国際アジア共同体学会による声明文(2025 年12 月7日) 進藤榮一会長 ・筑波大学名誉教授
国際アジア共同体学会の声明文
「日中対立による影響を憂慮し、早期の関係修復を求める」
私たちは東アジアの平和と安定に向けて取り組む学術団体である。“台湾有事”に関し集団的自衛権を行使する「存立危機事態」になり得るとした高市早苗首相の国会発言により、日中両国の関係が急激に悪化していることを深く憂慮する。とりわけ日中両国の対立が経済損失はじめ様々な分野への影響や国民感情の悪化を招くのみならず、東アジアの安全保障を巡る緊張を高めることを強く危惧するものである。戦後80年間、日中両国は戦火を交えず、平和的に発展してきた関係をこれ以上悪化させる事は両国に取り痛手となる。ここに、学会の中立的な立場から声明を発表し、両国政府に対し早期の関係修復を求めるものである。
1、日本の現職首相が国権の最高機関である国会で“台湾有事”の際に米軍の援軍として自衛隊参戦の可能性に初めて言及したことは、従来の政府見解が踏み越こまなかった一線を越えるものであり、極めて重大である。「綸言汗の如し」、国家指導者の言葉は容易に元に戻らず、厳に責任を自覚することが肝要である。
2、中国政府は「核心利益」中の「核心利益」とする台湾問題への内政干渉であり「一つの中国」原則に反するとして首相発言の撤回を一貫して要求している。高市首相は、問題とされる答弁を行った数日後すでに国会で「反省点として、今後は特定のケースについて明言することを慎む」と述べ、更に、日本政府は、質問主意書に対する回答等で、従来の政府答弁を明確に述べ始めたものの、発言の撤回には至っていない。結果として、両国政府間の溝は深まりつつあるとさえ感ぜられる。
私たちは、首相発言の撤回が根本的な解決に結びつく最善の対応と考える。しかし、それが困難ならば、高市首相が問題とされる発言の数日後から「反省してこれからは言わない」と国会で発言していることを中国側に伝え、対話と協議による外交努力に邁進すべきと考える。
2000 年代初頭の靖国参拝問題や2012年の尖閣問題による両国の関係悪化時に、合意文書の作成、親書や特使を含めた対話と協議により、関係修復を図った外交努力を範としたい。
3、日本政府は、1972年の日中国交正常化共同声明第3項を堅持し、台湾問題の平和的解決を求め続けるべきである。両国政府は、日中関係の基礎となる「四つの政治文書」を再確認し、戦後 80 年間維持してきた「不戦・平和」の貴重な実績を将来にわたり維持するよう求める。
4、中国は日本の最大の貿易相手国であり、また両国の官民両分野で広範な交流により密接な関係を築いており、こうした関係が途絶えるような事態は双方にとって大きな損失につながる。日中両国政府はできるだけ速やかに政府間協議を開催し、この件によって停滞した両国間の経済交流や地方交流、学術・文化を含む民間交流を元に戻るよう強く求める。
5、高市首相と習近平国家主席が首脳会談で確認した、「戦略的互恵関係の推進」による「安定的、建設的な日中関係」は、東アジアの平和と安定に不可欠であり、両国政府が共にその実現に努力するよう求める。
2025 年12 月7日
国際アジア共同体学会
会長 進藤榮一・筑波大学名誉教授
国際アジア共同体学会2025年度夏季年次大会:総合テーマ「東アジア平和の道:戦後80年から
アジア安全保障協力会議へ」チラシはこちら→0715
日時: 2025年7月15日(火)13:00-17:55 (受付開始12時30分)
場所: 衆議院第二議員会館一階多目的会議室(東京都千代田区永田町2-1-2 )5
若手研究会 11:20-11:50
開会宣言東郷和彦(元駐オランダ大使・学会理事長)13:00-13:02
特別招聘記念講演13:02-13:25
鳩山友紀夫(元内閣総理大臣、一般財団法人・東アジア共同体研究所理事長)「アジア外交を再構築する」(仮題)
来賓挨拶13:25-13:40
呉江浩(中華人民共和国駐日本国大使)
斉藤鉄夫(衆議院議員・公明党代表)(予定)
【第1セッション】〈戦後80年・バンドン会議70年と日本外交〉13:40-14:40
モデレーター福富満久(一橋大学教授)
田中哲二(中国研究所会長、元国連大学学長上級顧問、中央ユーラシア総合調査会理事長)「21世紀バンドン会議を構想する」
春名幹男(国際ジャーナリスト)「暴走するトランプ政権と日米関係」
【第2セッション】〈トランプ2.0と「関税戦争」の展開〉14:40-15:40
モデレーター中川十郎(日本ビジネスインテリジェンス協会理事長)
萩原伸次郎(横浜国立大学名誉教授)「米国経済の変容と「『関税戦争』」
朱建栄(東洋学園大学名誉教授)「トランプ2.0外交と米中関係の展開」
福山秀夫(一帯一路日本研究センターシニアフェロー)「一帯一路とアジア物流網の新展開」
【第3セッション】〈「二つの戦争」と日本の生き方〉
15:40-16:40モデレーター・訪中報告川村範行(名古屋外国語大学名誉教授)
東郷和彦(元駐オランダ大使、学会理事長)「ダウンサイジング・アメリカのつくる戦争」
石川一洋(元NHKモスクワ特派員)「ウクライナ戦争の現状と展望」(仮題)
宮田律(現代中東研究センター理事長)「ガザ・イスラエル戦争と日本の外交不在」
【第4セッション】〈東アジア安全保障平和協力会議の提案〉16:40-17:40
モデレーター熊達雲(山梨学院大学国際共同研究センター長・特任教授)
村野謙吉(文明評論家・元英文毎日・コラムニスト)「なぜ欧州でたえず戦争が起こるのか」
林亮(創価大学教授)「東アジア安全保障平和協力機構を提起する」
総括・閉会挨拶:進藤榮一・学会会長(筑波大学名誉教授)17:40-17:50
※『東京新聞』2025年12月8日「台湾有事答弁撤回を」(アジア共同体学会が生命)



















