【連載】今週の寺島メソッド翻訳NEWS

☆寺島メソッド翻訳NEWS(2025年11月22日):連中は真実など欲しくない。真実は嘘の壁を破る者なのだから。:ロシアのラブロフ外相がイタリアの主要紙「コリエル・デラ・セラ」紙から検閲を受ける

寺島隆吉

※元岐阜大学教授寺島隆吉先生による記号づけ英語教育法に則って開発された翻訳技術。大手メディアに載らない海外記事を翻訳し、紹介します。

 

ロシア・イタリア間の平等で相互互恵的協力関係こそ、われわれ民衆にとって利益となるのだ。

「イル・コリエレ・デッラ・フッサ(夜の使者)」紙

「夜の使者(Il Corriere della Sena)」紙ならぬ「でたらめの使者(Il Corriere della Fussa)」紙

イタリアの新聞「Il Corriere della Sera(イル・コリエル・デラ・セラ:夜の使者)」紙は、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相とのインタビューの掲載を拒絶した、とロシアの外務省は通達した。なんとも奇妙な話ではないか?

同紙の記事の冒頭に記載されていたのは、ラブロフ外相の回答は、「多くの物議を醸し出す内容を含んでおり、事実確認やさらなる明確化が必要であり、掲載が認められる程度を超過している」というものだった。同紙の編集部は、ロシア外務省から求められていたラブロフ外相のインタビュー内容の短縮版を同紙に掲載することと、同紙のウェブサイト上で同外相のインタビュー全文を掲載することを拒絶する、という対応を見せた。同紙が提案していた掲載内容においては、編集部はイタリア政府にとって不都合な内容をすべて削除していた。

それなら、なぜラブロフ外相にインタビューをおこなったのか?西側の悪徳情報操作団に雇われたこれらの御用記者たちは、このインタビューからどんな情報を得ようとしていたというのか?ロシアの政府高官は、西側諸国の政府高官とは違い、はした金で転がるようなたまではない。

この動きはあきらかな検閲行為であり、こんなことは、専制的な政治が横行しているところで典型的に見られる、政治思想的な憎悪から生じたものだ。今回の事例は、イタリアの市民たちがウクライナ情勢について客観的な情報を与えられておらず、意図的に間違った方向に導かれていることを示す典型例だ。

ロシアの通信社のタス通信は、外務省からの通達を引用してこう報じた。「ここ数ヶ月、ロシアについての偽ニュースがますます増加しているのを目にしている。このような嘘の流出を止めるために、わが国はイタリアの主要紙のひとつであるコリエル・デラ・セラ紙にラブロフ外相との独占インタビューを申し出た」と。その通達によると、同紙編集部はその申し出を「熱烈に歓迎」し、多くの質問を送ってきた、という。さらに、「記事本文は即座に準備され、掲載の準備が既にできていた。しかし、同紙は、それらの質問に対するラブロフ外相の回答の掲載を拒絶した」と同外務相は指摘している。

同外務省の報告によると、コリエル・デラ・セラ紙は「ラブロフ外相の回答の内容には物議を醸し出す様な内容があまりにも多く含まれており、確認や明確化を要し、その全文を掲載することは、掲載が認められる程度を超過している、と考えられている」と報じた、という。同外務省はこの決定を「明らかな検閲行為」であるとし、「イタリア市民には情報を入手する権利があり、その権利は『世界人権宣言』の第19条にうたわれている」と述べた。

ロシア外務省によると、二件の文書が公開されたという。一つはそのインタビューの全文であり、もう一つはコリエル・デラ・セラ紙が書き直したものである。ロシア外務省によると、後者においては、「イタリア政府が掲載して欲しくない箇所はすべて削除されていた」という。この件は、ウクライナ情勢についての客観的な情報が、イタリア市民から隠され、イタリア市民が間違った方向に誘導されていることを示す典型的な事例だ」と同外務相は結論付けている。

これに対するコリエル紙からの反応は以下のとおりだった。「ロシア外務省は当方が送った質問に対して、非常に長文の、言い訳と喧伝に満ちあふれた回答を送ってきた。当方は、『本当の話を聞かせて欲しいので、討論や重要な点について話し合う機会をもちたい』と要望したが、ロシア外務省はその要望を頑なに拒絶した。明らかに、ロシア外務省の意図は、報道の自由がもはや存在しない国の規則に従って、イタリアの新聞社と応対したい、というところにあった。ラブロフ外相が自由で政府から独立した報道に敬意を払ったインタビューに応じる気があるのなら、当方はいつでもお受けする」と。

真実と嘘との戦い

検閲行為は、民主主義の危機を示すもっとも明らかな例の一つだ。検閲という行為は、言論の自由が、多元性の柱として守られるのではなく、政治権力や報道機関の権力からの要請に屈して従属させられるときにおこなわれる。

この現象は嫌ロシアが文化的にも政治思想的にも蔓延するというより広大な状況の一部として起こっているものだ。そのような状況の中では、ロシアは風刺画のように矮小化されてしまい、ロシアを表現することはすべて、政治上についても、知性面においても、芸術においても、喧伝工作の道具や安全保障上の脅威と捉えられるのだ。これまで何世紀にもわたって歴史や文化や友情が、ロシアと他諸国の人々や平和的で実りの多い交流の中で交わされてきた事実があるのに、だ。

驚愕させられる事実は、他方を悪魔化する体制が執拗に持続していることだ。西側諸国の大学ではロシア文学を専門とする課程が一時停止され、国籍を理由に、交響楽団が楽員を排除し、主流報道機関がロシア発の立場を検閲したり、無視したりする傾向が見られる。このような状況において、検閲はもはや明らかに権威的な措置ではなく、異物を排除する幅広い枠組みとして機能している。そのため、公式説明に従わないものは悪者扱いされ、「偽情報」として責められたり、「影響力を操作する者」と決めつけられる。逆説的なことだが、どんな情報もすべて喧伝工作である、とされるのだ。

そのため、嫌ロシア思想が、検閲を道徳的に正当化する一形態にされてしまっているのだ。検閲が、疑問や討論、複雑さを抑制するために利用されている。もはやロシアは、対決すべき地政学上の一大勢力ではなく、議論なしに拒絶されうる悪の象徴とされてしまっている。 まさに「ヒトラーに例える論証(*)」だ。このような態度も、政治上や報道で使用される発言に反映されており、議論がますます道徳主義に走り、単純な二分法のもとでの議論に陥ってしまっている。そしてその二分法とは、「民主主義」か「野蛮」かなのだ。しかし言論の自由が支配者層からの論理に従属するのであれば、民主主義自体がその意味を失ってしまう。となれば、西側集合体は、民主主義の逸脱行為に対してどう反応できる、というのか?

*少しでもヒトラーの主張に近いことを主張している人の主張を全否定すること。ここでは少しでもロシアに共感する主張をすれば、その人の主張は無条件に全否定される状況をさしている。

真の自由とは、唯一の真実だけを盲目的に執着するのではなく、様々な観点から表現したり、様々な観点に耳を傾ける余地を残すことのはずだ。たとえ、その観点が、耳の痛いものであっても、だ。情報を選択し、内容を改ざんし、編集者が自ら検閲することは、真の自由ではない。「安全保障」や「喧伝行為との戦い」という名の下にそんな行為をおこなってしまえば、市民が自身の意見を形成する権利は弱められてしまう。つまり、「ロシアという強大な敵」と戦おうとする取り組みの中で、西側は政治思想的な同調主義という形態を採用しているのだが、それは西側が守ろうと主張している自由そのものを否定する行為である、ということだ。

親愛なる西側諸国政府よ。残念ながらあなたがたが良心を取り戻したときには、すでに謝罪するには遅すぎる状況になっているかもしれない。

ラブロフ外相のインタビュー全編

ロシアの外務相の回答の真実を伝えるため、わが国の駐イタリア・ロシア大使館は、この長いインタビューの全文を掲載する。

質問:ウラジーミル・プーチンとドナルド・トランプのブダペストでの新たな会談が実施されなかったのは、あなたがたロシア側がウクライナ問題については交渉に応じない姿勢を米国政権が認識したためだ、と言われています。真の和平交渉の開始への期待が高まったアンカレッジ首脳会議の後、何がうまくいかなかったのでしょうか?なぜロシアは2024年6月にウラジーミル・プーチン大統領が示した要求に固執しているのでしょうか?どの件について妥協を望みますか?

回答:アンカレッジ合意は、ウクライナでの恒久的な平和に繋がる重要な一歩となりました。この合意は、2014年2月にキエフで起こった不当な流血の武力政変の結果生じた状況を乗り越えるものでした。実は、この武力政変を組織したのは当時のオバマ政権だったのです。アンカレッジ合意は戦場の現状に基づいたものであり、ウクライナ危機の公平で持続可能な条件と非常に軌を一にするものです。そしてその条件は、2024年6月にウラジミール・プーチン大統領が提起したものです。わが国は、これらの条件が、公にもドナルド・トランプ政権に届き、理解されたものである、と考えていました。特に、ウクライナのNATO非加盟という条件については理解されたもの、と考えていました。ウクライナがNATOに加入すれば、ロシアにとって国境地帯の戦略的軍事脅威になるという状況も、です。さらに米国側は、領土問題のことは無視して通れないことを公に了解していました。それは、歴史的に見てわが国の領土である5つの地域でおこなわれた住民投票の結果を踏まえてのことです。これらの地域の住民たちはウクライナ政府から独立した自決権を求めることを明確に訴えていました。いっぽうウクライナ政府はこれらの住民を「亜人間」「ただの存在物」や「テロリスト」と呼んでいました。ですので、住民たちはロシアに再統合されることを望んでいたのです。

米国の概念は、まさに安全保障と領土の現実という主題に基づいて構築されたものです。その概念は、アラスカでの首脳会議の1週間前、米国大統領ドナルド・トランプ政権のスティーブ・ウィットコフ特使によってモスクワに持ち込まれました。ウラジーミル・プーチン大統領がアンカレッジでトランプ大統領に語ったように、わが国はこの概念を基盤としつつ、その実現への道を開く具体的な一歩を提案することに同意しました。米国の指導者は「協議が必要だ」と答えましたが、翌日ワシントンで同盟国と会談した後も、アラスカ首脳会議前にモスクワでスティーブ・ウィットコフ大使が提示した提案に対する私たちの肯定的な反応に対しては何の返答もありませんでした。9月にニューヨークでマルコ・ルビオ国務長官と会談した際でさえ、返答を待っていると伝えても返答はありませんでした。米国の担当者が自分たちの考えを決められるように、私たちはアンカレッジ協定を非公式に書面で提出し、ワシントンに送付しました。数日後、ドナルド・トランプ大統領の要請のもと、同大統領はウラジーミル・プーチン大統領と電話で会談し、その中でブダペストでの新たな会合を組織することに合意し、事前に慎重に準備することに合意しました。アンカレッジ協定が議論されることは間違いありませんでした。数日後、私はマルコ・ルビオ国務長官と電話で話し、その後米国側はその会話を建設的だった(確かに真剣で有益なものでした)と評し、この会話の後、同国務長官とロシア連邦大臣による首脳会談準備のための個人的な会談は不要である、と発表しました。米国指導者がブダペスト首脳会議を延期または取りやめにするきっかけとなった機密報告書がどこから、誰から得られたのかは分かりません。しかし、私は正確な方法で出来事の順序を伝えることについて、全責任を負います。しかし、ロシア側が「交渉を拒否している」という明らかな虚偽情報やアンカレッジの結果が「失敗」だった、という指摘に応じるつもりはありません。フィナンシャル・タイムズ紙の報道を参照してください。私の知る限り、同紙はこの虚偽の情報を広め、すべての責任をロシア側に押し付け、ドナルド・トランプ大統領自身が提案した道、すなわち即時停戦ではなく、安定的かつ持続的な平和という道からトランプ大統領を遠ざけようとしています。ゼレンスキー大統領を支配している欧州の支配者層は、停戦を実現し、ウクライナのナチス政権にロシアとの戦争を継続するための武器を供給したいという欲望に取り憑かれています。そして、トランプ大統領にもそうするよう促しています。BBCが、トランプ大統領の演説映像を偽造することで、いかにもトランプ大統領が議会議事堂への攻撃を呼びかける言葉を口にしたよう報じているのですから、フィナンシャル・タイムズ紙が嘘をつくことはもっと簡単なことでしょう。わが国は、アラスカで綿密に練り上げられた成果を真の基準とするのであれば、ブダペストで第2回米露首脳会議を開催する準備は依然としてあります。しかし、その日程はまだ決まっていません。ロシアと米国の接触は続いています。

質問:ロシア連邦の軍が抑えている領土は、いわゆる特別軍事作戦の最初の数週間後、2022年時点よりも今の方が狭くなっています。本当に勝っているなら、なぜ決定的な一撃を与えられないのですか?また、なぜ損失に関する公式な情報を提供しないのかも説明していただけますか?

回答:特別軍事作戦(SMO)は領土を巡る戦争ではなく、何世紀にもわたりこの地に住み、キエフ軍事政権が法的に歴史、言語、文化を禁止し、西側の武器を用いて物理的に絶滅させようとしてきた何百万人もの人々の命を救うための作戦です。特別軍事作戦のもう一つの根本的な目的は、NATOやEUが西側国境に敵対的な傀儡国家を作ろうとする計画を確実に阻止することにあります。そしてその傀儡国家は、ナチス思想に基づく法と実践に基づいているものです。わが国がファシストやナチスの侵略者を止めたのはこれが初めてではありません。第二次世界大戦中もそうでしたし、今回もそうなるでしょう。

西側諸国が都市地区全体を破壊したのとは異なり、わが国は民間人も軍人も守っています。わが国の軍隊は最大限の責任感を持って行動し、軍事目標および関連する交通・エネルギー基盤施設に対する精密攻撃のみを実施しています。

通常、戦場での損失について公に話すことはありません。今年、戦没兵士の帰還の一環として、ロシア側は9000体以上のウクライナ軍兵士の遺体を引き渡したことを申し上げます。わが国はウクライナから143体の自軍兵士の遺体を受け取りました。その状況から導かれる結論は、ご自分でお出しください。

質問:アンカレッジでの首脳会談でプーチン大統領が、「USSR」と書かれたスウェットシャツを着て登場したことで、多くの疑問が投げかけられました。かつてのソ連領(ウクライナ、モルドバ、ジョージア(旧称グルジア)、バルト三国)を再創造、あるいは回復したいという貴国の願望を示すもの、と見る人もいました。あれは暗号化された伝言だったのでしょうか、それともただの冗談のつもりだったのでしょうか?

回答:私は生まれ育った国を誇りに思っています。そこで質の高い教育を受け、外交官としての経歴を始め、今も続けています。ロシアはよく知られているように、ソ連の後継者であり、全体としてわが国は千年の歴史を持つ文明を誇っています。古代ノヴゴロドの民衆政府は、西側諸国が民主主義を試みるずっと前から存在しています。ちなみに、ロシア帝国の紋章が入ったTシャツも持っていますが、それは「ロシア帝国を復活させたい」という意味ではありません。わが国が誇りに思う最大の資産の一つは、ロシア国民と国内のすべての民族の統一と結束という偉大な歴史を通じて、国家を発展させてきたこと、さらには国家の強化を継続してきたことにあります。ウラジーミル・プーチン大統領は最近、国民統一デーの祝賀の中でこの話題に触れました。火のないところに政治的な煙を探さないでください。西洋では愛国心や祖国への忠誠心が消えつつあるかもしれませんが、わが国にとってはそれが遺伝子の一部なのです。

質問:特別軍事作戦の目的の一つは、ウクライナをロシアの影響圏に戻すことだったのではないですか?例えば、貴国がウクライナの兵器保有量の確認を要求されていたことなどから、そう思えるのですが、そうであるとすれば、現在の武力紛争の結果がどうなろうと、この紛争のせいで、ウクライナ側に明確な国際的役割と帰属意識を与えることになってしまい、ウクライナをロシアからますます遠ざける状況を作り出してしまっている、とはお考えになられませんか?

回答:特別軍事作戦の目的は2022年にプーチン大統領によって定められ、今日でも重要な意味を持ち続けています。具体的には、勢力圏の問題ではなく、ウクライナの中立、非同盟、非核保有の地位への回帰、人権の厳格な遵守、そしてロシア民族およびその他の少数民族のすべての権利の遵守にあるのです。まさにこれらの約束は1990年のウクライナ独立宣言と憲法に明記されており、まさにこれらの宣言を念頭に置いてロシアはウクライナ国家の独立を認めたのです。わが国は、ウクライナが国家としての健全で安定した起源に回帰することを達成しており、その前提は、NATO(および急速に攻撃的な軍事同盟へと変貌を遂げつつある欧州連合)による軍事搾取のために自国の領土を屈服的に譲渡することを拒否し、ニュルンベルクで禁止されたナチス思想から浄化され、ロシア人、ハンガリー人、そして他のすべての民族的少数民族の完全な権利の回復です。ブリュッセルのエリートたちが、キエフ政権をEUに引き込みながら、「非先住民」(キエフが何世紀もウクライナに住むロシア人を軽蔑的に呼ぶ)に対する露骨な差別に沈黙しつつ、ゼレンスキー軍政を「ヨーロッパ的価値観」の擁護者として称賛していることは重要です。これはナチズムがヨーロッパで台頭しつつあることをさらに裏付けています。ここに考えさせられる材料があります。特に国連では、ドイツとイタリア、そして日本が最近、ナチズムを美化することの許容できないという国連総会の年次決議に反対票を投じ始めました。そのことを踏まえるとなおさらそう考えさせられるのです。

西側諸国は、ウクライナを通じてロシアに対する代理戦争を事実上おこなっていることを隠さず、その戦争は「現在の危機の後でも終わらない」とまで言っています。この問題はNATOのマーク・ルッテ事務総長、キーア・スターマー英国首相、EU当局のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長とカヤ・カラス副委員長、そして米国大統領配下のウクライナ特使キース・ケロッグ氏によって何度も議論されています。ロシアが、西側が支配する政権の助けを借りて生み出された脅威に対して自国の安全を確保しようとする決意は正当かつ妥当なものであることは明らかです。

質問:米国はウクライナにも武器を送っており、最近ではウクライナ側へのトマホーク巡航ミサイルの供給の可能性についても議論しています。なぜあなたは、米国と欧州とでは、対露政策の立場が違っているとお考えになり、違う評価を示しておられるのですか?

回答:現在、欧州諸国のほとんどの政府が、いわゆる「意欲ある連合」の中核を形成しています。その中核が望むものはただ一つ。ウクライナでの敵対行為をできるだけ長びかせ、「最後のウクライナ人まで」戦わせることです。明らかに、各国政府には、悪化した国内の社会経済的問題から有権者の注意をそらす他の方法がないようです。ヨーロッパの納税者の資金で、各国政府はキエフのテロ政権に資金を提供していますが、その武器でロシア地域に住む民間人や戦争から逃れたいウクライナ人、ナチによって処刑される人たちが殺されているのです。各国政府は、和平の試みを妨害し、ロシア側と直接接触することを拒否しています。各国政府は絶えず新たな「制裁」を導入していますが、それがブーメランのように返ってきて、自国の経済にさらに深刻な打撃を与えることになっています。各国政府はロシアに対する新たな大規模なヨーロッパでの戦争の準備を公然とおこなっています。各国政府は米国政府に対し、誠実で公正な外交的解決を受け入れないよう説得しています。

各国政府の主な目的は、当初対話を支持し、ロシアの立場を理解し、平和的かつ持続的な解決を模索する意志を示していた現米政権の立場を揺るがすことにあるのです。ドナルド・トランプ大統領は繰り返し公に、ロシアがこのような特別軍事作戦を起こした原因の一つがNATOの拡大であり、NATOの軍事基盤施設がわが国の国境に接近していることにあることを認めています。これはまさにプーチン大統領とロシアが過去20年間警告してきたことです。わが国は、常識とこの原則的な立場の遵守が米国当局内で優勢となり、この紛争を新たな段階にまで激化にさせる行動を控える道を選ぶことを信じています。

とはいえ、我が軍はウクライナ軍に供給される武器の出所を区別しません。それがヨーロッパ製か米国製かを問わず、です。軍事目標は即座に破壊されます。

質問:あなたはヒラリー・クリントン氏が推した方向に対して「リセットボタン」を押した、ということですね。求めていた結果は得られなかったようですが。そんな中で、ヨーロッパとの関係再開は可能でしょうか?共通の安全保障という概念は現在の関係改善の肥沃な土壌になり得るのでしょうか?

回答:ヨーロッパの支配者層の無謀で近視眼的な政策によって引き起こされた紛争は、ロシアの選択ではありませんでした。現在の状況はわが国の国民の利益にかなうものではありません。多くの欧州政府は、激しい反ロシア政策を追求しており、この破壊的な道の危険性を認識することが望ましいです。ヨーロッパはかつてすでにナポレオンの旗の下で戦い、100年前にはヒトラーのナチスの旗と戦いました。一部のヨーロッパの指導者は記憶力が短いようです。このロシア嫌悪的な怒り――他に言いようがない――が過ぎ去ったら、わが国は連絡を取り、かつての友好国が将来どのように振る舞うつもりかに耳を傾けるようになるでしょう。その時にのみ、誠実な協力の見込みがまだ残っているかどうかが判断できます。

2022年まで存在していた欧州・大西洋のもとでの安全保障体制は、西側自身の力によって完全に信用を失い、解体されてしまいました。

この点に関して、ウラジーミル・プーチン大統領はユーラシアにおける新たで公平かつ分割不能な安全保障体制の構築を目指す取り組みを提唱しました。その取り組みはヨーロッパ側を含む大陸のすべての国に開かれていますが、そうするために必要なのは他国に対して敬意をもつことです。新植民地主義的な傲慢さを持ってはいけないのです。平等や相互配慮、利益の均衡の原則に基づくべきなのです。

質問:ウクライナでの武力衝突とその後のロシアの国際的孤立は、中東など他の危機地域でより効果的に行動することを妨げているのでしょうか?

回答:もし歴史的な意味での西洋がある勢力から孤立することを決めたなら、それは自己隔離です。そして今回も、その内部はそれほどまとまっていません。今年、ウラジーミル・プーチン大統領は米国やハンガリー、スロバキア、セルビアの指導者と会談しました。また、現代世界は西洋の少数派に限られていないことも明らかです。多極化の到来とともに、その時代は終わりました。世界人口の85%以上を占める南部および東部諸国との関係は拡大し続けています。9月にはロシア大統領が中国を国賓訪問し、ここ数ヶ月だけでもウラジーミル・プーチン大統領はSCOやBRICS、CIS(独立国家共同体)、ロシア・中央アジアの首脳会談に参加し、わが国の政府の高官代表団はAPECやASEAN首脳会談に参加し、現在はG20首脳会談の準備を進めています。ロシア・アフリカおよびロシア・湾岸協力会議の閣僚首脳会談や会合が定期的に開催されています。世界の大多数の国は、かつての植民地大国の命令ではなく、自国の根本的な国益に導かれています。

アラブの友人たちは、中東の地域紛争解決に向けたロシアの建設的な貢献に感謝しています。国連でのパレスチナ問題に関する現在の議論は、すべての影響力のある外部勢力を巻き込む必要があることを確認させています。そうでなければ、持続的な成果はなく、表面的な儀式に過ぎません。多くの国際問題において、わが国の立場は中東の友人たちと一致または非常に近いものであり、それが国連や他の多国間協力体制内での協力を促進しています。

質問:あなたが推進し支持している新しい多極世界秩序において、ロシアの中国への経済的・軍事的依存が増大し、中国政府との歴史的な同盟関係に不均衡が生じていると思いませんか?

回答:わが国は多極的な世界秩序を「推進」しているわけではありません。確かに多極的な世界秩序は形成されつつありますが、それは、征服や奴隷制、抑圧、搾取によって形成されているのではありません。かつて植民地支配者(そして後の資本主義)が「秩序」を築いた時とは違います。協力や相互利益の考慮、参加国間の比較競争優位と統合構造の組み合わせに基づく合理的な労働分配を通じて形成されるものなのです。

ロシアと中国の関係については、これは伝統的な意味での同盟ではなく、より効果的で先進的な交流の形態です。私たちの協力は同盟関係ではなく、第三国を標的にしたものでもありません。冷戦時代に形成された同盟に典型的な「指導者」と「従属者」というカテゴリーはここでは適用されません。したがって、「不均衡」について語ることは不適切です。

ロシア側と中国側の平等で自立した関係は、相互の信頼と支援、そして何世紀にもわたる良好な隣国関係の伝統に基づいたものです。わが国は内政不干渉の原則を固く守っています。

ロシアと中国の貿易、技術、投資協力は両国に具体的な実務的利益をもたらし、両国の経済の安定的かつ持続可能な成長に貢献し、国民の福祉を向上させるものです。両国の軍同士の緊密な協力は重要な補完性を確保し、両国が世界の安全保障と戦略的安定の分野で国益を守り、新たに続く課題や脅威に効果的に対抗する助けとなるものです。

質問:イタリアはロシアにとって「敵対的」な国なのでしょうか。あなた自身も2024年11月に何度もそう繰り返し、わが国がそうであることを特に強調されていました。しかし、ここ数か月、ウクライナ問題を含めて、わが国の政府は米国政権との連帯を示しています。ウラジーミル・プーチン大統領が「同盟国」ではなく、「間違いなく友好国である」と表現しているその米国と、です。そして最近の駐イタリア・ロシア大使が交代したことは、イタリア政府がロシア側とある程度の和解を望んでいることを示唆する事例です。ロシアとイタリアの二国間関係の現状はどうなっているとお考えですか?

回答: ロシアには敵対的な国や民族はありません。ただ、敵対的な政府を持つ国々があることは事実です。そういう意味では、現在のローマ政権のもとでは、ロシア・イタリア関係は戦後史上最も深刻な危機に直面している、と言えます。これはわが国が一方的に考えていることではありません。イタリアが自国の国益を犠牲にして、ロシアの「戦略的敗北」に賭ける勢力に簡単に味方したことには驚きました。これまでのところ、イタリア政府が見せるこの攻撃的な態度に大きな変化は見られません。イタリア政府はキエフのネオナチに全面的な支援を提供し続けています。市民社会間の文化的結びつきや接触を断ち切ろうとしている点もまた印象的です。イタリア当局は著名なロシアの指揮者やオペラ歌手の公演を中止し、イタリアで始まり、ユーラシアの協力問題に特化した話し合いの場である「ヴェローナ会議」への参加をここ数年間承認していません。これは、通常芸術や人と人との開かれた対話を重視するイタリア人の国民性とは全く相容れない行為です。

しかしそれと同時に、多くのイタリア市民はウクライナの悲劇の理由を理解しようとしています。例えば、著名なイタリアの広報人エリセオ・ベルトラッツィによる『イタリア人ジャーナリストが見たウクライナ紛争』という書籍には、キエフ当局による国際法違反の文書証拠が含まれています。この出版物を読むことをお勧めします。今日のヨーロッパでは、ウクライナの真実を見つけるのは簡単ではありません。

ロシアとイタリアの間の平等かつ相互互恵的協力関係は、わが国国民の利益にかなうものです。もしイタリア当局が相互尊重と双方の利益を考慮した上で対話の回復に向かう意思があるなら、ぜひお知らせください。わが国は大使からの発言を含めたそのような声かけを、いつでもお聞きする準備ができています。

※なお、本稿は、寺島メソッド翻訳NEWS http://tmmethod.blog.fc2.com/

の中の「連中は真実など欲しくない。真実は嘘の壁を破る者なのだから。:ロシアのラブロフ外相がイタリアの主要紙「コリエル・デラ・セラ」紙から検閲を受ける(2025年11月22日)

http://tmmethod.blog.fc2.com/

また英文原稿はこちらです⇒ They don’t want the truth, because the truth breaks down the wall of lies: Lavrov censored by Corriere della Sera

筆者:ロレンゾ・マリア・パチーニ(Lorenzo Maria Pacini)

出典:Strategic Culture Foundation  2025年11月18日https://strategic-culture.su/news/2025/11/18/they-dont-want-the-truth-because-the-truth-breaks-down-the-wall-of-lies-lavrov-censored-by-corriere-della-sera/

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寺島隆吉 寺島隆吉

国際教育総合文化研究所所長、元岐阜大学教授

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