「台湾政策法」は米中の次の爆弾―台湾を同盟国化し外交待遇を付与―(下)
国際米議会上院の超党派議員が提出した「2022年台湾政策法案」の213条には、「台湾を主要な非NATO同盟国に指定」する内容が盛り込まれている。そこでは「台湾を主要な非NATO同盟国に指定するため対外援助法を改正、対外支援と武器輸出で特恵関税を与える」と明記している。
台湾への軍事訓練計画については、206条の「包括的な訓練計画」に規定がある。「台湾の防衛能力を改善し、軍隊の相互運用性を高めるための包括的な訓練プログラムを台湾と確立する」と、台湾を同盟国扱いしている。
実際に台湾への軍事訓練については、2021年春に米陸軍顧問団が台湾新竹基地に数か月駐留し、台湾戦車部隊の訓練に当たっていることが表面化した。台湾軍兵士がフェイスブックで、「米軍進駐で忙しく昼休みもない」と“極秘情報”をポロリと暴露してしまった。
さらに米『ウォールストリート・ジャーナル』紙は21年10月7日付(電子版)で、「最低1年前から米軍の特殊作戦部隊と海兵隊の小部隊が極秘に台湾に派遣され、台湾軍の訓練に当たっている」(注1)と報じた。水面下では米台間で共同作戦計画が練られているのも既成事実となっており、「2022年台湾政策法案」は、公然化と制度化を狙う。
問題は、米台だけではない。岸田政権は年末に改定される国家安全保障戦略(NSS)で、今後5年間に軍事予算を格段に増やし、敵基地攻撃能力(反撃能力)の核になる「スタンドオフミサイル」の装備化・予算化にもゴーサインを出す方針だ。
これらの方針は、いずれも2021、22年の日米首脳会談と日米「2プラス2」合意を踏まえたものである。「台湾有事」に向けたこの「米日台安保協力体制」の方向を判断する上で、「2022年台湾政策法案」は示唆に富む。
同盟化と代表機関の名称変更が争点
同法案のうち、台湾の同盟化と、兵器等の支援計画や訓練内容を見れば、日米安保体制下で日本を属国化したのと同様、台湾も属国化しようとする米国の意図が透けて見える。民主主義という「共通価値観の共有」とは名ばかりで、米国にとって日本も台湾も対中抑止のカードに過ぎない。
共同通信客員論説委員。1972年共同通信社入社、香港、モスクワ、台北各支局長、編集委員などを経て、拓殖大客員教授、桜美林大非常勤講師などを歴任。専門は東アジア国際政治。著書に「中国と台湾 対立と共存の両岸関係」「尖閣諸島問題 領土ナショナリズムの魔力」「米中冷戦の落とし穴」など。「21世紀中国総研」で「海峡両岸論」http://www.21ccs.jp/ryougan_okada/index.html を連載中。