【書評】ポール・マリク編『イベルメクチン 世界の臨床医の証言』 ―新型コロナ対策で投与し患者を救った医師らへの迫害や、大手メディア・プラットフォーマーによる排除措置は、効果の証しでは? 嶋崎史崇

嶋崎史崇

新型コロナに対する効果の有無について—大多数の日本人の知らないところで—世界中で大論争が起きていたイベルメクチン。大村智博士によって開発され、寄生虫薬としての効果と安全性が広く認められ、2015年にノーベル賞が授与された。

コロナ禍が収束したとみなされてしばらくたった2025年9月に、南東舎社長の石山永一郎氏の翻訳、薬学者の八木澤守正氏の監修の下、本書は刊行された。元来同じく南東舎から出ていた英語版からの翻訳である。

石山氏と、本書の原稿収集などを担当したプロデューサーの鳥居賢司氏は、既に2021年に、河出書房新社から『イベルメクチン 新型コロナ治療の救世主になり得るのか』を、大村氏や八木澤氏、花木秀明・北里大学教授らの寄稿を集める形で刊行していた。本書はその拡大版・国際版とも評価できるだろう。

編者である米国のマリク氏を筆頭に、カナダ、セントルシア、ブラジル、アルゼンチン、フィリピン、日本、オーストラリア、インド、オランダ、ナイジェリア、ジンバブエ、南アフリカなど世界中からの臨床医の報告を集めたものである。

イベルメクチンについて日本の大手メディアでニュースを聞くときは、ほぼ全てが「治験で新型コロナへの効果がなかったことがわかった」と「WHOは効果を認めていない」という方向だったことは、この問題に関心を持っている者にとっては、周知のことだろう。

ところが本書で引用されている研究によれば、抗炎症作用や、抗ウイルス作用、免疫調整等の効果が解明され、早期投与によって入院率・死亡率共に、顕著な効果が報告されている。QRコードで、論文や記事を容易に見つけられるのも、本書の長所の一つである。中には、最も厳密な治験方法とされる、二重盲検・ランダム化比較試験によるものもある。

にもかかわらず、そうした研究成果は大手学術雑誌には掲載されず、著名でない学術誌にひっそりと載り、主要メディアに無視されることがほとんどだ。驚かされるのは、ブラジルで行われたTOGETHER試験において、比較対象群で、新型コロナへの効果が報告されたビタミンCがプラセボとして使われ、イベルメクチンの効果がなかったように見せかけられるなど、あえて失敗するよう設計されたとしか考えようがないものも報告されていることだ(フラビオ・カデジアーニ、「第5章 パンデミックにおける愛憎劇 イベルメクチンとブラジル」、E・V・ラプティ「第15章 保健機関の信用失墜」)。

本書第8章に名前が見える佐々木みのり医師は、2022年に日本で行われたイベルメクチンの第Ⅲ相臨床試験について、投与量が少なすぎること、発症4日目という遅い時期に投与開始されたこと、といった決定的な問題点を指摘していた。遅い投与開始時期や少ない投与量は、TOGETHER治験とも共通している。

「イベルメクチンの治験結果について思ったこと」、2022年10月22日。

https://ameblo.jp/drminori/entry-12769546902.html

こうしてわざわざ効果が出にくい条件を設定し、利権破壊につながりかねない相対的に安全で有効な薬を狙い撃ちしてなきものにするという構図は、古くから存在すると私は認識している。本書に書いてあることではないが、例えばかつてがん治療薬として広く使用された丸山ワクチン。開発者の丸山千里博士は、丸山ワクチンは免疫力を向上させる薬であることから、単独使用での治験を希望していた。ところが当時の厚生省の審議会はそれを許さず、免疫力を下げる効果のある抗がん剤との併用での治験しか認めなかった。その結果、「十分な効果なし」と断定され、今日まで認可されていない(詳細は丸山千里『それからの丸山ワクチン ガンを追いつめる』、KKベストセラーズ、1986年初版、198頁以下)。丸山ワクチンとイベルメクチンには、以下のような共通点もあることも指摘しておきたい。

・日本人が開発した薬であること

・副作用が少ないこと

・安価であること

・他の薬からの転用薬であること(丸山ワクチンは元来は結核・ハンセン病治療薬として開発)

・主流の薬とは作用機序が異なる

・主流の学界から激しい非難を受けてきたこと

丸山ワクチンは、「有償治験」という異例の形式をとり、ほそぼそと投与が続いている。

https://www.nms.ac.jp/sh/vaccine/

イベルメクチンと裏表の関係にあると目される新技術のmRNAワクチンは、米国では当初「緊急使用許可」(EUA)として導入され、それをお墨付きとして世界中に広がった。その莫大な数と種類の有害事象は、「情報鎖国」たる日本以外では、大問題になっている。本書「第8章 Flash in Japan 超国家権力支配のワクチン禍(Vaccidemic)を生き抜く智慧」を寄稿している松江の福田克彦医師は、ワクチン後遺症を日本で初めて提唱した。イベルメクチンに加え、ホメオパシー、漢方、栄養療法等、多様な手段を用いて、後遺症治療に取り組んでいる。ちなみに題名にある「日本における閃光」とは、遺伝子型ワクチンの薬害によって生じた可能性のある数十万人規模と推計される被害を、原爆の閃光になぞらえたものである。福田医師は、「ワクチンという名のバイオテロによる世界最大の遺伝子人体実験国に住む宿命」を見据えつつ、標準治療以外にも多様な手段を用いて、患者の苦痛軽減、治療に取り組んでいるといえる。標準治療=国や主流学会で公式に認められた医療のみを行い、それ以外の治療を拒否して保身を図る多くの医師らとは対照的である。

このような薬害を出来させた原因であるEUAの条件は、他に有効な手段がないことなので、イベルメクチンのような相対的に安全・安価で有効な薬は存在してはならないからだろう、とは本書で医師らが度々指摘するところである(例えばE・V・ラピティ「第15章 保健機関の信用失墜」)。なおこのように書くと、即「陰謀論者」の烙印を押されて、排除されるのが慣例となっている。確かに常に多数派に与していれば、迫害されることなく、安楽な生活を送れるのかもしれない。だがイベルメクチンを排除し、mRNAワクチンを徹底的に推進してきたWHOの主要資金源の一つに、ワクチン推進組織のビル&メリンダ・ゲイツ財団が名前を連ねていることを踏まえると、いわゆる医産複合体の根深さに警戒せざるを得ない。

WHO: How WHO is funded

https://www.who.int/about/funding

それ故、今後も起きるであろう医療危機を考えると、生き残りたいと望むのであれば、具体的な状況証拠を吟味して、一人ひとりが調べて判断するしかない。

本書で最も印象的なのは、イベルメクチンを、ビタミンC・D、亜鉛、ステロイド、ヒドロキシクロロキン等の栄養素や既存薬と併用して治療に取り組んだ世界中の医師らへの迫害である。米国、カナダ、セントルシア、フィリピン、オーストラリア、オランダ、ジンバブエ、南アフリカなどでイベルメクチンの新型コロナに対する投与は禁止、または非推奨になった。それどころか、米国、カナダ、ジンバブエ等では、イベルメクチンを新型コロナ患者に処方して成果を得たのに、医師免許停止・剝奪・罰金等の処分を受けた。コロナワクチンを接種した医師らが、イベルメクチンとは桁違いの有害事象報告があるのに、何ら処罰されず、日本ではしばしば高額の手当まで受け取ってきたのとは対照的である。本書で紹介されるように、良心的な医師らがそうした圧力に屈せず、ただ目の前の患者に最善を尽くし、有害な治療は行わない、といったヒポクラテスの誓いの精神を実践して、抵抗を続けた事実は貴重である。

日本ではそもそもイベルメクチンが広く知られることがなかったので、迫害もそこまで激しくなかった、といえるかもしれない。それでも、地元の兵庫県のクリニックで、300人以上のコロナ患者にイベルメクチンを投与し死者ゼロという成果を得た長尾和宏医師も報告するように、22年9月にイベルメクチンの保険適用が突如停止される、といった不可解な事件もあった(「第7章 イベルメクチンとの出会いに感謝」)。

イベルメクチンを新型コロナへ応用した医師らへの排除措置の類は、オンラインの世界でも広く見られ、本書でも世界各地から報告されている。現時点では改定されたようだが、かつてユーチューブは、「COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の医学的に誤った情報に関するポリシー」として、イベルメクチンを新型コロナの治療・予防として勧める内容の動画を、一律に警告・削除・アカウント停止の対象としていた事実を忘れてはならない(拙著『ウクライナ・コロナワクチン報道にみるメディア危機』、本の泉社、2023年、104頁以下)。学問的・臨床的根拠のある議論が許されない状況が出来し、学問・言論・表現の自由、健康への権利が抑圧された異常事態だったのだ。

最後に、福田医師も第8章で報告しているように、イベルメクチンはアポトーシス(細胞の自死)を促進することや、転移や血管新生の抑制等の効能を示しており、癌治療にも有効、という研究結果が次々と出てきていることにも言及しておきたい。コロナワクチン接種後に見られる極めて進行が速い「ターボ癌」には福田医師も触れているが、ここでもイベルメクチンとmRNAワクチンは好対照をなしている。

ことほど左様にイベルメクチンは多様な可能性を秘めており、相対的に安全な薬品として認められている。だが薬である以上、副作用が全くないわけではなく、皮膚症状や嘔吐、下痢等が報告されている。

ストロメクトール/イベルメクチン添付文書:

https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00049234

新型コロナや癌の治療のため、寄生虫対策に比べて多くの量を服用する場合、尚更注意が必要である。幸い統合医療を実践している福田医師はオンライン診療で全国の患者を受け付けており、様々な助言を受けられる。

http://tougouiryou-fukudaclinic.com/

本書の著者らの努力と苦難がいつの日か報われ、イベルメクチンの潜在能力が公式にも認められ、さらに多くの患者が救われることを願っている。

なお12月4日(木)には、本書の翻訳者である石山永一郎氏の茶話会がISF主催で予定されている。https://isfweb.org/post-65059/

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嶋崎史崇 嶋崎史崇

独立研究者・独立記者、1984年生まれ。東京大学文学部卒、同大学院人文社会系研究科修士課程修了(哲学専門分野)。著書に『ウクライナ・コロナワクチン報道にみるメディア危機』(2023年、本の泉社)。主な論文は『思想としてのコロナワクチン危機―医産複合体論、ハイデガーの技術論、アーレントの全体主義論を手掛かりに』(名古屋哲学研究会編『哲学と現代』2024年)。ISFの市民記者でもある。 論文は以下で読めます。 https://researchmap.jp/fshimazaki ISFでは、書評・インタビュー・翻訳に力を入れています。 記事内容は全て私個人の見解です。 記事に対するご意見は、次のメールアドレスにお願いします。 elpis_eleutheria@yahoo.co.jp Xアカウント: https://x.com/FumiShimazaki

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