【連載】今週の寺島メソッド翻訳NEWS

☆寺島メソッド翻訳NEWS(2026年1月1日):フィョードル・ルキャノフ:ワシントンはもはやロシアを「絶対悪の国(Mordor)」とはみなさない。

寺島隆吉

※元岐阜大学教授寺島隆吉先生による記号づけ英語教育法に則って開発された翻訳技術。大手メディアに載らない海外記事を翻訳し、紹介します。

フョードル・ルキャノフ氏(ロシア・グローバル情勢編集長、外交防衛政策評議会幹部会議長、ヴァルダイ国際討論クラブ研究ディレクター)

RT合成。© ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔 / ニュー・ライン・シネマ
米国の国家安全保障戦略(NSS)の最新版は、過去の文書とは大きく異なる。一見すると、大統領の標準的な枠組みのように見えるが、実際にはイデオロギー的なマニフェストになっている。トランプ側近による政治パンフレットであり、退任とともに消え去る運命にあると捉えたくなるかもしれない。

しかし、それは間違いだ。国家安全保障戦略(NSS)の最新版を真剣に受け止めるべき理由が二つある。第一に、アメリカ合衆国は、そもそもイデオロギー大国である。スローガンと理念に基づいて建国された国だ。アメリカの政策は、どんなに実利的に見えても、イデオロギーに染まっている。第二に、型破りな大統領でさえ、その政策指針は大統領の任期を超えて生き続ける。例えば、トランプの2017年の戦略は、大国間の対立の時代を告げ、その後の多くの出来事を形作った。バイデンは2021年にその表現を和らげたが、その根底にある枠組みはそのまま残った。この新たな文書もまた、生き続けるだろう。

特に際立っているのは西ヨーロッパに向けられた論調だ。最も厳しい批判はロシアや中国ではなく、欧州連合(EU)に向けられている。執筆者たちにとってEUはリベラル秩序の歪みであり、欧州諸国を誤った方向へ導いた構造体である。米国は今や真の大陸的パートナーを中欧・東欧・南欧に特定し、戦後統合を推進した西欧・北欧諸国を意図的に除外している。

国家安全保障戦略(NSS)はより広い世界に触れているが、西ヨーロッパは象徴的な位置を占めている。アメリカのアイデンティティは、宗教的・経済的自由を求めて移住者たちが逃れてきた腐敗と圧制に満ちたヨーロッパという旧世界への拒絶として築かれた。「農民共和国」は遠い昔に消滅したが、その建国神話は今もなお根強く残っている。今日の保守主義の復活の中で、この神話は力強く蘇った。トランプ支持者たちは、理想化された過去を復活させるだけでなく、20世紀の多くの部分を覆そうとしている。特に、ウッドロウ・ウィルソンがアメリカを第一次世界大戦に導いた際に始まったリベラルな国際主義を覆そうとしている。


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ピート・ヘグセス戦争省長官は、最近のレーガン・フォーラムでの演説で、この拒否を明確に表明した。ユートピア的理想主義は退け、「厳格な現実主義万歳!」である。この視点において、ワシントンは世界を一連の勢力圏の集合体と捉えており、その勢力圏は最も強力な国家、すなわち米国と中国によって支配されている。おそらくロシアを含むその他の国家の役割は、国防総省が間もなく発表する軍事戦略で明らかにされるだろう。

歴史的に見て、アメリカの国是におけるこうした揺れ動きは常にヨーロッパと結びついてきた。「丘の上の都」(*)はヨーロッパへの拒絶として登場した。対照的に、20世紀のリベラル秩序は揺るぎない大西洋の絆に支えられていた。その絆は1918年(第一次大戦終結)後実現することはなかったが、1945年(第二次世界大戦)以降は西側の組織原理となった。
*・・・ ピューリタン指導者ジョン・ウィンスロップの言葉で、アメリカを「世界の模範となる新しい共同体」として描く象徴的な表現

今日、ワシントンはこの二つの思惑を融合させている。一方で西欧に対し、「アメリカに寄生する」のではなく自らの内部問題を解決するよう求める。他方で、EUの失敗した政策とアメリカが見なすものへの抵抗をEU域内から促す。これは関与の縮小ではなく、ユーラシア大陸の半分における政治的改革をしようとしているのだ。その目標は体制転換である。体制転換と言っても旧来の冷戦的意味ではない。リベラル・グローバリスト的価値観から国民的保守的価値観への文化的・思想的観点からの転換だ。これによりワシントンは、「再生した欧州」への支配力を強化し、米国の広範な目標における主要な同盟国として機能することを期待している。すなわち、西半球における支配権(従ってモンロー主義の明確な復活)と、米国の利益に有利な中国との貿易協定である。

最も予想外なのはロシアの扱い方だ。これまでの戦略とは異なり、ロシアは脅威やならず者国家として描かれていない。世界的な挑戦者とも位置付けられていない。代わりに、ロシアは欧州の風景の一部として、大陸の均衡に不可欠な要素として登場する。ワシントンの新たな目標は、ロシアが参加する欧州の枠組みを構築することである。ただし、ロシアは対等な世界的大国としてではない。その論理は単純だ。つまり、欧州諸国自身ではこの均衡を調整できないため、米国が彼らの代わりに介入しなければならない、だ。


(画像4)
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本質的に、執筆者らは新たな形で19世紀の「ヨーロッパ協調体制」への回帰を提案している。ロシアは包含されるが、その影響力は制限される。冷戦後のリベラルな構想との類似性は顕著だ。当時も西側は、ロシアが安定した欧州システムに統合されることを想定していたが、それは西側のイデオロギー的指導力の下でのことだった。スローガンは変わったが、その階層構造は変わっていない。

少なくともワシントンが、近年西側論調を支配してきたファンタジー的なイメージ——ロシアをトールキンの『指輪物語』に登場する邪悪な国「モルドール」のような存在として漫画的に描く手法——を放棄したことは喜ばしい。新たな論調はより穏やかで、現実的、あるいは温もりが感じられないものとも言える。しかしロシアに割り当てられた立場は、依然としてロシアが受け入れられるものではない。再構築された欧州の屋敷における下位のパートナーという役割は、ロシアの戦略的野心にふさわしいものではないからだ。

さらに、その前提自体も疑わしい。ロシアがいてもいなくても、欧州が結束した政治的実体として再構築できるという考えは、まったく根拠を持たないものである。欧州大陸の分断は深く、利害は分岐し、外部勢力への依存は根強い。米国の戦略は、米国の意向に沿って再編成され、最終的にはワシントンの目標に奉仕する大西洋を跨ぐ枠組みに統合された欧州を想定している。そのような欧州が理論上の可能性としてすら存在するかどうかは、まったく別の話になる。

ロシアは、この米国の構想を無視しない。しかしロシアの進路は既に定まっている。モスクワの長期的な戦略目標——主権、多極的な秩序、欧州戦域を超えた行動の自由——は、米国が設計した大陸的な均衡にはすんなり収まらない。たとえ汎欧州的な枠組みが再構築されたとしても、ロシアがその装飾的な柱の一つとして仕えることに満足することはないだろう。

この新たなアメリカの方針は、近年のレトリックよりは抑制的かもしれないが、依然としてロシアを西側中心のシステム内に拘束できると考えている。その構想は過去のものだ。ロシアは自らの道を歩み続ける。それは国外からのイデオロギー的主張ではなく、世界政治における自らの将来の役割についての独自の理解によって導かれるものである。

※なお、本稿は、寺島メソッド翻訳NEWS http://tmmethod.blog.fc2.com/

の中の「フィョードル・ルキャノフ:ワシントンはもはやロシアを「絶対悪の国(Mordor)」とはみなさない。(2026年1月1日)

http://tmmethod.blog.fc2.com/

また英文http://tmmethod.blog.fc2.com/原稿はこちらです⇒Fyodor Lukyanov: Washington no longer sees Russia as Mordor
しかし米国の新戦略はより根本的な疑問を提起する。汎ヨーロッパの枠組みは再構築できるのか?
出典:RT 2025年12月11日https://www.rt.com/news/629337-fyodor-lukyanov-washington-moscow-europe/
筆者:フョードル・ルキャノフ(Fyodor Lukyanov)

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国際教育総合文化研究所所長、元岐阜大学教授

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