植草一秀【連載】知られざる真実/2025年10月25日 (土) サナエノミクスの失敗明白
社会・経済間違った経済政策論議が続く。
2012年12月に誕生した第2次安倍内閣。
この内閣が提示した経済政策が自称「アベノミクス」。
内容は
財政出動
金融緩和
成長戦略。
発足した高市内閣がアベノミクスを継承する方針を示す。
しかし、アベノミクスは失敗している。
失敗したアベノミクスを模倣するのだから失敗は目に見えている。
私は2013年6月にアベノミクスを検証する
『アベノリスク』(講談社)
https://x.gd/u9mZn
を上梓した。
第2次安倍内閣は「成長戦略」を掲げて日本経済の成長力を高めるとしたが日本経済の成長力は高まらなかった。
2009年9月から2012年12月まで民主党政権が存在した。
この期間の実質GDP成長率単純平均値は年率1.6%だった。
2013年第1四半期から2025年第2四半期までの実質GDP成長率単純平均値は0.9%。
民主党政権時代の成長率はその後の自公政権時代の1.8倍。
アベノミクスで日本の経済成長率はまったく上昇しなかった。
逆に民主党時代から半減した。
金融緩和を担ったのが黒田東彦日銀。
安倍内閣は「インフレ誘導」を目標に掲げた。
私はこの目標設定自体が間違いだと指摘した。
インフレは企業と政府に利益を与え、国民に不利益を与えるもの。
黒田日銀は2年以内に消費者物価上昇率を2%以上に引き上げることを「公約」として掲げた。
私は日銀がインフレ目標を達成するのは難しいと予測した。
そして、その予測は的中した。
黒田日銀がインフレ誘導に失敗したことは日本国民にとっては幸いだった。
インフレは国民に百害あって一利のないものだからだ。
しかし、2020年2月にコロナパンデミックが発生して資金繰り融資が激増して状況が変わった。
日銀はインフレが顕在化した場合にはインフレ抑止の政策に転換しなければならないが、黒田日銀はインフレ見通しを誤り、インフレが進行するなかでインフレ誘導の旗を振り続けた。
黒田氏は23年3月の任期満了までインフレ誘導の旗を振り続け、日本で4%インフレを引き起こしてしまった。
この2年間、日本の経済政策論議の中心は何だったか。
「物価高対策」である。
起こしてはならないインフレを引き起こし、その結果として国民が経済困窮に追い込まれた。
これを何とかしなければならない。
これが「物価高対策」の意味。
したがって、金融政策がインフレ抑止を目的に引き締め方向で運営されるべきことは当然である。
他方、アベノミクスの下で一時的に積極財政が実行されたが一瞬で終わった。
安倍内閣は2014年と2019年に二度の消費税増税を強行して日本経済を撃墜した。
アベノミクスではなくアベコベノミクスだった。
黒田日銀の金融超緩和政策は激しいインフレを引き起こしただけではなく日本円暴落を招来した。
この日本円暴落で日本は存亡の機に立たされている。
いま何をすべきかは明白だ。
インフレと円暴落を是正するための金融引き締め政策と経済を支えるための財政政策緩和が必要不可欠。
インフレ・円安が深刻な状況下での金融緩和政策は問題を拡大させるだけ。
金融を引き締め、財政を緩和する。
初歩のマクロ経済政策論議。
これすら理解できないようでは日本経済の再建は覚束ない。
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植草一秀
植草一秀(うえくさ かずひで) 1960年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒。大蔵事務官、京都大学助教授、米スタンフォード大学フーバー研究所客員フェロー、早稲田大学大学院教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役、ガーベラの風(オールジャパン平和と共生)運営委員。事実無根の冤罪事案による人物破壊工作にひるむことなく言論活動を継続。 経済金融情勢分析情報誌刊行業務の傍ら「誰もが笑顔で生きてゆける社会」を実現する『ガーベラ革命』を提唱。人気政治ブログ&メルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」を発行。1998年日本経済新聞社アナリストランキング・エコノミスト部門1位。『現代日本経済政策論』(岩波書店、石橋湛山賞受賞)、『日本の独立』(飛鳥新社)、『アベノリスク』(講談社)、『国家はいつも嘘をつく』(祥伝社新書)、『25%の人が政治を私物化する国』(詩想社新書)、『低金利時代、低迷経済を打破する最強資金運用術』(コスミック出版)、『出る杭の世直し白書』(共著、ビジネス社)、『日本経済の黒い霧』(ビジネス社)、『千載一遇の金融大波乱』(ビジネス社、2023年1月刊)など著書多数。 スリーネーションズリサーチ株式会社 http://www.uekusa-tri.co.jp/index.html メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」 http://foomii.com/00050


















