【第423回】ノーベル平和賞2025(ヴェネズエラ反政府活動家)への疑問 2025-10-31

浜地道雄

筆者(浜地)は長年(2014年~)「9条の会と日本被団協にノーべル平和賞を」とNomination(推薦)活動をしてきた(裏方)。

【第378回】2024/10/11 ノーベル平和賞2024は日本被団協に授与 | ISF独立言論フォーラム

2018年7月ノーベル平和賞記念館(オスロ)にて
そして、ついに、昨2024年、10月11日(金)、ノルウエー時間午前11時(日本時間18時)、ノーベル委員会(オスロ)が「日本被団協=日本原水爆被害者団体協議会 NIHON HIDANKYO」に授与と発表した(オスロ)。

授与式はA.ノーベルの命日12月10日、オスロのCity Hallで行われた。

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感無量である。

さて、本2025年、10月10日、ノーベル平和賞はヴェネズエラの反政府活動家Maria Corina Machadoマチャド女史に授賞と発表された(オスロ)。

2013年からマドウロ政権と野党との対立が続き、選挙不正の疑惑等をめぐるデモ隊と治安部隊の死衝突や野党関係者への弾圧、経済の低迷等が深刻だ。

各紙はマチャド氏について、ノーベル委員会が「勇敢な自由の擁護者」と称えていることを伝えている。確かに、「独裁政権から民主主義への平和的移行」を求め活動してきたマチャド氏は、一見、ノーベル平和賞に相応しいようにも思える。

 

が、これに対して「きわめて不適切」「これではノーベル平和賞は平和を標榜できない」とCodePink(WDCを中心に世界で活動する女性平和活動団体)のヴェネズエラ系アメリカ人Michelle Ellner女史からネット発出された強い論考が入ってきた。

When Maria Corina Machado Wins the Nobel Peace Prize, “Peace” Has Lost Its Meaning. – CODEPINK – Women for Peace

それによると:

マチャド氏は20002年のクーデターで指導的な役割を果たし、そのクーデターは民主的に選ばれた大統領を追放した。彼女は米国政府と緊密に連携し、「体制転覆」を正当化するために活動し、自身の発信力を利用して、外国の軍事介入を主張した。

彼女はトランプ米大統領による侵攻の脅迫や、カリブ海への海軍派遣を支持した。トランプが軍艦を送り、資産を凍結するなかで、マチャド氏はその現地代理人として仕える準備を整え、ヴェネズエラの主権を銀の盆に載せて差し出すと約束した。

彼女は、いわゆる「暫定政府」を作り上げるのにも関与した。ワシントンが支援するその「傀儡劇」は、国外のヴェネズエラ資産を略奪した。

彼女はエルサレムにあるヴェネズエラ大使館を再開することを誓い、病院を爆撃して「自衛」と称する同じアパルトヘイト国家と公然と歩調を合わせている。

即ち、極めてトランプ米大統領に近い言動であることである。

さて、ヴェネズエラはじめ中南米の政治・経済・外交事情に疎い筆者(浜地)は、折しも10月22日に開催された、明治学院大学PRIME国際平和研究所における「ヴェネズエラ研究会」に参加し、同国における社会システムなどを学ぶことができた。

https://prime1986.meijigakuin.ac.jp/events/events20251022/

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講師:
イシイ大使大使講演・流ちょうな日本語 (撮影許可済)
セイコウ・イシカワ氏(駐日ベネズエラ大使)
西谷修氏(東京外国語大学名誉教授)

司会:
日置一太氏(テレビプロデューサー、NHKGメディア、PRIME研究員)

 

当然、ノーベル平和賞2025についての言及(批判)もあったが、「研究会(勉強会)」ということであり、激しい論調ではなかった。
が、歴史的に米国による中南米政策(武力攻撃)を知ることができた。

現下の一例としては。ヴェネズエラから米国に向かう船舶を確たる証左がないまま「麻薬運搬」と断定し、トランプ米大統領はCIAに「攻撃命令」を出し、結果的に多くの犠牲(死者)を出している。

又、100人近い聴衆の中にはキューバ大使らが(講師としてではなく)聴衆として参加していた。即ち、この問題(米国による介入、侵略)は一人ヴェネズエラの問題ではなく広くカリブ海域の中南米諸国の問題であるということが察せられる。

さて、この「ノーベル平和賞2025→マチャド氏」について、ノールウエイ平和諮問会Norway Peace Council*は次の決定を発出した(10月24日)。

*同諮問会は17のノールウエイ平和団体と15,00人の平和活動からなる。

Norwegian Peace Council Will Not Celebrate María Corina Machado’s Nobel Peace Prize

ノーベル平和賞授賞にあたり毎回実施してきた「松明行列」という祝いの行事を今回については行わない。

その理由はマチャド氏への授賞は基本的価値観が異なる、という意思表示だ。

 

さあ、これにて「ノーベル平和賞2025のマチャド氏への授賞の疑問を提示した筆者(浜地)の主張は正当と励まされる。

これらの流れは、しかし、日本ではあまり知られておらず、大手メディアの報道解説が待たれる。

 

本記事は、浜地道雄「異目異耳」【第423回】ノーベル平和賞2025(ヴェネズエラ反政府活動家)への疑問 2025-10-31  の記事の転載になります。


 

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浜地道雄 浜地道雄

国際ビジネスコンサルタント。1965年、慶応義塾大学経済学部卒業。同年、ニチメン(現・双日)入社。石油部員としてテヘラン、リヤド駐在。1988年、帝国データバンクに転職。同社米国社長としてNYCに赴任、2002年ビジネスコンサルタントとして独立。現在、(一財)グローバル人材開発顧問。「月刊グルーバル経営」誌にGlobal Business English Fileを長期連載中。

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