【連載】植草一秀の「知られざる真実」

植草一秀【連載】知られざる真実/2025年12月13日 (土) 未明から練り上げた国会暴言

植草一秀

11月7日の高市首相国会答弁の背景が明らかにされた。

立憲民主党の辻元清美衆議院議員が提出した質問主意書への政府答弁書によって明らかになった。

11月7日の高市発言は前段と後段に分かれる。

前段の発言に特段の問題はない。

「歴代内閣の立場と一致する」との説明は成り立つ。

しかし、後段の発言は違う。

歴代内閣の立場を逸脱した。

前段では台湾有事の際の日本の対応について

「発生した事態に関して、どのような事態が発生したのかについての情報を総合的に判断しなければならない」

と述べた。

辻元議員が高市答弁に関連して官僚機構が準備した応答要領の開示を求め、政府が開示した。

前段の高市発言は準備された応答要領に則している

ところが、後段で高市首相はこう述べた。

「台湾を統一、まあ、中国北京政府の支配下に置くような」場合に、「それが戦艦を使って、武力の行使もともなうものであれば、どう考えても存立危機事態になり得るケースであると私は考えます」

前段とはまったく違う。

この答弁は官僚機構が準備した答弁でない。

朝3時から準備した高市首相が自分の言葉で答弁したもの。

これを言うために午前3時から準備していたのかもしれない。

そして、この答弁が大問題を引き起こした。

高市発言には二重の意味で重大な問題がある

第一は日中友好関係を根底から破壊するものであること。

高市氏に弁解の余地はない。

第二は日本の安全保障政策の許容範囲を超えるものであること。

これは内政問題として国会で追及されなければならない。

日本と中国は53年間にわたって友好関係を築いてきた。

侵略と植民地支配という「加害責任」を負う日本と中国との和解は歴史的な偉業だった。

その日本と中国が国交正常化に際して重要な文書を取り交わした。

それが「日中共同声明」。

78年には「日中平和友好条約」も締結。

日本は「赦し」を得た。

その際に中国が絶対的に重視した二つの事項がある。

「中国の核心的利益」。

それは、

1.中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であること

2.台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であること

この2点について「日中共同声明」は次のように記述した。

二 日本国政府は、中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する。

三 中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。

この意味について再論しない。

論理的に日本は台湾の中国帰属を認めた。

さらに、日中両国は、

「主権及び領土保全の相互尊重、相互不可侵、内政に対する相互不干渉、平等及び互恵並びに平和共存の諸原則の基礎の上に、両国間の恒久的な平和友好関係を確立、発展させること」

「この諸原則及び国際連合憲章の原則に基づき、相互の関係において、すべての紛争を平和的手段により解決し及び武力又は武力による威嚇に訴えないこと」

を確認してきた。

したがって、

日本の首相が「台湾有事で集団的自衛権行使」

と発言するのは誤りである。

高市氏は歴代内閣の立場を逸脱して

「台湾有事があればほぼ間違いなく集団的自衛権行使」

と受け取られる発言をした。

日中友好関係を根底から覆したと言って過言でない。

続きは本日の
メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」
第4278

「国益を損なう高市外交」
でご高読下さい。

月初のこの機会にメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」ご購読をぜひお願いします。

https://foomii.com/00050

(お願い)
情報拡散を推進するために「人気ブログランキング」クリックをぜひお願いします。

『ザイム真理教』(森永卓郎著)の神髄を深堀り、最重要政策争点財務省・消費税問題を徹底解説する新著を上梓しました。

『財務省と日銀 日本を衰退させたカルトの正体』
(ビジネス社)

https://x.gd/LM7XK

ご高読、ならびにアマゾンレビュー、ぜひぜひ、お願いします。

メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」

https://foomii.com/00050

のご購読もよろしくお願いいたします。

メールマガジンの購読お申し込みは、こちらからお願いします。(購読決済にはクレジットカードもしくは銀行振込をご利用いただけます。)なお、購読お申し込みや課金に関するお問い合わせは、support@foomii.co.jpまでお願い申し上げます。

※なお、この記事は下記からの転載であることをお断りします。
植草一秀の『知られざる真実』2025年12月13日 (土)「未明から練り上げた国会暴言」

http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2025/12/post-f62b1e.html

– – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – –

スリーネーションズリサーチ株式会社
http://www.uekusa-tri.co.jp/index.html

メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」
http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2025/03/post-317af8.html
– – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – –

※ISF会員登録およびご支援のお願いのチラシ作成しました。ダウンロードはこちらまで。
ISF会員登録のご案内

「独立言論フォーラム(ISF)ご支援のお願い」

植草一秀 植草一秀

植草一秀(うえくさ かずひで) 1960年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒。大蔵事務官、京都大学助教授、米スタンフォード大学フーバー研究所客員フェロー、早稲田大学大学院教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役、ガーベラの風(オールジャパン平和と共生)運営委員。事実無根の冤罪事案による人物破壊工作にひるむことなく言論活動を継続。 経済金融情勢分析情報誌刊行業務の傍ら「誰もが笑顔で生きてゆける社会」を実現する『ガーベラ革命』を提唱。人気政治ブログ&メルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」を発行。1998年日本経済新聞社アナリストランキング・エコノミスト部門1位。『現代日本経済政策論』(岩波書店、石橋湛山賞受賞)、『日本の独立』(飛鳥新社)、『アベノリスク』(講談社)、『国家はいつも嘘をつく』(祥伝社新書)、『25%の人が政治を私物化する国』(詩想社新書)、『低金利時代、低迷経済を打破する最強資金運用術』(コスミック出版)、『出る杭の世直し白書』(共著、ビジネス社)、『日本経済の黒い霧』(ビジネス社)、『千載一遇の金融大波乱』(ビジネス社、2023年1月刊)など著書多数。 スリーネーションズリサーチ株式会社 http://www.uekusa-tri.co.jp/index.html メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」 http://foomii.com/00050

ご支援ください。

ISFは市民による独立メディアです。広告に頼らずにすべて市民からの寄付金によって運営されています。皆さまからのご支援をよろしくお願いします!

Most Popular

Recommend

Recommend Movie

columnist

執筆者

一覧へ