植草一秀【連載】知られざる真実/2025年11月16日 (日) 低劣さ突出サンデージャポン
社会・経済TBSの放送番組のなかで「報道特集」や「サンデーモーニング」などは比較的良質なものだが「サンデージャポン」は見るに堪えない俗悪番組。
11月16日放送で高市首相の「存立危機事態」発言を取り上げた。
コメンテーターとして出演する杉村太蔵氏は国会で立憲民主党の岡田克也氏が存立危機事態と認識する具体的ケースについて高市首相に質問したことを批判した。
岡田克也氏の見識が高いとは思わないが、国会で野党議員が集団的自衛権行使に関する質問を高市首相にぶつけることに問題はない。
50年以上にわたって日本政府が憲法解釈上容認できないとの見解を明示してきた集団的自衛権の行使を2014年に安倍内閣が独断で容認した。
50年以上にわたり維持してきた憲法解釈は憲法の一部をなす。
その変更には正規の憲法改正手続きを踏むことが必要。
勝手な解釈変更で憲法の実体上の意味を変更することが許されるなら憲法は意味を失う。
自衛権行使は日本が戦争を行うということであり、
「国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆され」
かねない。
解釈壊憲で集団的自衛権行使の要件として「存立危機事態」が定められたが、いかなる場合に「存立危機事態」と認定されるのかは、日本国民が戦争に巻き込まれるのはいかなる場合なのかとの意味を有し、極めて重要かつ本質的な問題だ。
高市首相が首相就任前に存立危機事態に関して論評をしてきた事実があり、その考えが首相就任後も不変であるのかどうか等を質すことは国民にとっても重要事項。
高市首相が「台湾有事が日本の存立危機事態に該当する可能性がある」ことを明言して重大な外交問題に発展している。
問題を引き起こしたのは高市首相であって質問者ではない。
岡田議員が上記の背景がある問題について質問することは批判されるべきものでない。
杉村太蔵氏の能力の問題ではあるが、ものごとの本質を捉えずに、ただ単に与党自民党の側に立って野党を攻撃する姿勢はあまりにも低劣。
このようなコメントを発することによって杉村太蔵という人物は与党自民党にとって利益になる発言をするためだけに番組に出演しているとの印象が番組視聴者全員に鮮明に埋め込まれたと思われる。
著しく偏向するコメンテーターは公共の電波を占有する放送番組において有害無益だ。
こうした意見が噴出するだろう。
ただし、この傾向は杉村氏に限ったものでなく「サンデージャポン」全体の特徴。
番組MCの太田光氏が偏向の象徴で、こうした低質で害悪の多い放送番組は廃棄されることが望ましい。
公共電波を用いる放送番組であるなら、高市発言がなぜ外交問題に発展するのかにつき、歴史事実を掘り下げて考察することが必要不可欠。
日本は中国と国交を正常化した際に「一つの中国」と「台湾の中国帰属」を正式に認めた。
したがって、台湾有事は日本にとって「中国の内政問題」である。
高市首相の発言は
台湾有事=日本の存立危機事態=集団的自衛権行使=中国への宣戦布告
という意味を持つものであり、日本が中国に明示した「一つの中国」、「台湾の中国帰属」との外交上の歴史事実と矛盾する。
このことから中国が強い反発を示していることを説明することが必要。
それがメディアの本来の役割だ。
「サンデージャポン」はこの考察を一切示さずに、小泉進次郎防衛相の国会答弁が進化したとの意味不明の礼賛報道を展開。
こんな番組を制作するからメディアがマスゴミと揶揄される。
日本のメディアに求められることは過去の歴史事実の明示と解説だ。
日中両サイドからさまざまな論評が示されているが、その適否を評価するには、過去の歴史事実の検証が不可欠だ。
事実確認なく情緒的に賛否の見解を煽ることは有害無益。
燃焼しやすい低質なナショナリズムに冷水を浴びせるには歴史事実の正確な検証が必要不可欠。
歴史事実に照らして高市首相の発言が適正でないと判断されるなら、日本の首相といえども、首相発言に対して是正を求める見識を示すことが必要
それが「社会の木鐸」とされるメディアの役割だ。
日本のメディア劣化は目を覆うばかりの惨状に堕している。
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植草一秀
植草一秀(うえくさ かずひで) 1960年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒。大蔵事務官、京都大学助教授、米スタンフォード大学フーバー研究所客員フェロー、早稲田大学大学院教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役、ガーベラの風(オールジャパン平和と共生)運営委員。事実無根の冤罪事案による人物破壊工作にひるむことなく言論活動を継続。 経済金融情勢分析情報誌刊行業務の傍ら「誰もが笑顔で生きてゆける社会」を実現する『ガーベラ革命』を提唱。人気政治ブログ&メルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」を発行。1998年日本経済新聞社アナリストランキング・エコノミスト部門1位。『現代日本経済政策論』(岩波書店、石橋湛山賞受賞)、『日本の独立』(飛鳥新社)、『アベノリスク』(講談社)、『国家はいつも嘘をつく』(祥伝社新書)、『25%の人が政治を私物化する国』(詩想社新書)、『低金利時代、低迷経済を打破する最強資金運用術』(コスミック出版)、『出る杭の世直し白書』(共著、ビジネス社)、『日本経済の黒い霧』(ビジネス社)、『千載一遇の金融大波乱』(ビジネス社、2023年1月刊)など著書多数。 スリーネーションズリサーチ株式会社 http://www.uekusa-tri.co.jp/index.html メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」 http://foomii.com/00050


















