植草一秀【連載】知られざる真実/2025年12月 5日 (金) 金利上昇主因はインフレ懸念
社会・経済つい先日まで日本の長期金利上昇は財政政策が原因だとしてきたメディアが一転して説明を変えた。
12月5日付日本経済新聞は
「物価高予想、金利押し上げ」
https://x.gd/9HOc0
の見出しを付して報じた。
私はかねて「インフレ心理悪化が長期金利を上昇させている」と指摘してきた。
日経新聞はこれまで、日本の長期金利上昇主因を高市内閣の積極財政政策による「財政危機不安」だとしてきた。
11月17日には
「長期金利が1.73%に上昇、財政悪化懸念で 17年半ぶり高水準」
https://x.gd/vAWZH
の見出しで日本の長期金利上昇を報じていた。
記事は
「17日の国内債券市場で、長期金利の指標となる新発10年物国債利回りは一時前週末比0.025%高い1.73%に上昇(債券価格は下落)した。高市早苗政権が掲げる経済政策が財政悪化につながるとの警戒感から、債券に売りが強まった。」
と伝えていた。
「財政悪化懸念=長期金利上昇」
は財務省が流布している「フェイクニュース」である。
財務省は社会保障支出を切り、消費税率を引き上げる「悪だくみ」を有する。
この「悪だくみ」を実現するために
「財政政策発動=日本長期金利上昇・日本円下落」
という「フェイクニュース」を流布している。
日本の財政政策運営は直近5年間、超緊縮で推移してきた。
財政政策が「積極」か「抑制」かを判定する基準は「財政赤字の増減」である。
財政赤字増加=積極財政
財政赤字減少=緊縮財政
厳密に言えば財政赤字増減には「事前」と「事後」があり、不況は財政赤字を増やし、好況は財政赤字を減らす効果を持つ。
この部分を考慮する必要があるが議論が複雑になるのでここでは捨象する。
一般会計の「歳出-税収」を「財政赤字」と定義し、その「財政赤字」の前年差の数値を見ると、2021年度から25年度まで「超緊縮」の財政運営が続いてきたことがわかる(単位:兆円)。
財政赤字減少は年平均9.9兆円。
平均約10兆円の赤字削減財政が執行されてきた。
財政政策運営が「超緊縮」であり続けたことを意味する。
この政策運営が25年度に修正される。
高市内閣は11月28日に総額18.3兆円の補正予算案を閣議決定。
一般会計歳出が18.3兆円増額され、税収見積もりが2.9兆円上方修正された。
これを加味すると2025年度の財政赤字増減は5.2兆円の財政赤字増加になる。
「超緊縮財政政策」が「小幅積極財政」に転換する。
この政策修正は妥当。
問題は中身である。
歳出追加18.3兆円の内訳は
生活の安全保障・物価高への対応 8.9兆円
危機管理投資・成長投資による強い経済の実現 6.4兆円
防衛力と外交力の強化 1.7兆円
である。
だが、「生活の安全保障・物価高への対応」のなかの「足元の物価高への対応」は2.9兆円でしかなく、このなかに、「子育て応援手当」3677億円、「食料品の物価高騰に対する特別加算」4000億円などが含まれるが、いずれも1回限りの措置だ。
恒久措置で政策を実施しなければ大きな支えにも大きな安心感にもつながらない。
18兆円の施策を打つなら消費税率を10%から5%に引き下げることができる。
このような透明、公正、大胆な施策を打つことが必要。
マクロで緊縮財政の修正は正しいがミクロの対応はまったくの旧態依然である。
続きは本日の
メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」
第4271
号
「高市18兆円補正の根本的欠陥」
でご高読下さい。
月初のこの機会にメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」ご購読をぜひお願いします。
(お願い)
情報拡散を推進するために「人気ブログランキング」クリックをぜひお願いします。
『ザイム真理教』(森永卓郎著)の神髄を深堀り、最重要政策争点財務省・消費税問題を徹底解説する新著を上梓しました。
『財務省と日銀 日本を衰退させたカルトの正体』
(ビジネス社)
ご高読、ならびにアマゾンレビュー、ぜひぜひ、お願いします。
メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」
のご購読もよろしくお願いいたします。
メールマガジンの購読お申し込みは、こちらからお願いします。(購読決済にはクレジットカードもしくは銀行振込をご利用いただけます。)なお、購読お申し込みや課金に関するお問い合わせは、support@foomii.co.jpまでお願い申し上げます。
※なお、この記事は下記からの転載であることをお断りします。
植草一秀の『知られざる真実』2025年12月 5日 (金)「金利上昇主因はインフレ懸念」
http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2025/12/post-0e5856.html
– – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – –
スリーネーションズリサーチ株式会社
http://www.uekusa-tri.co.jp/index.html
メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」
http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2025/03/post-317af8.html
– – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – –
※ISF会員登録およびご支援のお願いのチラシ作成しました。ダウンロードはこちらまで。
ISF会員登録のご案内
植草一秀
植草一秀(うえくさ かずひで) 1960年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒。大蔵事務官、京都大学助教授、米スタンフォード大学フーバー研究所客員フェロー、早稲田大学大学院教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役、ガーベラの風(オールジャパン平和と共生)運営委員。事実無根の冤罪事案による人物破壊工作にひるむことなく言論活動を継続。 経済金融情勢分析情報誌刊行業務の傍ら「誰もが笑顔で生きてゆける社会」を実現する『ガーベラ革命』を提唱。人気政治ブログ&メルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」を発行。1998年日本経済新聞社アナリストランキング・エコノミスト部門1位。『現代日本経済政策論』(岩波書店、石橋湛山賞受賞)、『日本の独立』(飛鳥新社)、『アベノリスク』(講談社)、『国家はいつも嘘をつく』(祥伝社新書)、『25%の人が政治を私物化する国』(詩想社新書)、『低金利時代、低迷経済を打破する最強資金運用術』(コスミック出版)、『出る杭の世直し白書』(共著、ビジネス社)、『日本経済の黒い霧』(ビジネス社)、『千載一遇の金融大波乱』(ビジネス社、2023年1月刊)など著書多数。 スリーネーションズリサーチ株式会社 http://www.uekusa-tri.co.jp/index.html メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」 http://foomii.com/00050


















