【連載】今週の寺島メソッド翻訳NEWS

☆寺島メソッド翻訳NEWS(2025年12月15日):フィョードル・ルキャノフ:モスクワ-デリー軸はポスト西洋世界のモデルとなりつつある

寺島隆吉

※元岐阜大学教授寺島隆吉先生による記号づけ英語教育法に則って開発された翻訳技術。大手メディアに載らない海外記事を翻訳し、紹介します。


フョードル・ルキャノフ(ロシア・グローバル情勢編集長、外交防衛政策評議会幹部会議長、ヴァルダイ国際討論クラブ研究ディレクター)

写真:インドのナレンドラ・モディ首相とロシアのウラジーミル・プーチン大統領。© Sputnik / Alexander Kazakov

ロシア大統領のインド公式訪問は、両国の規模と国際社会における影響力を考慮すれば常に重要な出来事である。しかし今週のウラジーミル・プーチン大統領のニューデリー訪問は特に注目に値する。国際情勢が急速かつ大きく変化する中で行われるものであり、両国がその変化に決定的な役割を果たしているからだ。

過去10年間、世界情勢は流動的な状態にある。ロシアとウクライナの緊張は公然たる紛争段階に入り、瞬く間に地域レベルを超えた。また、米国と英国を中心とした主要な西側諸国でも劇的な変化が生じ、西側共同体内の関係性の従来の姿に疑問が投げかけられている。2000年代後半に頂点を迎えた米中経済共生関係は、避けがたい「断絶」の段階に入ろうとしている。そして最後に、世界各地の中堅諸国が新たに生じつつある機会をより真剣に検討し始めたのである。

当時の現実政治とその分析の交差点において、最も注目を集めた話題は、世界情勢の混乱の責任が誰にあるかという点であった。西側の論評家たちはロシアと中国を非難し、イランと北朝鮮も頻繁に同列に挙げられた。こうした性質の異なる国々を一つのカテゴリーにまとめることは、現実の状況を反映したものではなく、西側の懸念を映し出していた。大西洋共同体(アトランティック・コミュニティ)は、20世紀末に形成された自由主義的な世界秩序——後に「ルールに基づく秩序」として知られるようになるもの——の維持を強く主張した。この秩序からの逸脱の兆候は、罰せられるべき「逃避の試み」と見なされた。

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皮肉なことに、覇権主義を共同で拒否すると宣言したロシアと中国は、この秩序の中で全く異なる立場を占めていた。ロシアは自国の地政学的利益が無視されていることに不満を抱き、西側指導者たちが無関心だった世界経済システムへのより深い統合を求めた。一方、中国はその経済システムの支柱であった。しかし、自国の支配への脅威を感じ取り、西側諸国がそのシステムを恣意的に解体することに不満を抱いていた。イランと北朝鮮に関しては、彼らの任務は単に自らの不可侵性を確保することだった。制裁の脅威に常に晒されていたことを考えれば、それは驚くべきことではない。

インドは常に極めて好ましい事例と見なされてきた。非西洋圏でありながら急速に成長し、ルールを遵守し、海外への過度な野望を持たずに自国の発展に主眼を置いている国である。

過去10年の劇的な紆余曲折はさておき、現代に早送りしよう。自由主義的秩序は、ただ惰性で記憶されているに過ぎない。パンデミックは、グローバル化が「停止」した状態で世界が存続しうることを示した。そして残されたルールさえ、つい最近までその主要な提唱者かつ保証者であったホワイトハウスによって破られている。世界秩序の見なおしについて語ることは無意味だ。それは単に崩壊したのである。

これまでの分類では、主な変革推進役は米国であった。ワシントンは、大西洋の両岸の関係そのものの基盤を、感情に流されることなく見直すほど強い決意を示している。スローガンのレベルでは、中国は以前の開放的なシステムへの回帰を訴えているが、北京はそれが不可能であることを認識している。ロシアは2000年代前半に掲げた目標を追求している:東欧における地政学的不均衡の解消と、変化した世界における自らの地位の確保である。ウクライナ国境における安全保障問題を解決することは、それ自体で将来の課題への答えを提供しないが、それらに対処するための新たな枠組みを構築するものである。

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ちなみに、ここ数年は平壌とテヘランに関する一種の実験であった。両者ともかつて核開発の野心を追求していると非難されたが、この野心を実現したのは北朝鮮だけだった。誰も北朝鮮に手を出そうとはしない一方で、イランは大規模な攻撃の犠牲者となっている。観察者は各自の結論を導き出せるだろう。

インドは最も一貫している。自国の発展が依然としてその政策の中心にある。その政治的影響力の拡大は、野心の増大というより、むしろ世界の変化によるものだ。これはまた、主要国同士の関係においてインドの支持を確保しようとする主要国間の意欲の高まりにも起因している。

ロシアとインドは互いに大きく異なり、ある点では正反対とも言える。しかし、次の二つ重要な事情には留意すべきである。

第一に、両国が築いた緊密で友好的な相互利益に基づく協力関係は、文明の差異を消し去るのではなく強調することに重点を置く国際秩序の規範となる。率直に言って、ロシアとインドの関係は多くの国々の羨望の的だ。激動の変化の中でも安定を維持する方法を示している。

第二に、ロシアもインドも世界支配を目論んでいるわけではない。しかし両国とも、それぞれの条件ゆえに、これなしで何も成し得ない大国である。無視はできない。ある意味、今や超大国であることよりも、こうした国であることの方が有利だ。負担は少なく、柔軟性は高い。取り組みを調整すれば、海上でも陸上でも、我々の前に障害は立ちはだからないだろう。

この記事はロシスカヤ・ガゼタ紙に最初に掲載され、RTチームによって翻訳・編集された。

※なお、本稿は、寺島メソッド翻訳NEWS http://tmmethod.blog.fc2.com/

の中の「フィョードル・ルキャノフ:モスクワ-デリー軸はポスト西洋世界のモデルとなりつつある(2025年12月15日)

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また英文原稿はこちらです⇒Fyodor Lukyanov: The Moscow–Delhi axis is becoming a template for a post-Western world
ロシアとインドの関係は、激動の変化に直面しながらも安定を維持する方法の一例である
出典:RT  2025年12月3日https://www.rt.com/india/628856-fyodor-lukyanov-moscow-delhi-axis/

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寺島隆吉 寺島隆吉

国際教育総合文化研究所所長、元岐阜大学教授

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