【連載】櫻井ジャーナル

【櫻井ジャーナル】2025.12.27XML :ナイジェリアを攻撃したトランプ大統領はネオコンの戦争から抜け出せるのか

櫻井春彦

 ドナルド・トランプ米大統領は12月25日、世界有数の産油国であるナイジェリアの北西部をアメリカ軍が攻撃したと発表した。この地域にいるダーイッシュ(ISIS、ISIL、ISなどとも表記)がキリスト教徒を殺害しているからだというが、シリアやイスラエルでアメリカに支援された武装勢力がキリスト教徒を殺害していることをトランプは気にしていないようだ。つまり、キリスト教徒云々という話は戯言だ。

 

そうした殺害を実行する一方、トランプ政権は確認石油埋蔵量が世界最大と言われているベネズエラに対して軍事的な圧力を加えている。トランプによると、ベネズエラの石油は全てアメリカのものだというが、中国はベネズエラの石油産業に多額の投資をしている。

 

11月16日にアメリカ海軍の空母ジェラルド・R・フォードが5隻の艦船を伴ってカリブ海へ入ったものの、10月下旬にはロシアのアヴィアコン・ジトトランス所属のIl-76TD輸送機がベネズエラへ何かを運んでいる。この会社はロシア軍や傭兵会社ワグナーの貨物を輸送したとしてアメリカから「制裁」されていることから軍事物資、あるいは戦闘員を輸送したのではないかと言われ、ベネズエラへロシアのスペツナズ(特殊部隊)も入ったと伝えられている。アメリカ軍がベネズエラへ軍事侵攻した場合、相当の犠牲を覚悟しなければならない。

 

アメリカは軍事侵攻からタンカーに対する海賊行為に切り替えた。アメリカ軍は12月10日にイランとの関係が指摘されているタンカーの「スキッパー」を拿捕したのに続き、13日には別の「センチュリーズ」を拿捕した。このタンカーは中国人が保有している。13日にアメリカの沿岸警備隊は「ベラ1号」というタンカーも拿捕しようとしたが、船長は船の速度を上げて対抗した。拿捕できなかったアメリカの沿岸警備隊は追跡していると伝えられたが、拿捕は難しいと言われている。

 

アメリカ政府はカリブ海でイランと中国を攻撃したとも言える。ウクライナでの戦争にロシア軍にNATO軍は敗北、そのNATOを動かしている欧米の富豪たちはロシアのエネルギー資源や穀倉地帯を乗っ取ることに失敗した。ベネズエラの石油を押えようとしている目的のひとつはそこにあるのだろうが、カリブ海でアメリカはロシア、中国、そしてイランから逆襲されている。

 

歴代のアメリカ政府やEUが支援してきたイスラエルはガザ全域を瓦礫の山にし、住民を大量虐殺したものの、窮地に陥っている。パレスチナ人の抵抗は止まず、世界の人びとのイスラエルを見る目は厳しくなった。イスラエル経済の柱であるダイヤモンド産業も衰退した。そのイスラエルに代わり、アメリカはカリブ海でイランを攻撃したと言われても仕方がないだろう。

 

そしてアメリカは東アジアでも軍事的な緊張を高めている。トランプ政権は台湾に対して111億ドルを上回る規模の兵器パッケージを承認したのだ。その中にはM142 HIMARSシステム82基、M57 ATACMSミサイル420基、精密誘導ロケット1200発以上が含まれている。M57ミサイルの一部は最大射程距離が約500キロメートルと推定される最新型のミサイルだという。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は12月28日にマイアミを訪れる。

 

高市早苗首相は11月7日に衆議院予算委員会で台湾有事について問われ、「戦艦を使って、武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても存立危機事態になりうるケースだ」と発言した。

 

歴代の日本政府は「ひとつの中国」を受け入れてきた。高市首相もそうした立場を継承するならば、台湾で戦闘があってもそれは内戦ということになる。高市首相の発言は、中国で内戦が始まった場合、日本は宣戦布告するということだ。

 

また、高市首相は11月11日、衆院予算委員会で「核を保有しない、製造しない、持ち込まない」という非核3原則を堅持するかどうかという質問に対して明言を避け、11月23日には小泉進次郎防衛相が与那国島を視察した際、同島にミサイルを配備する計画を発表した。

 

アメリカ国防総省系のシンクタンク「RANDコーポレーション」が2022年4月に発表した報告書は、GBIRM(地上配備中距離弾道ミサイル)で中国を包囲する計画について説明している。​与那国島、奄美大島、宮古島、石垣島にミサイルの発車基地を建設するということだ。アメリカの計画に基づき、自衛隊は軍事施設を建設してきた。高市政権はアメリカ軍の対中国戦略を始動させたと言えるかもしれない。

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※なお、本稿は「櫻井ジャーナル」https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/のテーマは「ナイジェリアを攻撃したトランプ大統領はネオコンの戦争から抜け出せるのか 」2025.12.27XML)
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