【特集】統一教会と国葬問題

自民党を支える「宗教」―旧統一教会との関係と酷似、創価学会と岸・安倍家―

大山友樹

・岸元首相と創価学会の太いパイプ

旧統一教会と濃密な関係を築いた岸元首相だが、同時に岸元首相は創価学会・戸田城聖二代会長とも太いパイプを結び、その関係は旧統一教会との関係同様、安倍晋太郎―晋三親子へと引き継がれている。

そうした事実は、2006年9月26日に国会で首班指名を受け第一次安倍内閣を発足した直後の9月30日に、公明党の全国大会で行なった次のような挨拶からもわかる。

〈私は去る26日、本会議における首班指名選挙において公明党の皆さまのご支持をいただき、第90代内閣総理大臣に任命された。皆さまの力強い支援、支持に感謝を申し上げたい。

(中略)私の祖父の岸信介も、父の安倍晋太郎も御党と交友関係の深い間柄であった。両党が50年の歴史を経て、今、第2期の連立政権時代を迎えるに当たって私が自由民主党の総裁として、そして連立内閣の首班として、連立を率いていく立場になったことは、何か特別な運命を感じている〉(公明新聞10月2日付)。

安倍発言にあるとおり、岸元首相と戸田会長の関係は深い。1958年3月16日に岸首相(当時)は、日蓮正宗の信徒団体だった創価学会が同宗総本山大石寺の大講堂落慶式にかこつけて実施した広宣流布の模擬試験に、戸田会長の招きで出席する予定だったが、側近の池田正之輔代議士の反対で取り止め、代わりに夫人と娘、そして女婿の安倍晋太郎秘書官を代理として出席させた。

その際、戸田会長は岸首相の欠席を残念がるも、夫人と娘・女婿の代理出席を喜び、岸首相を高く評価し、創価学会と岸首相との関係を維持するように、こう訓示している。

〈日本の政権を保って、社会党と共産党をおさえて行ける人は岸先生しかいないということを、あの人が幹事長の時に心から深く思って、尊敬していたんです。(中略)岸先生がこれからどんな立場になってもわしは悪い人だとは思いません。それが友人のまごころじゃないでしょうか。(拍手)君らも、そういう心で岸先生とつき合ってください。私は宗教団体の王様なんだから(拍手)。岸先生は政治団体の王様なんだ〉(聖教新聞58年3月21日付)。

この発言から半月後の4月2日に戸田会長は急逝したが、東京の青山葬儀場で4月20日に行なわれた学会葬に、岸首相はわざわざ足を運んでいる。

戸田城聖・第二代創価学会会長の葬儀に参列する岸信介首相(当時)

 

そして戸田会長から岸首相との関係性の維持を遺訓された池田大作三代会長も、岸後継となった安倍晋太郎元外相との縁を刻んだ。01年3月11日付聖教新聞掲載の「SGI会長の素晴らしき出会い」「第8回 常に紳士の品格 故安倍晋太郎外相」にはこうある。

〈(昭和33年3月16日)以来、何度もお会いした。『あの日、岸総理が来られず、申しわけなかった』という気持ちを、ずっと持ってくださっていたようである。学会に対し、戸田先生に対して、信義の心を持っておられた。

岸総理が戸田会長と親しかったという心を継いで、創価学会を大事にしようという心が感じられた。きれいな心で、学会のこと、世界のこと、人間と社会の話などを、私と語り合うことを、楽しみにしてくださっていたようである〉。

まさに創価学会と岸・安倍家は、3代にわたる深い縁で結ばれていた。そして旧統一教会も創価学会と同様、濃密な関係を岸・安倍家と結んでいたのである。

このことは、「昭和の妖怪」とも呼ばれる岸元首相が、創価学会と旧統一教会という反共の全体主義的な宗教団体を、自らを含む岸・安倍家の政治基盤、そして右翼タカ派の政治勢力の政治基盤を維持する、いわば生命維持装置として用意していたことを意味する。

そしてその二本の法脈は、安倍元首相へと脈々と継承されていた。まさに9年近く続いた安倍自公政権は、創価学会と旧統一教会、そして日本会議に蝟集する右翼系の宗教団体によって下支えされていたのである。

・高齢化に伴い組織力衰える創価学会

ところで7月10日投開票で行なわれた第26回参院選は、安倍元首相の射殺事件の影響もあって、自民党が圧勝した。

自公両党で過半数の議席を大きく上回ったのをはじめ、自民・公明・維新・国民の改憲4党が3分の2の議席を獲得。れいわ新選組こそ議席数を伸ばしたものの、立憲民主・共産の両党は議席減。社民党もかろうじて1議席を獲得して党消滅の危機を回避するという野党敗北の結果となった。

このうち選挙区7候補の全員当選と、比例区800万票の獲得を目標としていた公明党は、選挙区こそ全員当選したものの、比例区では目標に遠く及ばぬ618万票。昨年秋の衆院選の711万票と比べると93万票減、前回参院選の653万票と比べても35万票減の敗北に終わった。

そして選挙区票の推移を見ても、同じ候補者(7候補中6名)だった前々回や、前回との比較で得票を増やした選挙区はなく、各選挙区の票の増減を前回比で羅列すると、埼玉マイナス5万5660票、東京マイナス7万2477票、神奈川マイナス6万8389票。愛知マイナス9996票、大阪マイナス4724票、兵庫マイナス4万8828票、福岡マイナス5万2795票となっている。

こうした公明党の敗因・集票力の低下をマスコミ各紙は、「支持層の高齢化に加え、自民、公明両党の相互推薦が難航したことが影響した」(『毎日新聞』7月16日付)と分析しているが、7月11日の記者会見で山口代表も、「私の力不足を党員、支持者におわびしなければならない」と力なく語り、組織母体の創価学会の「組織力が衰えているのは事実。支持者が高齢化し、力がなくなっている」ことを認めている。

大阪商業大学が2000年から行なっている「生活と意識についての国際比較調査」は、統計資料として定評があるが、最新の21年1月から3月にかけての調査結果の「信仰」の欄を見ると、全国6600人の調査対象からの有効回答数3522中、創価学会と答えた数は66人となっている。これは率にして1.87%。

この1.87%を日本の総人口にかけると約235万人となる。創価学会は自らの勢力を827万世帯1200万会員などと称しているが、実数としてはこの統計に近い250万人程度、多く見積もっても300万人程度と推測することが可能であり、今回の618万票の相当数は、自民党からの選挙協力で下駄をはかせてもらったものと見ることができる。

Main office of BSGI Brazil Soka Gakkai International. Shot at Liberdade district, Sao Paulo city, Brazil.

 

しかし期待の自公選挙協力でも、前出の毎日新聞記事が、〈自公の選挙協力が十分に機能しなかったとの見方もある。双方の重点選挙区で互いの支持層を取り込むことを狙い両党が16年参院選から実施している相互推薦は、今回、両党本部間の調整が遅れ、地方組織間での協力にとどまった。

連携が党本部主導でなく都道府県レベルになったことで、広域の調整が必要な比例の得票につながらなかった〉と報じているように、自公両党間で軋轢やひずみが生じている。

今回、岡山選挙区で公明党の支援を断った自民党の小野田紀美候補は、39万票と公明党の支援を受けた前々回よりも4万4000票ほど得票を減らしたが、次点との差を前回より8万票以上増やして楽々当選した。

選挙期間中、岡山の創価学会は自主投票としたものの、実際は小野田候補を「恩知らず」などと批判し、立憲と国民が推薦した元玉野市長に肩入れしていた。しかし、かえって票差は開いたのである。

この小野田議員の事例は、1人区でも公明党=創価学会票をもらわなくても当選できるという前例を作ったという意味で、今後の自公両党、さらには創価学会との関係に変化をもたらすものとなるのかもしれない。

「公然の秘密」だった政治と宗教の悪しきもたれ合いを浮き彫りにした安倍射殺事件。これが後世、歴史の転換点だったと言われる可能性もないとはいえない。

(月刊「紙の爆弾」2022年9月号より)

 

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大山友樹 大山友樹

ジャーナリスト。世界の宗教に精通し、政治とカルト問題にも踏み込む。

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