【連載】櫻井ジャーナル

【櫻井ジャーナル】 2026.01.16XML : 大統領官邸が攻撃された後、ロシア政府のNATOへの対応が根本的に変わる可能性

櫻井春彦

 クリスマス休暇の時期とは言うものの、ウラジミル・プーチン露大統領が12月下旬から数週間にわたって姿を見せなかったと話題になっている。12月28日から29日にかけての夜、モスクワ北西部のノブゴロド州にある大統領公邸に向けて91機のドローンが発射されたことを受け、ロシア政府の内部で重大な政策の変更が議論されたのではないかと推測する人もいるようだ。その後、ロシア軍の攻撃は激しくなり、NATO軍の司令部が狙われているとする噂もある。EUの内部からは、ロシア政府と話し合う必要があるとする主張も流れて来始めた。

 

12月29日に撃墜されたドローンの航法装置をロシア軍は調査、飛行計画を含むファイルを取り出すことに成功、その最終目的地がロシア大統領官邸内の施設の一つであったことを突き止め、そのデータをアメリカ大使館の武官へ渡されたという。この攻撃はCIAがウクライナの手先を利用して行った可能性が高く、プーチン大統領の暗殺をドナルド・トランプ米大統領が承認したとするならば、ロシア政府とアメリカ政府の話し合いは難しくなるかもしれない。

 

ロシア軍は1月8日、ウクライナ西部、ポーランドとの国境に近いリビウを攻撃した。ここはNATOの兵站線における要衝だが、そこにある地下ガス貯蔵施設を破壊したようだ。その貯蔵容量は170億5000万立方メートルで、ウクライナで貯蔵されている全容量の50%以上に相当、ウクライナのエネルギー事情を一気に悪化させる。

 

西側諸国は現在でもウォロディミル・ゼレンスキーを大統領として扱っているが、大統領としていの任期は切れている。国民にも支持されていない。イギリスの対外情報機関MI6のエージェントで、MI6長官を務めていたリチャード・ムーアがハンドラー(エージェントを管理する担当オフィサー)だったとされているが、ムーアは昨年10月1日に退任し、ブレーズ・メトレベリが引き継いでいる。

 

ゼレンスキーの側近と言われているキリロ・ブダノフは2020年8月5日から今年1月2日までGUR(国防省情報総局)の局長を務め、現在はウクライナ大統領府長官だ。GURはSBU(ウクライナ安全保障局)と同じように、2014年2月のクーデター以降、CIAの下部組織として機能している。ニューヨーク・タイムズ紙によると、ブダノフはGURに所属する2245部隊(第10独立特殊任務支隊)のメンバーとしてCIAの訓練を受けている。こうした経歴から、彼はCIAの指揮下にあると考えられている。

 

また、​イギリスがゼレンスキーの後釜と考えているバレリー・ザルジニー駐英大使はゼレンスキーに対し、1月初旬に辞任する意向を伝えていた​という。この人物はブダノフと同じように、ネオ・ナチと緊密な関係にある。

 

CIAの前身であるOSSはMI6を教官役として誕生した。いずれの組織とも背後には金融資本が存在している。アメリカ、イギリス、そしてイスラエルの情報機関は連携して活動しているが、ウクライナでも互いに協力し合っているだろう。

 

第2次世界大戦中、OSSとMI6は西部戦線でドイツと戦っていたレジスタンスを危険視していた。コミュニストの影響を受けていたからだ。レジスタンスに参加していたシャルル・ド・ゴールが大戦後、米英情報機関のネットワークに狙われたのもそのためだ。

 

レジスタンスに対抗するため、OSSはイギリスのSOE(特殊作戦執行部)と共同で、レジスタンスを抑え込むためにゲリラ戦部隊のジェドバラを1944年に編成、大戦後にはそのメンバーがアメリカの破壊工作組織OPC(のちにCIAの秘密工作部門)や軍の特殊部隊になった。

 

また、NATOの内部に破壊工作部隊が作られ、これらの部隊を基盤にして秘密部隊のネットワークが組織される。そのネットワークの中で最も活発に活動したグラディオはレジスタンスの人気が高かったイタリアの組織。NATOが誕生するとネットワークはその中へ入り込み、1951年からCPC(秘密計画委員会)の下で活動するようになる。1957年にはCPCの下部組織としてACC(連合軍秘密委員会)が創設された。(Daniele Ganser, “NATO’s Secret Armies”, Frank Cass, 2005)

 

アメリカのCIAと特殊部隊はベトナム戦争でも活動しているが、正規軍とは別の指揮系統で戦っていた。ベトナム戦争が泥沼化した1967年にリンドン・ジョンソン大統領、ディーン・ラスク国務長官、ロバート・マクナマラ国防長官、ジョージ・クリスチャン報道官、ウオルト・ロストウ国家安全保障補佐官、そしてNSC(国家安全保障会議)に所属していたCIAのロバート・コマーが話し合い、軍とは別の戦闘システムを作り上げた。

 

1967年5月にコマーがDEPCORDSとしてサイゴン入りし、6月にはMACV(南ベトナム軍事援助司令部)とCIAが共同で極秘プログラム「ICEX(情報の調整と利用)」が始動。名称はすぐに「フェニックス・プログラム」へ変更されている。

 

このプログラムの目的は、反米色が濃いと見なされた地域の農民を皆殺しにして、好ましい人たちと入れ替える作戦である。海軍の特殊部隊SEALsの隊員だったマイク・ビーモンによると、フェニックスは「ベトコンの村システムの基盤を崩壊させるため、注意深く計画されたプログラム」だ。(Douglas Valentine, “The Phoenix Program,” William Morrow, 1990)

 

おそらくウクライナでもCIAと特殊部隊は独自の判断で動いている。ロシア軍がウクライナで軍事作戦を始めた直後からNATO諸国から情報機関員や軍人が入っていたが、CIAや特殊部隊は通常の戦闘ではなく、テロ攻撃が主体になる。そのテロ攻撃に対し、ロシア軍は正規軍で圧倒するつもろだろう。ポーランドとの国境に近いリビウを攻撃したのは、いつでもNATO諸国を攻撃できるという警告だ。

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※なお、本稿は「櫻井ジャーナル」https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/のテーマは「大統領官邸が攻撃された後、ロシア政府のNATOへの対応が根本的に変わる可能性 」(2026.01.16XML)
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