高市発言撤回をよびかける記者会見
国際政治※この記事は、青柳貞一郎氏のブログ「rakitarouのきままな日常」(2025年12月11日付)から、許可を得て転載したものです。
https://rakitarou.hatenablog.com/entry/2025/12/11/115355
2025年11月7日の衆議院予算委員会における台湾問題に関する高市早苗首相発言に端を発した問題は尚波紋を広げており、中国による対抗姿勢は一層強まっています。11月下旬には小泉防衛大臣が与那国島を緊急訪問したほか、中国は遼寧を含む空母艦隊を日本近海に派遣して日本のF-15戦闘機に対してレーダー照射を行う威嚇を行いました。またレアアース輸出規制をはじめとする種々の貿易障害を設けて経済的な圧迫も強めています。
一方で「撤回や謝罪をしたら負け」と勝手に決めた高市首相は、「これからは言いません」とまでは発言したものの、「誤りでした」と言いません。「誤りでした」と言って「台湾有事にはこれを言い訳に一切関わらない口実にしてしまった方が日本にとって国益」という発想は一切持てない硬直思考の総理を日本は持ってしまったということでしょう。「アジア・ファースト」を提唱し、「米国でなく日本が中国と戦争しろ」と言っているエルブリッジ・コルビーには大変怒られるでしょうが、高市程度の軽い人なら「テヘペロ」で済ませる事もできるはずです。「売り言葉に買い言葉でうっかり」歴代首相が言わなかった事を言ってしまう人間が、どんなに国益にマイナスでも発言を取り消さないとは恐れ入ります。

そのような中「村山談話を継承し、発展させる会」が主催して「高市発言撤回をよびかける記者会見」が2025年12月8日参議院議員会館講堂で14:00から内外の多くのメディアが出席する中開催され、東郷和彦元外務省条約局長、田中宏一橋大学名誉教授、伊藤彰信日中労働者交流協会会長ら各界著名人が宣言を述べて発言の撤回を呼びかけました。rakitarouはたまたま村山談話の会理事長の藤田高景氏に前週会った時に「可能なら参加を」と声をかけられて一聴衆として参議院会館に行ってきました。
内容については東京新聞の12月9日朝刊「こちら特報部」に各氏の発言がまとめられているのでご一読を勧めます。動画については中国のCCTVのほか、筆者がインタビューを受けた香港phenix TVも見れます。今回はメディアで取り上げられない話題について、備忘録的にブログに記しておきます。
東郷和彦 元外務省条約局長
G20における初めての習近平・高市総理の会談は30分足らずのもので、先ずは初見における信頼関係の構築から始めないといけないのに、高市氏は「言いたいことは言った。成果を出した」と会談後記者会見で自慢。十分な信頼関係を築いてから話題にするべき「人権問題や少数民族」について問題点として出したことに外務官僚達はひっくり返ったという。「あいつとは二度と会わない」という習氏の結論しか出ないことが分かっていない。外交音痴である。

岡本 厚 雑誌「世界」元編集長
高市総理は周氏との会談前に台湾代表と会談してそれをXにアップしている。トランプ氏でも遠慮して行わなかった行為を平気でしてしまう事に外交や国益についての思慮が感じられない。
竹信美恵子 和光大学名誉教授
「女性初の総理だから」という理由で多くの女性が支持してしまっているは問題。
前田 朗 東京造形大学名誉教授 人権論
国連において敵国条項が問題になったのは1990年台の「性奴隷問題」、2005年の日本安保理常任理事国立候補時(多くの国が敵国条項を理由に拒否)、そして今回の高市発言で敵国条項を呼び覚まして3回目になった。国連憲章51条の「国連加盟国に対する武力攻撃」が「急迫かつ不正」であることを証明せずに「自衛隊出動を要する存立危機事態」であると宣言する事は国連憲章違反でもあり、敵国条項を呼び覚ます元になる。
川村 範行 名古屋外語大学教授
「綸言汗のごとし」で首班(皇帝)が一度口に出した言葉は汗と同様元に戻らない事を肝に銘ずる必要。過去には政府の副総理級を「特使」として派遣して関係修復を図った歴史があるのでそうするべき。
〇 レーダー照射問題は「どこまでやるか」の話
映画「トップガン1986」の出だしで米空母に接近する仮想敵国機にF-14が緊急発進、相手機にロックオンされながらも「打たれるまで反撃するな。」と命令され、最後はトム・クルーズが相手機の真上で宙返りして記念撮影、で判るように、空母に仮想的機が接近すれば反撃前提で対応するのは各国で常識です。「演習」という準軍事行動を日本近海で行えば、自衛隊機が緊急出動することも常識。これは軍事レベルではお互い分かっていて行うことで、いちいち外交問題にしていたらキリがありません。

自衛隊の潜水艦がロシア領海内に時々入るのも相手の探知能力を知る上でよくある事であり、「見て見ぬふり」をした上で度が過ぎると「もう止めておけ」と音響探知を打つこともあります。対空戦闘の場合、ソ連時代の東京急行などでは、自衛隊機のミサイル(AIM-9)も射程せいぜい数キロメートルだったので見える距離まで近づきましたが、現在の99式空対空誘導弾は内臓レーダー誘導で射程は100kmに伸びています。米軍のレイセオンAIM120は改良型で射程180Kmまで伸びており、中国が装備しているPL-15空対空ミサイルは最大射程400kmとも言われ(ハッタリもありそうで正確には不明)、射撃用レーダーもその長さで敵を捕らえます。つまり東京―大阪位でレーダー照射をされた可能性もあり、その半分の静岡あたりとしても「これ以上近づくな」という警告として十分ありえることです。「引き金を引けば撃墜(の可能性)」は正しいとしても、メディアで連日繰り返して騒ぐほどのことか?と疑問に思います。
要は「どこまで(実戦的に)やるか」の軍事問題を執拗に煽る事ではなかろうという事です。ちなみに今回空母から発進してきたJ-15戦闘機は、ロシア製のスホイ27を国産化したJ-11の改良版であり、ロシアが艦上戦闘機のスホイ33の中国への輸出を断ったので、日本人が好きなウクライナがスホイ33を中国に提供してJ-15として開発されたと言われています。中国初の空母「遼寧」を輸出したのもウクライナであり、北朝鮮の弾道ロケットもウクライナの技術、なぜ日本人がウクライナを支援するのか不思議です。
〇 温暖化とコロナに流されない市民の会 最終講演会のご案内

温暖化とコロナに流されない市民の会では来る2026年1月18日(日曜)に、文京区湯島にある全国家電会館会議室にて経済評論家の増田悦佐氏をお招きして「2026年暴落する米国経済」と題する講演会を開催します。AI株のバブルが限界に来ており、既に巨大資本はAI企業株から撤退しつつある2025年末において、今後の世界経済、トランプ政権、高市政権を持ってしまった日本社会の今後を見通す上でも必見の講演会と思います。申し込みは(講演会「2026年 暴落する米国経済」」by温暖化とコロナに流されない市民の会 | Peatix)から可能です。ぜひご参集ください。
青柳貞一郎
防衛医科大学卒業、元陸上自衛隊医務官、医師、東京医科大学名誉教授、医療・軍事ジャーナリスト。温暖化とコロナに流されない市民の会代表。 ブログ:「rakitarouのきままな日常」https://rakitarou.hatenablog.com/


















