェクト メンバー 2016年以来、毎年VFP ピース・スピーキングツアーをコーディネイトし、「戦争のリアル」を米国退役軍人が日本に伝える事によって、平和・反核・環境保護活動につなげている。

ご支援ください。

ISFは市民による独立メディアです。広告に頼らずにすべて市民からの寄付金によって運営されています。皆さまからのご支援をよろしくお願いします!

Most Popular

Recommend

Recommend Movie

columnist

執筆者

一覧へ