【連載】櫻井ジャーナル

【櫻井ジャーナル】2026.01.06XML :ベネズエラの石油を支配することで対イラン戦争によるペルシャ湾封鎖に対応

櫻井春彦

 ドナルド・トランプ大統領によると、今後、彼がベネズエラを経営し、アメリカ企業がベネズエラの石油を販売するのだという。アメリカ政府はベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領夫妻を誘拐したが、国自体を乗っ取ることには成功していないわけで、トランプの目論見が実現する可能性は大きくない。

 

アメリカ政府は自分たちが支配者だとラテン・アメリカの指導者たちに知らしめることが目的だったとする意見もあるが、トランプ政権のマドゥロ夫妻誘拐がベネズエラの石油や希土類元素を奪うことにあると考えている人は少なくない。確認石油埋蔵量が世界最大だというベネズエラを支配できれば、アメリカの支配層はそれを戦略的に使うことが可能。イスラエルや親イスラエル派がベネズエラへの軍事侵攻を支持している理由もそこにあるとする推測ある。

 

ノーベル平和賞受賞者のマリア・コロナ・マチャドはベネズエラへの軍事侵攻を求めると同時に、イスラエルのハマスを支持している。マージョリー・テイラー・グリーン下院議員も今回のベネズエラに対する軍事作戦とイスラエルの関係を指摘していた。

 

1月3日にアメリカ軍はベネズエラの首都カラカス周辺にある軍事基地や民間人の居住地域を空爆、特殊部隊がマドゥロ大統領夫妻を誘拐したとされている。その際、防空システムは機能していないようだ。その理由についてさまざまな推測が語られているが、イスラエルが昨年6月13日にイランを攻撃した際にもサイバー攻撃で10時間ほど防空システムが麻痺していた。

 

警護チームは何をしていたのかと言う人もいるが、ウラジミール・パドリノ・ロペス国防相によると、アメリカ軍が大統領を警護していた部隊の主要部分を殺害したとしている。ベネズエラの警察と軍の大半はアメリカの軍事介入に反対、トランプがベネズエラを経営することは困難だろう。

 

もしアメリカがベネズエラの石油を支配できれば、アメリカとイスラエルがイランを攻撃、ペルシャ湾からの石油供給が途絶えてもアメリカは対処できる。それに対して中国などはダメージを受けることになるだろう。

 

マドゥロ夫妻が誘拐された時、イランでは反政府デモが繰り広げられていた。2025年12月28日に通貨危機に対する商人による抗議活動として始まり、本格的な政治蜂起へと変化している。

 

その蜂起で逮捕された人の携帯電話には逮捕された際にどうするべきかを指示する動画が保存されていたのだが、その動画は「物価高騰に抗議し、政府に私たちの声を届けるために来た」と強調するようにアドバイス、外国人を強く侮辱するように指示している。外国とは無関係だと主張し、携帯電話の壁紙を革命防衛隊の特殊部隊を率いていたガーセム・ソレイマーニーか最高指導者のアリー・ハメネイの写真にするように指示している。

 

このデモはMEK(モジャヘディン・ハルク)が扇動したと言われている。この組織は1965年に設立され、79年のイスラム革命までコミュニストとみなされていたが、その後、カルト集団になり、アメリカやイスラエルの手先として活動するようになる。1981年に設立されたNCRI(イラン国民抵抗評議会)と緊密な関係にある。

 

2003年3月にジョージ・W・ブッシュ政権がイラクへ軍事侵攻した後にアメリカ政府はMEKをイラン攻撃の手先にすることを決め、2012年にはテロ組織の指定が取り消された。MEKを支持するアメリカ政界の有力者には、ネオコンのジョン・ボルトンも含まれている。

 

ソ連が総滅した際、ネオコンはアメリカが唯一の超大国になったと確信、1992年2月に国防総省のDPG(国防計画指針)草案として世界征服計画を作成した。作成の中心は国防次官を務めていたポール・ウォルフォウィッツだったことから「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」とも呼ばれている。

 

そのドクトリンにはドイツと日本をアメリカ主導の集団安全保障体制に統合し、民主的な「平和地帯」を創設すると書かれている。要するにドイツと日本をアメリカの戦争マシーンに組み込み、アメリカの支配地域を広げ、西ヨーロッパ、東アジア、そしてエネルギー資源のある西南アジアが成長することを許さないと宣言している。

 

21世紀に入るとロシアが再独立に成功するのだが、それでもネオコンはアメリカの支配者として、誰に配慮することもなく、好き勝手なことができると考えたようだ。

 

ジョージ・W・ブッシュはイラクを軍事侵略し、拷問を承認。刑事法制や捕虜の待遇に関する条約を無視するため、「敵戦闘員」なる用語を使い始め、バラク・オバマ政権は傭兵を使った軍事侵略を進めるだけでなく、国外にいるアメリカ人を殺害している。ジョー・バイデン政権はオバマの政策を引き継いだ。そしてトランプは公海上の漁船を空爆して乗っている人を殺害、そしてベネズエラを軍事攻撃し、その国の大統領夫妻を誘拐したのだ。

 

状況の変化に対応できず、ソ連の消滅で唯一の超大国になったアメリカは好き勝手に行動できるという思い込みからネオコンは抜け出せなくなっている。

 

アメリカがベネズエラの石油を支配できたなら、アメリカとイスラエルがイランを攻撃できる。ペルシャ湾からの石油供給が途絶えてもアメリカは対処できるからだが、その前提になるベネズエラの資源を支配することが難しい。

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※なお、本稿は「櫻井ジャーナル」https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/のテーマは「ベネズエラの石油を支配することで対イラン戦争によるペルシャ湾封鎖に対応 」(2026.01.06XML)
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