【連載】百々峰だより(寺島隆吉)

『「神に選ばれた国(アメリカ)」と「神に選ばれた民(イスラエル)」に未来はあるか』12月15日発刊 

寺島隆吉

※編集部注:この記事は、「百々峰だより」2025年12月3日付からの転載です。

http://tacktaka.blog.fc2.com/blog-entry-773.html

『「神に選ばれた国(アメリカ)」と「神に選ばれた民(イスラエル)」に未来はあるか」』

前書『イスラエルに鉄槌を!』は、題名を見るとあたかもイスラエルの犯罪行為を追求した本のように見えます。しかし目次でお分かりのように、この本の大半はアメリカがいかなる手段を駆使して世界を破壊してきたかを追求したものです。
このような題名と内容齟齬が生じた理由は、もともと『「神に選ばれた国」と「神に選ばれた民」に未来はあるか』という題名でブログに連載してきたものを、ガザ情勢の緊迫を受けて緊急出版したことによるものです。
この前書は、世界中をクーデターその他の手段で荒らし回ったアメリカが世論の批判を浴びて次々と手段を変えていった経過を中心に論じ、最後にたどり着いたのがイスラエルやウクライナという傀儡国家を利用するという方法だったことを論じたものでした。
日本が満州国という傀儡国家をつくって、それを武器にしながら中国やアジアを支配しようとしたのと似ています。

こうしてアメリカから金と武器を援助されながらイスラエルは、他方でアメリカの言いなりにならず独自の目標を追求してきました。
極端に言えば、現在のイスラエルはアメリカの援助なしには存続できないはずなのに、いつの間にか主客が逆転して、アメリカを道具として利用しながら独自の目標を追求し始めたのです。
それがいまガザで展開されているジェノサイド(集団大虐殺)であり、「大イスラエルGreater Israel」の建設作業ではないかと考えられます。その残酷さは、チリなどで展開された凄惨な弾圧をはるかに超えるものです。
ところが前書では、アメリカがチリその他で展開した南米の「コンドル作戦」の残虐さは、幾つもの章にもわたって非常に丁寧に紹介したのですが、その残虐さをはるかに上回るイスラエルの残虐さについては、ほとんどふれるこできませんでした。
というのは、ガザの事態があまりにも急激に展開しているので、その詳細を紹介するよりも先ずイスラエル軍のジェノサイドを糾弾する本を一刻も早く出版することに精力を注いだからでした。しかし出版したあとになって、イスラエル軍の残虐ぶりを具体的事実でもって訴えるという点で、大きな弱点があることに気づきました。

そこで本書では、遅ればせながら、イスラエル軍の残虐ぶりをできるだけ詳しく紹介します。
とはいっても、イスラエル軍の残虐ぶりはあまりにも膨大なので、その全てを紹介できません。南アフリカ共和国がイスラエル軍のジェノサイドぶりをICJ(国際司法裁判所)に提訴したときの資料がPDF版で90頁ちかくにも及ぶほどだからです。
ですから、本書では「イスラエルによるジェノサイド再考」として、3つの視点を取りあげて序章としました。

まず「AIマシーン・ラベンダーを使った大量殺戮」について取り上げました。
これは、イスラエル=ガザ地区の地元調査報道機関の調査によって初めて明らかにされたものでした。
取材は、「イスラエル軍情報部門に属し、今回のガザ攻撃に参加し」「ハマスやイスラム聖戦の戦闘員の暗殺作戦のために標的を生成するAIマシン」の使用に直接関与していた6人の将兵にインタビューをしたものです。
イスラエル軍の情報部門に属していた人物が、よくぞこのようなインタビューに応じたものだと驚きました。自分たちの内部事情を明らかにすることは、ふつう情報部門に属している人物にとっては許されないことだからです。しかし彼らは思いきってインタビューに応じた理由を次のように語っていました。
その一人は、「ガザのパレスチナ人を殺害するというこの不均衡な政策はイスラエル人を危険にさらすと考えるようになった」と述べ、そのことが、取材インタビューを受けることを決めた理由の一つだったという。
「短期的にはハマスを傷つけるので私たちはより安全かもしれないが、長期的な安全度は低い。ガザ住民のほぼ全員が家族を失った遺族となり、10年もすれば人々がハマスに参加する動機が高まることになる。そして、ハマスが人々を募集するのははるかに簡単になるだろう」と付け加えた。
つまり、この作戦はガザ地区の「民族浄化作戦」としては大きな成果をあげることは確かだが、生き延びた子どもたちがイスラエル軍によるあまりのひどい仕打ちに我慢できず、10年後にはその復讐のためにハマスに参加するようになるだろうから、長期的に見ればイスラエルの安全に貢献するとは限らないというわけです。
これを読んで、イスラエル軍が成人やハマスの戦闘員を攻撃の対象にするのではなく、殺されたひとの大半が女性と子どもだった理由が、初めて分かった気がしました。

次に「医療従事者を次々と殺害することによって大量殺戮がさらに拡大したこと」を取りあげました。
冷酷無比のイスラエル軍です。パレスチナを更地にして「大イスラエル」をつくろうと目論んでいるネタニヤフ首相の、もっと多くのパレスチナ人を殺すさらに新たな手段が、医療従事者やその救援部隊を殺害するという方法でした。
というのは、AIマシーン・ラベンダーで「ハマスの下級工作員1人につき15人から20人までの民間人を殺害してもよい」とされていたにしても、その「巻き添え被害者」が即座に救出され治療を受けて命を救われたとすれば、効果半減だからです。

3つめは、「非暴力抵抗運動としての焼身自殺を再考する――イスラエルのジェノサイドに抗議して自殺した若い米軍兵士を例にして」です。
前書を知人(Mさん)に差し上げたところ、その御礼メールの一節に次のようなコメントが書かれていました。
「ひとつ引っかかったのは、非暴力について。私が理解していたガンジーの非暴力は、焼身自殺のような行為とは違うような気がしたこと」
それに対して私は本書で次のような反論を書きました。

ネタニヤフ首相は「餓死作戦」という手段に移ったようで、一見すると、砲撃で住居まるごと破壊する作戦によって、手足のない死体や瀕死の重症者が散乱する光景が世界の眼に曝されるわけではないので、残虐さが小さいように見えるかも知れませんが、こんなに残酷な戦術はありません。
それに対して、空軍現役隊員のアーロン・ブッシュネルさん(25歳)が、2024年2月25日ワシントンのイスラエル大使館前で、イスラエルによるガザのパレスチナ人に対する「大量虐殺」に抗議するため、自らに火をつけて死亡したのです。
彼はこの焼身自殺という抗議行動をおこなう前に大手メディアにその旨を通知してあったのですが、結局だれも現場に現れず、この動画はTalia Janeという女性の独立ジャーナリストが独自に手に入れたものでした。
ですから、この動画は大手メディアではほとんど紹介されず、この事件を知っているひとは多くないはずです。私がこの動画をISF(独立言論フォーラム)主催の講演で紹介したとき、「えっ、これはフェイクニュースではないんですか」という声があがったことが、それをよく示しています。
今まで一貫してイスラエル支持を表明してきた大手メディアとしては、このような抗議行動があったことを知らせたくなかったのでしょう。
他方、ベトナム戦争時では、ベトナムの高僧ティック・クアン・ドック師が焼身自殺で戦争に抗議したとき、まだ健全だった大手メディアはこれを大きく報道しました。その写真がベトナム戦争の終結を早めたことは間違いないでしょう。
この「焼身自殺」が非暴力直接抵抗運動として効果を発揮するのは、それを大手メディアが正しく報道する場合に限ります、
ブッシュネルさんの場合に見られるように、それを大手メディアが黙殺する場合には、それが「無駄死に」となる可能性が大きいからです。
だからこそイスラエル軍がジャーナリストを狙い撃ちにして殺戮していく事件が増加しているのでしょう。

【もくじ】
序 章  イスラエルによる「ジェノサイド(集団大虐殺)」再考
第1章 暗躍するイスラエルとアメリカの謀略機関「モサド」「FBI」「CIA」
第2章 「ショック・ドクトリン」を応用した南米諸国の「クーデター」、アフガニスタンにおけるCIAの「サイクロン作戦」
第3章 イスラム原理主義集団ハマスは、イスラエル謀略組織モサドにまんまと「のせられた」!?
第4章 チャーチ委員会による暴露、残虐極まりないチリのクーデター
第5章 CIAの「カラー革命」華麗なる戦術転換
――中東の「満州国」すなわちISIS「イスラム国」という国家を偽造する
第6章 イスラエルの蛮行
――国際司法裁判所が「大量殺戮」と断罪!
第7章 「ベトナム反戦運動」の再来か!?
――全米に広がる「ガザ虐殺」「民族浄化作戦」への抗議運動
第8章 「反シオニズム」と「反ユダヤ主義」は似て非なるもの
――若い米軍兵士アーロン・ブッシュネル氏の焼身自殺
第9章 「コロナ騒ぎ」と「ウクライナ紛争」を裏で動かしていた国防総省
第10章 国防総省が進める壮大な「生物兵器研究」、狙われる中東・中国・ロシア
第11章 イスラエルは中東(西アジア)に配備された航空母艦だ!
第12章 ユダヤ人がユダヤ人を殺した「ハーバラ協定」
――「イスラエル国を解体せよ」と主張する超正統派のひとびと
あとがき

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寺島隆吉 寺島隆吉

国際教育総合文化研究所所長、元岐阜大学教授

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