【連載】植草一秀の「知られざる真実」

植草一秀【連載】知られざる真実/2025年11月12日 (水) 国を誤る大政翼賛の扇動

植草一秀

歴史を振り返ると正論は少数派であったことが多い。

日本が無謀な戦争に突き進んだときに異を唱えた人は存在した。

しかし正しい主張は「反日・非国民」として弾圧された。

日本が欧米に対抗して大陸進出を推進したときに真逆の「小日本主義」を唱えた石橋湛山は完全なる少数勢力だった。

数の論理で真実を見極めるのは正しくない。

真実は少数の主張、少数の指摘のなかに宿っていることが少なくない。

日本は中国に隣接している。

そもそも日本の文化・文明の多くは中国大陸から伝来したものが多い。

日本の淵源、日本の心のふるさとは中国にあると言って過言でない。

本来、日本が中国と近隣友好関係を構築するべきことは論を俟たない。

しかし、近年、反中国の空気が蔓延している。

また、外国人に対する差別的感情が扇動されている。

しかし、一口に外国人と言っても千差万別。

外国人差別、外国人排斥の主張が示されるとき、アングロサクソンの白人が含まれていることは少ない。

肯定しないが排外主義を主張するならアングロサクソンの白人を含めなければダブルスタンダードだ。

私たちが取るべき対応は歴史の真実に基づくこと。

真実に基づかない主張は弱い。

真実に基づく主張に太刀打ちできない。

真実に基づかない暴論をかざしても最終的には負ける。

だから、真実に即した考察、議論を行うことが重要だ。

国会質疑で台湾有事で存立危機事態になるのかの質問に対して高市首相が存立危機事態になり得ると答弁して議論が沸騰している。

多くは高市首相の主張は正しいと主張する。

しかし、その精緻な論理構成の上に組み立てられている言説を見ない。

観念的、情緒的な主張が大半だ。

インターネットのニュース・ポータルサイトに掲載される言説の圧倒的多数は高市氏を擁護して高市氏批判を批判するものになっている。

商業メディアが提供する論説記事の背後に資本投下がある。

「金の力」で言論空間が特定方向に誘導されている。

「存立危機事態」とは日本が集団的自衛権を行使する事由として設定されたもの。

本来、日本国憲法は集団的自衛権行使を認めないものとして解釈されてきた。

政府が公式見解として「集団的自衛権の行使は認められない」としてきた。

1972年10月に政府見解が明文化されて示された。

50年以上にわたり、この政府見解が憲法の一部を成してきた。

その憲法解釈を2014年に安倍内閣が勝手に変えた。

その上で、「安保法制」なるものが制定された。

そのなかで、集団的自衛権を行使できる条件として提示されたのが「存立危機事態」である。

「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある」

場合に集団的自衛権行使が必要最小限度認められるとした。

解釈改憲は許されるものでなく、その許されない解釈改憲に基づく立法も許されない。

これが正当な見解であろう。

この論議を横に置いて「存立危機事態」を考察するときに、台湾で武力衝突が生じた場合、とりわけ、米国と中国が交戦状態に陥る場合に、日本の「存立危機事態」と言えるのかどうか。

台湾海峡が封鎖されても船舶は台湾海峡を避けて航行できる。

したがって、台湾有事が日本の「存立危機事態」になるとは考えられない。

それにもかかわらず、高市氏は台湾での武力衝突の事態は日本の存立危機事態に十分なり得るとの見解を述べた。

この発言は極めて重大である。

集団的自衛権の行使とは中国に対する宣戦布告そのものであるからだ。

中国が猛烈な反応を示すのは順当。

中国に肩入れする、日本に肩入れする、といった偏向した視点から考察するのではなく、客観的、中立、公平な立場から考察することが何よりも大切だ。

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植草一秀 植草一秀

植草一秀(うえくさ かずひで) 1960年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒。大蔵事務官、京都大学助教授、米スタンフォード大学フーバー研究所客員フェロー、早稲田大学大学院教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役、ガーベラの風(オールジャパン平和と共生)運営委員。事実無根の冤罪事案による人物破壊工作にひるむことなく言論活動を継続。 経済金融情勢分析情報誌刊行業務の傍ら「誰もが笑顔で生きてゆける社会」を実現する『ガーベラ革命』を提唱。人気政治ブログ&メルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」を発行。1998年日本経済新聞社アナリストランキング・エコノミスト部門1位。『現代日本経済政策論』(岩波書店、石橋湛山賞受賞)、『日本の独立』(飛鳥新社)、『アベノリスク』(講談社)、『国家はいつも嘘をつく』(祥伝社新書)、『25%の人が政治を私物化する国』(詩想社新書)、『低金利時代、低迷経済を打破する最強資金運用術』(コスミック出版)、『出る杭の世直し白書』(共著、ビジネス社)、『日本経済の黒い霧』(ビジネス社)、『千載一遇の金融大波乱』(ビジネス社、2023年1月刊)など著書多数。 スリーネーションズリサーチ株式会社 http://www.uekusa-tri.co.jp/index.html メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」 http://foomii.com/00050

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