
【櫻井ジャーナル】2025.10.16XML :イギリスだけでなく、バルト三国やポーランドもロシアとの戦争を望んでいた
国際政治アンゲラ・メルケル元ドイツ首相はハンガリーのニュース・ポータル「パルチザン」に対し、ウクライナをめぐる安全保障上の懸念を解決するためにロシアと交渉しようとした彼女の試みについて語った。その試みは2021年のことだが、バルト三国(ラトビア、リトアニア、エストニア)は支持せず、ポーランドも反対、2022年2月24日の開戦に繋がったという。この4カ国はロシアとの戦争を望んでいたということだろう。
アメリカのジョー・バイデン政権は就任直後からロシアを挑発、戦争へ向かった。調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュによると、バイデン大統領は2021年後半にジェイク・サリバン国家安全保障補佐官を中心とする対ロシア工作のためのチームを編成、その中には統合参謀本部、CIA、国務省、そして財務省の代表が参加している。そのチームが考えた工作のひとつがノード・ストリームの爆破だった。2022年1月27日にビクトリア・ヌランド国務次官は、ロシアがウクライナを侵略したらノード・ストリーム2を止めると発言、2月7日にはバイデン大統領がノード・ストリーム2を終わらせると主張、記者に実行を約束する。
バイデン、サリバン、ヌランドはバラク・オバマ政権にも入っていた。バイデンは副大統領、サリバンは副大統領の国家安全保障担当補佐官、ヌランドは国務次官補だった。このチームは2013年11月から14年2月にかけての時期にネオ・ナチを使い、キエフでクーデターを実行、ビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒している。2016年の大統領選挙でトランプがヒラリー・クリントンに負けていたなら、そのままウクライナでロシアとの戦争に突入していた可能性が高い。
2022年2月の開戦はバイデン政権の思惑通りだったのだろうが、すぐにイスラエルやトルコを仲介役とする停戦交渉が始まる。
その足でベネットはドイツへ向かってオラフ・ショルツ首相と会っているのだが、その3月5日にSBU(ウクライナ保安庁)のメンバーがキエフの路上でゼレンスキー政権の交渉チームで中心的な役割を果たしていたデニス・キリーエフを射殺した。CIAの命令だと考えるべきだろう。
停戦交渉はトルコ政府の仲介でも行われ、やはり停戦でほぼ合意に達している。その際に仮調印されているのだが、「ウクライナの永世中立性と安全保障に関する条約」と題する草案をプーチン大統領はアフリカ各国のリーダーで構成される代表団が2023年6月17日にロシアのサンクトペテルブルクを訪問した際に示している。
こうした和平の流れを止めるため、2022年4月9日にイギリスの首相だったボリス・ジョンソンがキエフへ乗り込み、ロシアとの停戦交渉を止めるよう、ウォロディミル・ゼレンスキーに命令した。(ココやココ)
アメリカ海兵隊の元情報将校でUNSCOM(国連大量破壊兵器廃棄特別委員会)の主任査察官を務めたスコット・リッターが製作したドキュメンタリーによると、ゼレンスキーはイギリスの対外情報機関、MI6のエージェントであり、そのハンドラー(エージェントを管理する担当オフィサー)はムーアMI6長官だと推測されている。イギリス政府の命令には絶対服従ということだ。バルト三国やポーランドもイギリスの影響下にあるのかもしれない。
リッターは1991年から98年にかけてUNSCOM(国連大量破壊兵器廃棄特別委員会)の主任査察官を務めたアメリカ海兵隊の元情報将校で、ジョージ・H・W・ブッシュ米大統領が2003年3月、アメリカ主導軍にイラクを先制攻撃させた際、攻撃を批判していた。ブッシュ政権は攻撃を正当化するため、イラクが今にもアメリカを大量破壊兵器で攻撃するかのように宣伝していたのだが、根拠がないとしていた。
ブッシュ・ジュニア政権を助けるため、イギリスのトニー・ブレア首相は2002年9月、「イラク大量破壊兵器、イギリス政府の評価」というタイトルの危機感を煽る報告書を作成している。いわゆる「9月文書」だ。これはメディアにリークされ、サン紙は「破滅から45分のイギリス人」というセンセーショナルなタイトルの記事を掲載している。
しかし、イラクに対する侵略戦争が始まって2カ月後の2003年5月、BBCの記者だったアンドリュー・ギリガンはラジオ番組で、大量破壊兵器の話は粉飾されていると語った。サンデー・オン・メール紙で彼はアラステアー・キャンベル首席補佐官が情報機関の反対を押し切って「45分話」を挿入したと主張した。
この話にブレア政権は激怒、イギリス国防省で生物兵器防衛部門の責任者を務めるデイビッド・ケリーが情報源だということを突き止めた。ケリーは情報機関から尋問を受け、その名前は7月9日にメディアへリークされる。7月15日にケリーは外務特別委員会へ呼び出され、17日に変死した。公式発表では手首の傷からの大量出血や鎮痛剤の注入が原因で、自殺だとされているが、手首の傷は小さく、死に至るほど出血したとは考えにくい。
しかもケリーは古傷のため、右手でブリーフケースを持ったりドアを開けたりすることもできなかった。右肘に障害があったのだが、それは1991年12月に落馬、骨折したことで生じた。ケリーは折りたたみ式のナイフを携帯していたのだが、右手の問題で刃を研ぐことが困難で、その切れ味は悪かった。(Miles Goslett, “An Inconvenient Death,” Head of Zeus, 2018)
ブッシュ・ジュニアは2003年の一般教書演説の中でイラクのサダム・フセインがアフリカから相当量のウラニウムを入手しようとしていると主張しているが、そうした事実がないことを知っているジョセフ・ウィルソン元駐ガボン大使はショックを受け、ニューヨーク・タイムズ紙で明らかにした。(The New York Times, July 6, 2003)
イラクがニジェールからイエローケーキを購入することで合意したという覚書が2002年初頭に流れたのだが、CIAからその中身の真偽を調べて欲しいと彼は要請され、調べていたのだ。その結果、情報は正しくないということが確認されていた。
2003年当時、ドイツの首相はゲアハルト・シュレーダー、フランスの大統領はジャック・シラク。ふたりともブッシュ・ジュニアの戦争に反対、参加しなかった。ドイツでは次のアンゲラ・メルケルもある程度はアメリカに抵抗していたが、オラフ・ショルツは腑抜け、フリードリヒ・メルツはネオコンの操り人形にすぎない。フランス大統領のエマニュエル・マクロンもメルツと同じだ。メルツやマクロンの政策はヨーロッパ経済を衰退させ、社会を破壊しているが、彼らを操っている勢力はそうしたことを気にしない。
【Sakurai’s Substack】
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のテーマは「 イギリスだけでなく、バルト三国やポーランドもロシアとの戦争を望んでいた」(2025.10.16XML)
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