【連載】今週の寺島メソッド翻訳NEWS

☆寺島メソッド翻訳NEWS(2025年12月24日):戦争亡者にノーベル平和賞を授与することは、これまでもずっとおこなわれてきた犯罪行為

寺島隆吉

※元岐阜大学教授寺島隆吉先生による記号づけ英語教育法に則って開発された翻訳技術。大手メディアに載らない海外記事を翻訳し、紹介します。


マリア・コリーナ・マチャド氏。ベネズエラの野党
党員で2025年のノーベル平和賞受賞者。©  Rune Hellestad/Getty Images

ウィキリークスの創設者であるジュリアン・アサンジがスウェーデンの法律に反している、とノーベル財団を非難したが、それは同財団がその最も名誉ある賞を、ベネズエラの野党の好戦的な指導者マリア・コリーナ・マチャドに与えたことを受けてのことだった。

1896年に亡くなる前、スウェーデンの化学研究者アルフレッド・ノーベルは自身の最後の意思や遺言が簡潔かつ不明瞭でないものになることを確認していた。つまり、ノーベル平和賞が授与されて然るべきな人物とは、その前の年度において、「国家間の友好関係や常備軍の放棄や減少、平和のための会議の開催や推進のために、最も多く、あるいは最善を尽くした人物」である、というものだ。

これまでの行動や発言、あるいは米軍が母国に対しておこなった軍事行動を大きく賞賛していることから判断すれば、今年のノーベル平和賞受賞者のマチャドは、アルフレッド・ノーベルの遺志による基準からは程遠く、ジュリアン・アサンジが激怒しているのも無理はない。

今週スウェーデンで出した刑事告発において、アサンジはノーベル財団の関係者30人に対して、重大な罪を犯している、と指摘しているが、その中には資金の大規模横領や戦争犯罪行為への幇助、人道に反する犯罪、 侵略行為への資金提供が含まれている。アサンジの主張によると、その容疑者たちは、「重大な犯罪行為」を通じて、「平和に繋がる道具を戦争の道具に」変えてしまった、という。このような全ての観点から考慮すれば、マチャドは1100万スウェーデン・クローナ(118万ドル)に値するノーベル平和賞を受けるには不適格である、とのことだ。

アサンジの主張には一理ある。結局のところ、8月はじめに米軍がベネズエラ沖に大規模に配置されているのは、公然の事実であり、兵の数は現在約1万5000人にのぼっている。この数は1962年のキューバミサイル危機以来、カリブ海で最大の規模の配置であり、 マチャドはこの状況を完全に喜んでいるようだ。さらに米軍は既に戦争犯罪行為をおこなっている。具体的には、一般市民の船舶や海上の生存者たちに対して殺傷能力のある攻撃を加えたりしているのだ。そしてその結果、少なくとも95名の死者が出ている。

国連人権高等弁務官事務所は、米国によるこのような一般市民の船舶に対する沿岸攻撃を「超法規的処刑」と見なしている、とウィキリークス創設者であるアサンジは記している。そして「この侵略行為の主要な実行者」は他でもない米国のマルコ・ルビオ国務長官である、と指摘したが、この国務長官こそマチャドをノーベル賞に推薦した人物だ。

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「アルフレッド・ノーベルが平和に対して拠出した基金が戦争の推進に使われることはあってはならない」とアサンジは語気を強めた。被告人は真の法的 義務を果たさねばならない。というのも、これらの被告人に課されているのは、「アルフレッド・ノーベルが意図した目的の確実な完遂」だからだ。つまり、戦争や戦争犯罪を終わらせ、戦争の発生を不可能にすることだ。

現在マチャドと米国政府は、平和賞の評判を自分たちの悪行を正当化する機会に利用している。具体的には、南米のベネズエラに対して戦争をしかけ、ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領を失脚させるという悪行を正当化しようとしているのだ。同大統領は、かつてバスの運転手で、労働組合の指導者から身を立て、国家の英雄となった人物だ。これまで世界中でおこなわれてきた、米国が主導する政権転覆工作を鑑みれば、力によりマチャドが政権の座に据えられ、 それによりベネズエラの広大な天然資源から得られる富を米国が我がものにすることが可能になる、という展開になるだろう。天然資源の中には、世界最大の埋蔵量を誇る石油も含まれる。

CBSニュースの「国家に立ち向かう」という番組で放映されたインタビューにおいて、マチャドはトランプによる経済制裁措置の強化やベネズエラの石油タンカーの押収、あからさまな暴力や侵略行為を称賛したが、これらの行為はアルフレッド・ノーベルによる明白な宣告に反するものだと言える。つまり、平和賞被授与者は、「国家間の友好関係」を推進する人物でなければならない、という宣告だ。

「聞いてください。私はトランプ大統領の戦略を全面的に支持します。そして、私たちベネズエラ国民はトランプ大統領や彼の政権に非常に感謝しています。というのも、トランプ大統領は、この半球において自由の大いなる推進者だ、と考えているからです。だからこそ、今、私はここオスロから訴えるのですが、この賞をトランプ大統領に捧げます。彼こそがついに、ベネズエラをあるべき姿に変えてくれたからです。ベネズエラを米国の国家安全保障の優先事項である、と捉えてくださったのです」と54歳のこの活動家は語った。

超大国米国と米国が持つ首を傾げさせられるような目論見に対してこんなピカピカの褒め言葉を使っているという事実から考えれば、アサンジからの警告はより理解できるものとなる。アサンジは、マチャドに与えられた褒賞金が、「慈善的な目的ではなく、侵略行為や人道に反する犯罪行為、さらには戦争犯罪行為に使われてしまう」という 警告を発したのだ。


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アサンジからの非難によれば、こんなことが起こってしまえば、スウェーデンは、国際刑事裁判所(ICC)に関するローマ規程の25条3のC項に違反することになる、というのだ。この条項によると、戦争犯罪行為の実行において「援助や教唆、その他の方法での幇助」をおこなったものは誰でも、国際刑事裁判所のもとで起訴の対象となる。となれば、ノーベル財団は、細心の注意を払って然るべきだ。

大きな疑問点が残っている。それは、「ノーベル財団が被受賞者を決する際、西側の地政学上の目論見をどれほど考慮するか」というものだ。NATO加盟国であるノルウェーが、政治運動家を選出することで、国際的な存在感をその人物に付与し、米国の裏庭における米国の帝国的野望を幇助するよう追い込まれたのだろうか?結局のところ、暴力や戦争に塗れた個人が世界で最も尊敬に値するこの賞を授与されることは今回がはじめてではないのだ。

テディ・ルーズベルト米国第26代大統領は1906年にノーベル平和賞を授与されたが、彼は、主にカリブ海において、軍事力を背景に米国を超大国に見せよう、と心に決めているような人物だった。

2009年12月、当時のバラク・オバマ米国大統領もノーベル平和賞を受賞したが、彼は2件の大きな戦争の渦中にあった。 彼が大統領職を最後にまるまる一年つとめた年である2016年、米国は少なくとも2万6711発の爆弾を7カ国に投下した。言い換えると、まるまる1日24時間で、毎時平均3発の爆弾を投下したことになる。

最後にあげたいのが、米国のヘンリー・キッシンジャー国務長官だ。彼は1973年、(北ベトナム側の交渉相手レ・ドゥク・トと共に)ノーベル平和賞。受賞したが、彼は1969年3月から1970年5月までのカンボジアに対する秘密爆撃を裏から糸を引いていた人物だ、として厳しく非難されている人物だ。その際、ノルウェーのノーベル財団の二人の委員が退職することで抗議の意を表し、ニューヨーク・タイムズ紙は「ノーベル平和賞ならぬノーベル戦争賞」と揶揄していた。

※なお、本稿は、寺島メソッド翻訳NEWS http://tmmethod.blog.fc2.com/

の中の「戦争亡者にノーベル平和賞を授与することは、これまでもずっとおこなわれてきた犯罪行為(2025年12月24日)

http://tmmethod.blog.fc2.com/

また英文原稿はこちらです⇒Giving the Nobel Peace Prize to warmongers is a crime that’s gone on too long

平和を推進する人を褒賞するために始められたこの賞が、政治や偏見により長年汚されてきた

筆者:ロバート・ブリッジ(Robert Bridge)
米国の作家であり記者。『米帝国の真夜中、私企業とそれに奉仕する政治家がいかにアメリカン・ドリームを粉砕してきたか』の著者
出典:RT 2025年12月20日https://www.rt.com/news/629815-assange-nobel-peace-prize/

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寺島隆吉 寺島隆吉

国際教育総合文化研究所所長、元岐阜大学教授

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