プーチン大統領がマクロン大統領にザポリージャ原子力発電所の「大惨事」を警告
国際ウクライナのザポリージャ原子力発電所とその周辺地域における緊張の高まりと、止まない砲撃に関し、ロシアのウラジミール・プーチン大統領とフランスのエマニュエル・マクロン大統領は、包囲されている施設を調査する国連監視団の派遣の必要性について議論を交わした。
欧州最大のザポリージャ原子力発電所で起こり得る核の大惨事への警戒が高まるなか、ロシアとウクライナ両国は互いに同施設への計画された挑発であり、偽装作戦であると批判し合っている。
8月19日に、およそ3か月ぶりとなったロシアのプーチン大統領とフランスのマクロン大統領の電話会談の後、ロシア政府は同国が国際原子力機関 (IAEA) の現地ミッションに安全を提供すると繰り返した声明を発表した。
声明は、ロシアが「IAEAの監視団に必要な支援を提供する用意があることを確約する」と述べている。プーチン大統領は、マクロン大統領に監視団が「可能な限り早く」ザポリージャを訪れるべきだと語りながら、ウクライナのこの原子力発電所に対する砲撃が、「広範に及ぶ大惨事」を引き起こしかねないと強調した。
フランス側の発表によると、両首脳は「今後数日間、両国の技術チーム間の話し合いの後、IAEAのミッション展開前に再びこのテーマについて話す予定」だという。
ウクライナは、ロシア軍がザポリージャ原子力発電所を攻撃していると断言しているが、ロシアは3月以降この施設と周辺地域を支配しており、ザポリジャー州の保護下にあるロシア系住民を危険にさらす重大な核事故を引き起こす理由はない。
ウクライナの計画された「挑発行為」か
ロシア軍がこの施設を支配し、ウクライナ人のオペレーターによって稼働している。ロシアは現況への強い懸念をますます強め、施設攻撃の責任は誰に責任があるかの証拠を調査するために独立した調査団の派遣を求めている。
この数週間、施設周辺にはしばしば砲撃が加えられ、ロシアが支援している州の高官は、米国から供与されたM777榴弾砲でウクライナが施設を攻撃していると批判した。8月19日にロシアは国連安全保障理事会に対し、ウクライナによるザポリージャ原子力発電所への計画された「挑発行為」を警告する書簡を提出した。
一方、ウクライナの国営原子力企業のエネルゴアトムは、ロシアがウクライナから主要な電力源を奪うため、同施設で機能しているパワーブロックのスイッチを切り、ウクライナの送電網から切り離して、ロシアの送電網に再接続する計画だと主張している。
エネルゴアトムのトップのペトロ・コーチン氏はロイター通信に対し、施設から切り離し、再接続するのは「技術的に非常に難しい工程」であり、ロシア軍は外部の電源が切断されたら、各冷却システムを維持するためにディーゼル発電機を探していると述べた。施設内にはバックアップ用のディーゼル発電機はあるが、供給面で十分かどうかは不明だ。
ロシア国防省高官のイゴール・キリロフ氏は、ザポリージャ原子力発電所のバックアップ支援システムが、攻撃の結果破壊され、停止しなければならないかもしれないと述べている。ロイター通信の記事は、「もし冷却装置が故障したら、核反応は遅くなるが、すぐに原子炉は過熱するだろう。そうした高温では水素がジルコニウム被覆材量から放出され、原子炉の溶解が始まる可能性がある」と付け加えた。
ロシアが原発を攻撃する理由はない
ウクライナ側は、今月初めのロシアの砲撃で、発電所とウクライナの送電網をつなぐ3本の電線が損傷したと主張しているが、ロシア側はこの砲撃の背後にウクライナ側がいると述べている。
ロシア連邦安全保障会議のニコライ・パトルシェフ書記は、米国がウクライナの核施設攻撃を促していると批判している。同書記は、もし「技術的大惨事」があったら「その結果は全世界に及ぶ」としながら、「米英とその共犯者がすべての責任を負うことになろう」と語った。ロシア側は、施設での軍の駐留を正当化としており、セルゲイ・ラブロフ外相は、軍は「チェルノブイリ規模」の大惨事を予防するため駐留していると説明している。
8月17日に、NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長は、ロシアが「ウクライナ軍に砲撃を加えるために原子力施設周辺の土地を使用している」と述べたが、ロシアは否定している。ロシア国防省は「この施設にも周辺の区域にも重火器は置いていない。警備部隊だけだ」としている。
ロシアは、米国とウクライナがザポリージャ原子力発電所で事故を引き起こし、原子炉をオーバーヒートさせようと目論んでいると断言している。ロシア国防省は、ウクライナ軍がザポリージャ州に隣接するドニプロペトロウシク州のニコポル市にザポリージャ原子力発電所を攻撃するための砲撃部隊を展開しており、攻撃の結果をロシア軍のせいにしようとしていると述べている。
ウクライナ国防省は、ロシアがザポリージャ原子力発電所への「大規模なテロ攻撃」を計画し、その責任をウクライナに押し付けようとしており、米国務省のネッド・プライス報道官も偽装作戦は「ロシアのプレイブック」のようなものだと述べている。
しかしながら、戦争前ですらプライス報道官や米国政府報道官は良く知られているように具体的証拠を提示することなく、ウクライナでロシアが偽装作戦を企んでいると非難していた。同様に国防総省の高官も「原子力発電施設とその周辺におけるロシアの最近の行動は、無責任の極みだ」と報道陣に語り、声高にこの問題についてロシアを批判した。
ブルース・ギャグノン氏の国連宛て書簡
この施設周辺の住民のある程度は近隣の欧州諸国に避難し始めているが、女性と子供たちだけが出国が許されている。ウクライナは18歳から60歳までの男子の出国を禁止し、彼らは戦争を継続するために徴兵されている。
ロシアは原子力施設から軍を引き上げるようにとの国連の勧告を拒否したが、「宇宙における兵器と原子力に対するグローバルネットワーク」のコーディネイターであるブルース・ギャグノン氏は国連のアントニオ・グテーレス事務総長に書簡を提出し、現在の危険な状況の責任者としてウクライナを激しく批判した。書簡は、次のように述べている。
「この数週間、私はこの危険な状況について調査してきました。米国が据え付けたウクライナ政府が、原子力施設を砲撃しているのはまったく明白な事実です。ウクライナの支配から救おうとしたロシア系住民がいる地域を、なぜロシアが核で汚染しなければならないでしょうか。ウクライナ人の職員がこの施設に留まっており、ロシア軍が施設を大惨事から防衛しようとしている事実は、今回の問題に対するロシア側の誠実さを示しています。ぜひ国連がIAEAをザポリージャ原子力発電所に派遣するように求め、砲撃の責任をしかるべき当事者に課すことを公にしなければなりません。米国からの指示で実行したのは、ウクライナなのです」。
(翻訳:成澤宗男)
原題:「Putin Warns Macron of ‘Large-Scale Catastrophe’ at Zaporizhzhia Nuclear Plant」(URL:https://www.globalresearch.ca/putin-warns-macron-large-scale-catastrophe-zaporizhzhia-nuclear-plant/5790782)
Global Research 提供。
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https://isfweb.org/recommended/page-4879/
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米国の対外政策を批判している「リバタリアン協会」の編集者兼ライター。左派系の多くのインターネットサイトに外交関連の記事を発表している。